第189通常国会は、過去最長の95日間延長された末、閉会しました。振り返れば、最大の焦点となったのはやはり安全保障関連法でした。国会の外では抗議活動をする学生の様子などが連日報じられ話題となりましたが、国会の内側の若者の眼には一連の審議がどのように映ったのかをお伝えしたいと思い、今回は22歳の参議院議員秘書の方の記事をご紹介します。
選挙ドットコム編集部
2015年9月19未明、安保関連法が成立しました。
日本史に刻まれるであろうその日について、「与党議員にとっては喜ばしい1日であり、野党議員にとっては耐え難い1日であった。」参議院議員の新米秘書として現場にいた私は、何年か経った時このように振り返るはずでした。
しかし今、こう振り返っています。「与党議員は冷や汗をかき、野党議員はほくそ笑んでいた」と。
つまり、与党議員も野党議員も、それぞれの支持者とは正反対の気持ちで、成立の瞬間を迎えていたように見えました。それは、来夏の参院選を見越しているからでした。そんなアピール合戦を間近で見せられ、とても腹が立ちました。しょうもない茶番劇だ…。
数日に及ぶ茶番劇の現場で、私は独り、周りを見渡していました。
「本気でこの国の将来について考えている人は、どこにいるんだ?」
安保法成立後も国会周辺で声をあげ続ける人がいます。
雨が降っても夜遅くなっても声をあげ続ける姿勢には頭が上がりません。政治に強い関心を持つこうした人は、良く言えば情熱的に、悪く言えば感情的に政治を見ている印象があります。
そして、声をあげない人もいます。
私の友人の99%は声をあげない有権者です。しかし、関心を持たないわけではありません。実際、お酒の席では政治の話をすることがあります。有権者の大多数を占めるこうした人は、良く言えば客観的に、悪く言えば他人事のように政治を見ている印象があります。
私はジャーナリストを志しているので、出来るだけ多くの情報を集め、多くの視点から物事を見ることを心がけています。そんなジャーナリスト気取りの私は、声をあげる人だけでなく声をあげない人からも、反安保法の風潮を感じるようになりました。
政治が盛り上がるのは良いことですが、「戦争法案に賛成した議員は落選させよう」など安易な(シンプルな?)スローガンを用いて、「自民党議員=悪」「安倍政権=悪」という安直なステレオタイプを形成しているように感じており、ここに危機感を覚えています。
参議院における与野党の動きを、私見で振り返ります。
まず、与党議員は、政府が提出した法案に対して誰一人として異論の意をあげず、特別委員会では存在を隠すように静まり返っていて、強い閉鎖性を感じました。”政治家”ではなく”政治屋”の集団なのだという印象を受けました。終始存在感が薄かった(あえて気配を消していた)公明党は、自民党に従属する政党に見えました。昨年の閣議決定や法案に歯止めをかけた(?)ことで“平和の党”としての役割を終えたのでしょうか。
次に、野党議員は、安保法が成立する過程で何をしていたのでしょうか。徹底抗戦した民主・共産などは、「廃案! 廃案!」と訴え続けました。政府答弁の矛盾点を明らかにし、法案の欠陥を指摘しましたが、結果的には廃案にすることも法案に歯止めをかけることもできませんでした。野党第一党の民主党は「責任野党としての責務を放棄した」と批判されても仕方ありません。維新の党は対案を示して修正協議を行いました。平行線に終わったものの、政府案と異なる道を示した点は成果と言えるかもしれません。大きく報道されていませんが、日本を元気にする会など3党は修正協議で合意にこぎつけました。責任野党としての責務は、この3党が果たしました。
安保法案の審議は、来夏に参院選を控える与党議員(自民48名、公明9名)にとっては、政治生命に影響するため、特別委で静まり返っていた与党議員は、冷や汗をかいていたのかもしれません。一方で、野党各党の議員(民主41名、維新5名、共産3名、元気3名など)にはアピール合戦の主戦場でした。
民主・共産は「国民の声を聞いています」という姿勢を見せ、「国民にアピールできたぞ」とほくそ笑む雰囲気さえ感じています。独自案を提示した維新は、責任野党としての姿勢を感じましたが、党内抗争はどうなるのでしょうか。唯一、責任野党の成果を残した日本を元気にする会など3党は、安保法案に賛成票を投ずることで国民から批判されるリスクがあったものの、歯止めをかけることを選択したようです。終始存在感が薄かった印象ですが、最大の功労者です。
こうした野党の現状を考慮しても、「戦争法案に賛成した政党・議員は落選させろ」「戦争法案に反対した政党・議員を支持しよう」となるでしょうか。0か100か、白か黒かで判断できるものではないと思います。安保法賛成派議員が悪で、安保法反対派議員が善なのか。安保法賛成派が悪で反対派は善なのか? そもそも安保法が悪で戦争法なのか?
インターネットの普及により、伝わる情報の範囲も量も格段に増ふえているにもかかわらず、あるいは、だからこそ、より強大な善悪を作り出してしまうのではないか。こうした危機感と、政治家に対する憤りから、この記事を書きました。
野党再編の先行きはわかりませんが、来夏の参院選は、熟慮を重ねた1票を投じましょう。私たち国民が成熟することなくして、政治・政治家が成熟することは有り得ないと思います。選挙で試されているのは、私たちなのかもしれません。
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