2026/5/28
◆ 広島瀬戸内新聞社説:米軍基地の“攻撃拠点化”がもたらす危険――岩国の時間外着陸と中東の教訓
米軍岩国基地で、夜間・時間外の着陸が相次いでいる。空母艦載機部隊が九州沖で着艦資格取得訓練(CQ)を行っているためだという。米軍は「安全確保のために必要な訓練」と説明するが、住民の生活環境を圧迫し続ける現実は変わらない。問題は単なる騒音ではない。米軍基地の本質が、いま世界情勢の中でより鮮明に浮かび上がっている。
CQ訓練は、空母に着艦するための資格をパイロットが定期的に更新する制度である。揺れる甲板に150メートルの滑走路、夜間は水平線すら見えない。世界で最も難度の高い航空作業である以上、訓練が不可欠であることは理解できる。しかし、その「必要性」が住民負担の恒常化を正当化する理由には全くならない。天候や海況に左右され、訓練は深夜にずれ込む。空母は九州沖にありながら、騒音と危険だけが岩国に押し寄せる構図が続く。
この構造は、沖縄で長年繰り返されてきた「基地の利益は国全体で享受し、負担は特定地域に集中させる」という構図と同質である。日米地位協定の下、日本側は米軍運用に実効的な制限をかけられず、「申し入れ」を行うだけで運用は変わらない。住民の不信が深まるのは当然だ。
さらに深刻なのは、米軍基地が「守りの拠点」ではなく、むしろ「攻撃対象を地域に持ち込む存在」であるという現実が、近年の中東情勢で露呈したことである。イランや親イラン勢力によるドローン・ミサイル攻撃で、イラク、シリア、ヨルダン、UAE、バーレーンの米軍基地が次々と被弾した。安価で大量投入可能なドローンによる飽和攻撃に対し、米軍基地の防空は驚くほど脆弱であることが明らかになった。
米軍は世界最強の攻撃力を持つが、海外基地の防御は限定的だ。海外基地は「攻撃・展開」のための前線拠点として設計されており、本土のような多層防空網は存在しない。イランのドローン攻撃は、この弱点を容赦なく突いた。これは日本の米軍基地にもそのまま当てはまる構造である。
岩国、横須賀、三沢、嘉手納、普天間――いずれも攻撃拠点としての機能は強力だが、防御力は中東の基地と同じ脆弱性を抱える。つまり、基地がある地域ほど危険に晒されるという逆説が現実となっている。
今必要なのは最低でも、日本側が運用に対して実効性ある関与を持ち、住民の安全と生活を守る仕組みを整えることである。訓練の透明性向上、時間帯の厳格化、代替訓練地の検討など、取り得る選択肢は多いはずだ。
「必要だから仕方ない」という説明で住民負担と危険を固定化する時代は終わらせなければならない。安全保障と地域社会の両立こそ、主権国家としての最低限の責務である。
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