さとう しゅういち ブログ
熊本大震災 災害は忘れぬうちにやってくる──避難所の脆弱性と猛暑の中の地震が突きつけた新しい困難
2026/7/29
災害は忘れぬうちにやってくる──避難所の脆弱性と猛暑の中の地震が突きつけた新しい困難
2026年7月28日16時27分。
広島市南西部を走る広電が突然停止した。
「震度3の揺れを検知しました。安全確認のため一時停車します」
車内アナウンスが響く。乗客の視線が揺れの理由を探す間もなく、電車は静かに再び動き出した。その直後、熊本から届いた映像は、10年前の記憶を呼び起こすには十分すぎる衝撃だった。
九州自動車道の破断。貨物列車の横転。そして――
避難所にも指定されるイオンモール熊本での爆発音と崩落。避難所として人々を守るはずの施設が、地震の直撃で危険空間に変わる。
これは、従来の防災計画では想定されていなかった“新しい困難”である。
◆ 新しい標語が示す現実災害は忘れぬうちにやってくる。
寺田寅彦の
「災害は忘れたころにやってくる」
は、昭和の静穏期を前提にした警句だった。しかし令和の日本列島は、熊本:10年で再び震度7能登:複数断層がほぼ同時に破壊関東:三連動地震の歴史北海道・東北:短周期での連続地震
という状況にある。いまの日本は、
災害が“忘れる前に”再び襲う時代に入っている。
◆避難所としての商業施設──安全神話の崩壊近年、全国の自治体はイオンモールゆめタウン大型ショッピングセンター
などを「広域避難所」「一時避難所」として指定している。理由は明快だ。空調があるトイレが多い食料・水の供給が容易駐車場が広いバリアフリー対応しかし今回、
避難所としてのイオンモールが爆発・崩落した。これは防災計画の根幹を揺るがす。
● なぜ商業施設は脆弱なのか
大型空調設備・電気設備が多く、地震で破損しやすいガス・電気・配管が複雑で、二次災害のリスクが高い建物が広大で、揺れの周期が合うと“共振”しやすい多数のガラス・什器が落下・飛散する店舗ごとに耐震補強の度合いが異なる避難所としての利便性が高い一方で、
地震時の安全性は学校や公民館より低い場合がある。今回の熊本は、その弱点を露呈した。
◆ 猛暑の中の地震──新しい「複合災害」近年の大地震は
真冬(能登半島)
春先(福島沖・宮城沖)
など、寒冷期に多かった。しかし今回は
連日酷暑日の“猛暑の中の震度7” である。
● 猛暑地震の新しい困難
避難所の空調が止まれば
熱中症が大量発生
停電で冷蔵庫・医療機器が停止
給水所に行列ができ、炎天下で体力を奪われる高齢者・乳幼児の体温調整が困難
車中泊が「熱中症リスク」を伴う
救助隊も防護服+高温で活動限界が短くなる
能登の「真冬の地震」とは逆方向の困難が、
今回の熊本では一気に噴き出した。
◆ 16:27、断層が再び裂けた
震源は熊本県宇城市・氷川町。
最大震度7、マグニチュード7.1、深さ10km。
典型的な「内陸直下型」であり、破壊力は能登半島地震と同じ“面で壊す”タイプだ。
専門家は今回の地震を
「2016年に動いた布田川・日奈久断層帯の割れ残りが破壊した可能性」
と分析する。つまり、
10年前の地震は終わっていなかった。
◆ 結び──災害は忘れぬうちにやってくる広島の路面電車が止まった瞬間、
熊本では避難所が崩れ、道路が裂け、建物が倒れ、人々が閉じ込められていた。遠く離れた街を揺らしたこの地震は、
「日本列島は一つの巨大な板であり、どこかが動けばどこかが揺れる」
という事実を改めて突きつけた。そして今回の熊本は、
避難所の脆弱性
猛暑の中の地震という新しい困難
という、令和の防災が直面する“次の課題”を示した。10年前の断層が再び動いた今日。
広島もまた、次の一手を考える時に来ている。
さとう しゅういち
サトウ シュウイチ/50歳/男