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 武器輸出全面解禁と殉職事故──政治の無責任が再び構造的危機を招く

2026/4/22

◆社説

武器輸出全面解禁と殉職事故──政治の無責任が再び構造的危機を招く

政府が武器輸出の全面解禁を閣議決定したその日に、演習場で防衛関係者が命を落とした。
この重なりを「偶然」と片づけることはできない。
むしろ、構造のほころびが同時に露呈したと見るべきだ。

武器輸出の全面解禁は、国の安全保障政策の大転換である。
しかし、その同じ日に現場で殉職事故が起きたという事実は、
現場の負荷と政治の前のめりが乖離していることを示している。
福島第一原発事故の直後に原発輸出を推進しようとした時期と重なる構造が見えるのは、偶然ではあるまい。

海外派遣の拡大、防衛費の急増、装備更新の加速。
これらは現場の負荷を確実に増やす。
その一方で、中国大使館への侵入事件に対する政府首脳の沈黙、
制服自衛官の政党大会参加問題での曖昧な説明。
こうした姿勢は、
「政治は責任を取らず、現場に押しつける」
という空気を生む。

不信と緩み。
この二つが同時に広がるとき、組織は最も危険な状態になる。
事故と事件は別の出来事だが、背景にある空気は一本の線でつながっている。

一方で、中国は日本への磁石輸出を減らす動きを見せている。
供給調整や産業政策の一環とされるが、
中国大使館への侵入事件など、日本側の対応への不信感が背景にあると見る専門家もいる。
「誠意のない対応をする国に、軍事転用可能な物資を渡したくない」という判断は、国際政治では自然な反応である。
逆の立場でも同じ判断になるだろう。

日本は武器輸出を拡大しようとしているが、
その前に、磁石・半導体材料・レアアースなど、
民間産業の生命線が詰まるリスクが迫っている。
外交の信頼が揺らげば、武器輸出どころか、民間産業そのものが立ち行かなくなる。

スウェーデンのように平和主義を掲げながら武器輸出を行う国もある。
しかし、そこには外交の信頼性と説明責任が前提としてある。
最近の日本の外交姿勢に対し「誠意が見えない」という評価が出ている以上、
同列に語ることは難しいという指摘もある。

政治の無責任は、戦前にもあった。
軍部の暴走ばかりが語られるが、
統帥権干犯を政争の具にし、政治が責任を放棄した結果、
誰も軍を止められなくなった。
その無責任が国家の破滅を招いた。
広島はその破滅を最も痛感した都市である。

いま、私たちは再び同じ構造を見ていないか。
現場の負荷、政治の沈黙、外交の不信、産業の脆弱性──
これらが一本の線でつながり始めている。

国家の理性は、沈黙ではなく説明責任によって守られる。
政治は、現場の命と産業の未来を守るために、
前のめりの政策ではなく、冷静な判断を示すべきである。

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著者

さとう しゅういち

さとう しゅういち

選挙 広島県議会議員選挙 (2023/04/09) 2,673 票
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広島市安佐南区選挙区

肩書 介護福祉士・元広島県庁職員・広島瀬戸内新聞社主
党派・会派 無所属
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