夏の参院選から選挙権が18歳までに引き下げられます。約240万人いる18、19歳に選挙権を行使してもらおうと、高校では授業を使った啓発活動が進んでいます。一方、インターネットを見ると総務省が動画で啓発しているものの、動画を活用した投票の呼びかけはまだ進んでいないのが現状。インターネット上にある動画をチェックしながら、制度改正の成功に向けた課題を探ります。
投票率アップに向けて、総務省はネットを使った啓発活動を進めています。イメージキャラクターには女優の広瀬すずさんを起用しました。YouTubeの公式チャンネルでは、広瀬さんが「私たちの声を私たちの将来に…」などと語りかけ、選挙に行くことが自分たちにとってメリットになることを強調しています。
総務省はTOKYO FMの若者向け番組「SCHOOL OF LOCK!」ともタッグを結成。講義形式で若者に制度をPRする「ホームルーム」を3月まで全国9都市で展開しています。共同通信が紹介した動画によると、高校などと同様に模擬投票を行い、選挙の「事前準備」に一役買いました。
なぜか吉本興業も18歳選挙権をPR。YouTubeの吉本興業公式チャンネルでは総務省の協力のもと、事務所所属のダンスユニット「エグスプロージョン」の2人が「18歳選挙権の変」というタイトルで踊り、なぜ年齢を引き下げたのか、諸外国では選挙権を持つ年齢がそもそも低いことなどを挙げつつ、コミカルな踊りで選挙をPRしています。どの動画も若者向けに大人が考えた、と感じさせる動画になっています。
元NHKで立正大学教授の桜井均さんが運営している市民メディア「映像ドキュメント.com」では動画「18歳のためのレッスン」を配信しています。動画に登場しているのは学者の樋口陽一さん、浜矩子さんらと学生団体SEALDsのメンバー。安保法制や米軍基地問題など、特定の政治テーマを若者と有識者が語り合う姿を見せることで、若者の政治への興味を喚起しています。
Youtuberの「京大家庭教師いとらー」さんは日本の人口が5人と仮定して議会制度を解説。日本では代表民主制を採用していることなどを説明しています。
福島民友新聞は制度改正が新聞購読者増につながるとみて「便乗」。タレントの北崎杏佳さんを起用したCMを制作し、投票する材料として新聞を読むことにはメリットがあるとPRしています。
特定のテーマを題材に話し合い、政治に対する理解を深めようと活動するのは良いことです。ただ、桜井さんの動画でもわかるように、現状ネットに上がっている動画は特定の政治的主張を若者に一方的に押しつけているだけという印象があります。政界で話題になっているテーマに対して若者がどう思うか意見を出し合えるような動画があってもいいのではと感じます。
YouTubeで「18歳選挙権 動画」と検索すれば自明ですが、投票率アップに向けたPRよりも、制度そのものへの賛否や、制度導入の影響を論じるものが多いように感じました。まだ選挙までは半年近くありますが、現状では18、19歳の投票率は上がらないのではないかと危惧してしまいます。
アメリカでは若者にも選挙をより身近に感じてもらおうと、政治を動画で紹介する取り組みが進んでいます。たとえばAFPの動画では、選出まで時間がかかる大統領選出の仕組みを紹介するなど、若年層はもちろん幅広い年代に政治をわかりやすく伝える努力をしています。日本でも同様の取り組みが進み、より多くの若者が投票所に足を運ぶようになるといいですね。
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