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選挙は“現場”だ、と選管の神様は言った(小池みきの下から選挙入門⑪)

2015/9/10

小池みき

小池みき

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選挙管理の仕事に関わって40年以上のベテラン、“選管の神様”こと小島勇人氏の話を聞いて、なんとなくだが、日本の選挙を支える考え方とか、そこで動いている人たちの大切にしているものがわかってきた。しかし、「選挙の世界で働こう」というそもそもの意欲はどこから生まれてくるものなのだろう。不思議に思って聞いてみた。

【小島氏】
「僕はねえ、もともと大学時代に選挙制度論を選択科目でとっていたんですよ。それで大学を卒業後、市役所に入る時に面接で『選挙の仕事をしたいです』と希望を言ったら、本当に選挙管理委員会に配属してもらえたわけ」

【小池】
「選挙制度論の講義を取ったのは、面白そうだと思ったから……?」

【小島氏】
「全然。たまたまとった講義だったんですよ。学生時代はそんなに面白いとは思っていなくて、試験も『可』とかだったんじゃないかな(笑)。それが結局こうなっちゃって、人生ってわかんないもんですよね。今まで地元の選挙関係者の皆さんの相談相手にもなったし、今では僕自身が母校で選挙制度論について講義しているんだから。ただ、学者ではないのであまり学問的に高尚な話はできませんけどね」

小島氏は選挙管理アドバイザーとして活動する傍ら、日本大学法学部で非常勤講師も務めている。選挙のことを学びたい、選挙の世界で働きたいと思う若手は年々少なくなっているとのこと。やはり若手の育成はこの業界でも課題なのだろうか。

【小池】
「小島さんの後継者になれるような方はいないんですか?」

【小島氏】
「はは、よく『弟子を作れ』とか言われますね。でもそんなもの僕は作りません。無理矢理押し付けたってしょうがないでしょ。僕らがやれることをやって、それを見て自分からやりたいって思う人がやるんじゃなきゃ」

民主主義の根幹である選挙制度。その基盤たる公職選挙法が守るのは、有権者の投票意志と選挙の公正性、それだけだ。目には見えず、うまくこなしたからといってそれが当然であって誰もほめてくれませんし、大金が舞い込むものでもない。正しい選挙のあり方を守ろう、日本の社会を支えようという心からの気概がなければ、確かにとても務まらない仕事だろう。そうした仕事を、私の生まれるずっとずっと前からコツコツ続けてきたのが小島氏なのだ。

【小島氏】
「そうですねえ……選挙の現場を38年間やり、退職後もこうやってアドバイザーやってますから、選挙事務歴はもう40年以上になります。でも、まだまだ知らないことがいっぱいあるんですよ」

【小池】
「40年以上やっている小島さんでも知らないことが!?」

【小島氏】
「そりゃありますよ。世の中の進歩とともに、現地の実務の手法も変わりますし、改正もありますから、それに伴った法律の解釈もどんどん新しくなっていきますからね」

さらりと言う小島氏。

【小島氏】
「選挙って結局“現場”なわけですよ。色んな問題や事件がおきるのは常に現場だし、それを一つ一つ解決していくのが僕らの仕事。『選挙関係実例判例集』っていう、公職選挙法の条文ごとにそれに関係する実例・判例をまとめた厚さ5〜6cmでページが1900ページ近くある本があるんだけど、ものすごく分厚いんですね。僕らが若い時は、この半分以下の厚さだったのにねえ」

たとえば、去年の12月に行われた衆議院議員総選挙は「第47回」だった。次回は48回。そこで何かトラブルが起きれば、この実例判例集が参照される。選挙の回数のぶん問題事例は増えるし、それはこれからも確実に増え続ける。だから過去の事例の勉強が必用なんです。

「僕は選管の仕事を長くやっているから、ついこのあいだ変わったことについても全部知っているだろうと思われちゃうんだけど、全然そんなことはなくってね。情報が自動的に僕のところに集まってくるわけじゃないんです。情報は自分から取りに行かなきゃいけない。しかも相当図々しく、貪欲に行かなきゃ駄目。それから情報ってお金と同じで、出さないと入ってこないからね。自分でも同じくらい発信していかなきゃいけない。なかなか大変です」

私の横でマツダ参謀長が、「ほんとそうです、その通りです、わかります」と言いながら激しく頷く。色々苦労されているに違いない。私も、情報業界の末端にいる人間として震え上がる、もとい身の引き締まる思いだった。

【小島氏】
「まあこの世界はね、一生勉強なんです。休まず勉強し続けなきゃ駄目。怠けていれば自分自身の知識も薄れていくし(笑)。これからもできる限りのことをやっていきますよ。それから、また機会を作って、選挙のいろいろおもしろい話をしましょう」

今日も明日も、小島氏はこの部屋に資料を増やし、手書きでファイルにタイトルを書き入れていくのだ。ベテランながら一切驕りのないその笑顔に見送られ、私たちは小島氏の部屋を後にした。その高潔な仕事ぶりに、私はただ自分を反省することしかできない。

【小池】
「うう、私も勉強しなきゃ……嗚呼……」

【マツダ参謀長】
「もしもしー、タカハタ総統ですか。はい、終わりました。じゃあ次連れていきますんで、はいどうも。……じゃあ小池さん、次は選挙の“現場”の話を聞きに行きますよ」

【小池】
「(まだ続くなんて聞いてないぞ)現場の話ならマツダ参謀長で間に合いますよ。選挙プランナーですもん」

【マツダ参謀長】
「次に会いに行くの、その僕の“師匠”だから」

【小池】
「え、師匠がいたんですか」

【マツダ参謀長】
「というか、元祖『選挙プランナー』だね」

【小池】
「元祖〜〜!?」

というわけで次回は、選挙に関わり続けて25年以上の大ベテラン、日本で最初に『選挙プランナー』と名乗ったとある方のお話を聞きに行くことに……。

 

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小池みき

小池みき

ラ イター・漫画家。1987年生まれ。郷土史本編集、金融会社勤めなどを経てフリー。書籍制作を中心に、文筆とマンガの両方で活動中。手がけた書籍に『百合 のリアル』(牧村朝子著)、『萌えを立体に!』(ミカタン著)など。著書としては、エッセイコミック『同居人の美少女がレズビアンだった件。』がある。名前の通りのラーメン好き。

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