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【選挙アナリストが分析する都議選】自民・都民F「拮抗」のはずが…都議選を揺るがした5日間



平木 雅己
平木 雅己

東京都議会議員選挙は、都民ファーストの会の躍進と自民党の歴史的な大敗という結果で終わりました。自民党の大敗は「予想外だった」との見方が多いようですが、果たして本当にそうなのでしょうか?

勝ちに不思議の勝ちはあるものの、負けに不思議の負けはなし」です。

報道各社が投票日に行った出口調査の結果を分析すると、そこには「都民ファーストの会圧勝と自民党大敗」の「根拠」となる数値が見えてきます

2回目となる今回は、「『都民ファースト・自民が拮抗』と報道された告示直後の調査がなぜ、変化したのか」についてお届けします。
告示直後に各報道機関が行った調査結果では「都民ファーストの会に勢いはあるものの、自民党とはほぼ拮抗」していました。それが、なぜ、圧勝と惨敗という結果になったのか、「THIS IS A 敗因~都議選を揺るがした5日間」を検証します。
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<要約>
〇相次ぐ不祥事、閣僚や党幹部の問題発言

〇加計学園問題への対応~「適切ではない」7割超

〇内閣不支持 60%近くに

〇首相の秋葉原街頭演説への「猛抗議」⇒自民候補への投票拒否へ

なお、3回目では「都議選の結果から見える、有権者が都議会に期待するもの」についてお届けします。





告示直後調査 都民ファーストの会と自民党 ほぼ拮抗 激しく競り合う



6月23日の告示直後(23~25日実施)に各報道機関が調査・報道した内容をまとめた6月28日付当編集部原稿は、毎日新聞など8社合同調査結果の報道で「(前回の都議選で自民党、民主党にそれぞれ投票したと回答した人のうち)今回も引き続き自民に投票する人は54%、前回民主に投票した人のうち今回民進に投票する人は30%」を根拠に、自民党候補は前回票の半分強、民進党候補は前回の民主党候補の3割程度の支持に留まっていることを指摘しました。
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そのうえで、朝日新聞「自民と答えた人は25%、都民ファーストの会と答えた人も25%でした。自民、都民ファーストの会とも支持は並び、激しく競り合っている状況」、読売新聞「都議選で投票する候補者の政党は、都民ファーストの会26%、自民23%」などの調査結果から、都民ファーストの会が自民党を「わずかながら上回る」か「拮抗」していて、都議会第一党をめぐり、両党が激しい競り合いを続けているという内容を伝えました。
加えて、筆者が入手した自民党が告示直後に行った調査数値でも、ほぼ同様となっていました。





都議選を揺るがした5日間 ~有権者は『なに』を判断したのか~



都民ファーストの会と自民党が激しく競り合う「告示直後の調査で示された有権者の意思」は、「投票日までになぜ変化」したのか。まず、告示直後の調査結果が報道されてから投票を迎えるまでの期間を日本経済新聞の報道記事をもとに振り返ります。
●6月27日(火) 「稲田防衛相、都議選の自民党候補を応援する集会で『防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたいと、このように思っているところだ』と訴えた。自衛隊の政治利用で行政の中立性を逸脱したとも受け取られかねない発言」

●6月28日(水) 「自民党の下村博文幹事長代行(都連会長)の後援会が2013年と14年に開いた政治資金パーティーを巡り、下村氏事務所の内部文書に学校法人「加計学園」(岡山市)側がパーティー券200万円分を購入したとの記載があるとする記事を、29日発売の週刊文春が掲載することがわかった」

●6月29日(木)「自民党の金子恵美総務政務官は29日、自身のブログで、子供の保育所への送り迎えなどに公用車を使ったことがあると明らかにした。(中略)29日発売の「週刊新潮」が「公私混同」と報じた」

●7月1日(土)「自民党の二階俊博幹事長は(6月)30日、東京都内で行った都議選の応援演説で『落とすなら落としてみろ。マスコミの人たちが選挙を左右すると思ったら大間違いだ』とメディアの姿勢を批判した。『われわれはお金を払って(新聞を)買ってんだよ。買ってもらっているということを忘れてはだめじゃないか』とも語った。

二階氏は29日の演説で、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮を批判する中で精神障害者への差別的表現を用い、直後に記者団に『注意したい』と釈明していた。30日の演説では『この頃は難しい世の中で、ちょっと言葉を間違ったら、えらい目に遭う』とぼやいてみせたが、連日の不規則発言となった」

●同日  「安倍晋三首相は1日、JR秋葉原駅前で都議選期間中初めてとなる街頭演説に立った。一部の聴衆から『帰れ」』コールが巻き起こり『演説を邪魔するような行為を自民党は絶対にしない』といらだちをあらわにし、ヤジを飛ばす聴衆に向かって指を指して『こんな人たちに私たちは負けるわけにはいかない』と反論する一幕もあった(中略)森友学園の籠池泰典前理事長も姿を見せ、混乱に拍車をかけた」

さらに、秘書への暴言・暴行容疑の豊田真由子議員に関する続報を掲載した週刊新潮も29日(木)に発売され、加計学園の獣医学部新設に関連しての萩生田官房副長官の発言とされる文書についての報道も続きました。

都議選は、市場移転やオリンピック・パラリンピックの経費負担をはじめ都政の課題を争点に東京都の議員を選ぶ選挙です。しかし、こうした事象が続いたことから、東京の有権者は、「安倍政権や自民党を問う」選挙へと、今回の都議選を変質させたといえるのではないでしょうか。

まさに「不祥事の日替わり報道」(自民党関係者)が続き、「森友・加計学園疑惑」に関する安倍首相の対応についても、自民党支持層ですら半数以上(54%)が「適切ではない」と答える(朝日新聞調査)ような状況の中、2日の投開票日を迎えました。

以上が「都議選を揺るがした5日間」でした。

こうした状況を踏まえ、出口調査では、安倍内閣の支持率や加計学園問題に対する対応を訊ねています。





安倍内閣の評価 加計学園対応



NHKの調査では、安倍内閣を支持するか聞いたところ、「支持する」と答えた人が43%、「支持しない」と答えた人が57%でした。

1

この調査は都内の有権者を対象にした調査で、NHKが、毎月全国の有権者を対象に行う調査と単純に比較はできませんが、6月実施分(9~11日)の調査で「安倍内閣を支持する48%、支持しない36%」でしたから、「支持と不支持が逆転し、特に都内の有権者の6割近くの人が安倍内閣を支持しない」と答えている点は注目されます。

さらに、「安倍内閣を支持する」と答えた人がどの政党の候補者に投票したかを見ると、自民党が46%、都民ファーストの会が29%、公明党が12%などとなっていて、自民党は安倍内閣を支持すると答えている層の半分もまとめきれませんでした

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一方、「支持しない」と答えた人がどの政党の候補者に投票したかを見ると、都民ファーストの会が41%、共産党が22%、民進党が11%などとなっています。

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朝日新聞の調査では、加計学園問題をめぐる安倍政権の対応について、訊ねています。「適切だ」と答えた人は24%、「適切ではない」と答えた人は71%でした。

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「適切ではない」と答えた人の投票先を候補者の政党別に見てみますと、都民ファーストの会が38%、公明党が9%、東京・生活者ネットワークが2%などと小池知事支持勢力への投票は53%となりました。

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また、共産党、民進党ともに加計学園をめぐる首相の対応を批判していましたが、「適切でない」と答えた人のうち18%が共産党に、9%が民進党に投票していて、批判票は共産党に集まったことが伺えます

なお、自民党支持層でも、安倍政権の対応を「適切だ」と答えたのは41%にとどまり、54%が「適切でない」と答えています。

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そのうち、60%は自民党の候補者に投票していたものの、小池知事支持勢力への投票も30%ありました。

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都政の直接の課題ではない加計学園をめぐる問題は、自民党支持層の離反を招き、無党派層を小池知事支持勢力に寄せ、有権者の投票行動を左右したことが調査結果から伺えます
T=豊田議員の秘書への暴行疑惑
H=萩生田官房副長官と加計学園との関係
I=稲田防衛相の自衛隊の政治利用発言
S=下村都連会長をめぐる加計学園絡みの政治献金疑惑報道

有権者の一部は、投開票日前日1日、安倍首相の演説に対して「街頭で抗議」を行い、投票当日の2日は、「自民党の都議会議員候補には投票しない」という投票行動をとることで、少なくとも「直近のA=安倍首相や自民党の姿勢にNO」という意思を突きつけたということが各調査結果から読み取れます。

都議選では、「都民ファーストの会が政権批判票の受け皿」となって大躍進し、自民党は歴史的な大惨敗を喫したという有権者の意思表示になったと分析できます。まさしく 「THIS IS A 敗因」です。
<要約>
〇相次ぐ不祥事、閣僚や党幹部の問題発言

〇加計学園問題への対応~「適切ではない」7割超

〇内閣不支持 60%近くに

〇首相の秋葉原街頭演説への「猛抗議」⇒自民候補への投票拒否へ

続く3回目では、小池知事が都議選告示直前に発表した市場移転案をはじめ、都政運営や政策課題からの投票行動を検証します。



参考 各報道機関が実施した出口調査の規模は以下の通りです。
NHK 536か所 3万600人から回答
朝日新聞 603地点 2万7777人から回答
読売新聞 約3万4000人から回答
毎日新聞、日本経済新聞、東京新聞、産経新聞、共同通信、TBS、フジテレビ、東京MXテレビ8社共同調査 504か所2万5425人回答
時事通信 10選挙区20か所 1283人回答

平木 雅己

平木 雅己

ライター、選挙アナリスト。 NHK社会部記者として、選挙報道事務局を長く勤め、「票読み」はじめ情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入され初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。 その後、連合事務局にスカウトされ、会長秘書(笹森清氏)を勤め選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。 政策担当秘書資格取得後、外務大臣政務官及び衆参国会議員秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、治安、雇用・消費者、地方自治、憲法などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。

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