さとう しゅういち ブログ
社説 岩国住民投票20年に考える ――地方自治の意思は、いまも問われ続けている
2026/3/12
社説 岩国住民投票20年に考える――地方自治の意思は、いまも問われ続けている https://www.youtube.com/live/RY9po-W6KwE?si=GwI3oOcPPJ6dP71S @YouTubeより
社説 岩国住民投票20年に考える
――地方自治の意思は、いまも問われ続けている
二十年前の三月十二日、岩国市で行われた住民投票は、地方自治の歴史に深く刻まれる出来事だった。米軍厚木基地の艦載機を岩国基地へ移転させる計画に対し、市民は明確に「反対」の意思を示した。投票率は五割を超え、賛否を問う住民投票としては異例の高い関心が寄せられた。市民の声は、民主主義の根幹である「地域の意思決定」を体現していた。
しかし、その後に続いたのは、国による補助金カットという事実上の「兵糧攻め」である。自治体財政を握る中央政府が、住民の意思を尊重した市長に圧力をかける構図は、地方自治の理念を根底から揺るがした。井原勝介市長は辞職し、民意を再び問う出直し選挙に臨んだが、国策と巨額の補助金を背景にした与党支援候補に敗れた。住民投票の結果は、政治の力学の中で押し流されていった。
政権交代が起きても、艦載機移駐の方針は変わらなかった。岩国基地は機能強化され、極東の重要拠点としての性格を強めている。いま、広島県内でも低空飛行や深夜飛行が常態化し、住民生活への影響は深刻だ。山がちな中国地方の地形が中東での作戦行動の訓練に適しているとの指摘もある。米軍基地を抱える他国では考えられないほどの自由度で訓練が行われている現状は、地域の安全と自治の観点から看過できない。
さらに、国際情勢は緊迫の度を増している。中東では米軍が攻撃に関与し、イランが自衛権を発動して米軍基地を攻撃する事態が続く。横須賀に寄港した米軍艦船が作戦に参加している以上、日本国内の基地が報復の対象となる可能性は否定できない。横須賀と運用上密接に連携する岩国基地も例外ではない。地域住民の安全保障は、国際情勢と直結している。
二十年前の住民投票は、単なる一自治体の判断ではなかった。
それは、「地域の意思は国策にどこまで反映されるのか」という問いであり、
「地方自治は本当に尊重されるのか」という試金石だった。
いま私たちが問うべきは、その問いが未解決のまま残されているという現実である。
中東での攻撃停止を求める声は、人道の立場から当然である。
同時に、足元の日本で、深夜飛行や低空飛行といった住民生活を脅かす訓練を厳格に規制し、透明性を確保することは、国家としての最低限の責務である。
岩国住民投票から二十年。
あのとき示された市民の意思は、いまも私たちに問い続けている。
「この国の民主主義は、地域の声を本当に尊重しているのか」と。
さとう しゅういち
サトウ シュウイチ/50歳/男