2026/7/30
【知的資源を未来へつなぐ公文書管理】
本日7月30日は、数日ぶりに道議会にて作業。咳は軽快しているが本調子ではない。先日おじゃましたばかりの熊本の状況も気になるが、公文書管理のあり方についてオンラインフォーラムに参加したので、以下、その報告です。
北海道における公文書管理のあり方を考える
―「知的資源」を未来へ承するために―
~第7回公文書管理フォーラム(2026年7月30日)参加報告~
■1 調査の目的
2026年7月30日に開催されたオンラインによる「第7回公文書管理フォーラム」に参加し、内閣府、宮崎県、埼玉県上尾市、大阪府和泉市による公文書管理条例の運用や電子文書管理の取組について調査した。議員の参加は私一人であったが、道庁担当者も本庁舎にて参加していると聞いたので、共通言語ができたとすれば、幸いだ。
さて、北海道では現在、「知事の所掌事務に係る公文書の管理に関する規則」に基づき公文書管理が行われている。一方、全国では公文書管理条例を制定し、公文書を「市民共有の知的資源」と位置付ける自治体も増えている。
本調査では、条例制定自治体の実践を通じて北海道の現行制度との違いや、公文書管理が果たすべき役割について考察するとともに、行政の説明責任や科学的政策形成(EBPM)の基盤として、公文書管理のあり方を検討した。
■2 公文書管理とは何か
今回のフォーラムで繰り返し示されたのは、公文書管理は単なる文書整理ではなく、民主主義を支える基盤であるという考え方である。
情報公開条例は、「存在する公文書を開示する制度」である。
一方、公文書管理は、
・文書を作成する
・保存する
・保存期間を設定する
・歴史的価値を評価・選別する
・文書館へ移管する
・廃棄する
という、公文書のライフサイクル全体を管理する制度である。
適切な公文書管理があって初めて、行政の説明責任や情報公開制度は実効性を持つことになる。
■3 「歴史的公文書」は未来への知的資源
国の公文書管理法では、公文書を「国民共有の知的資源」と位置付けている。
公文書は次のようなライフサイクルを経る。
・現用文書:現在の業務で使用している文書
・非現用文書:業務では使用しなくなったが保存期間中の文書
・歴史的公文書:非現用文書の中から、歴史的・文化的価値を有するものとして将来にわたり保存される文書
特に印象的だったのは、和泉市の取組である。保存期間が満了した文書を単なる廃棄対象とするのではなく、市民が活用できる知的資源として位置付け、公文書館へ移管・公開する仕組みを条例で整備していた。
北海道では、公文書のデジタル化やオープンデータ化、GISとの連携などについて、部局ごとの取組に委ねられている部分も少なくない。公文書を将来の行政資産として活用するという観点からは、より横断的な視点で制度全体を考えていく必要性を感じた。
■4 北海道において守るべき歴史的公文書
北海道において歴史的公文書として保存すべき対象は、行政運営に関する記録だけではない。
例えば、
・知床世界自然遺産や国立・国定公園等の保全に関する政策形成過程
・ラムサール条約湿地や生物多様性保全、30by30・OECMに関する計画策定
・水源地域保全や地下水保全、土地利用計画に関する検討資料
・半導体産業などの大規模産業立地と環境保全に関する意思決定過程
・気候変動対策や再生可能エネルギー導入に関する政策形成資料
などは、将来の道民や研究者が北海道の政策を検証する上で重要な歴史資料となり得るのではないか。
こうした記録を適切に保存することは、単なる文書保存ではなく、未来への知的資産を継承する取組でもある。また、将来の政策検証を可能にするためには、最終的な意思決定だけでなく、その過程における検討資料や協議記録、専門家の知見なども含めて適切に保存していくことが重要である。
■5 先行自治体から学んだこと
(1)文書作成義務による透明性の確保(上尾市)
上尾市では、過去の不祥事を契機として、政策決定過程を合理的に跡付けるための文書作成義務を条例に位置付けていた。
「記録を残す」という行為そのものが行政の説明責任を支え、組織風土の改善にもつながっていることが印象的であった。
(2)デジタル原本化と事務の効率化(和泉市・宮崎県)
和泉市では電子文書を原本とする考え方を条例に位置付け、安心してペーパーレス化を進められる環境を整備していた。
また宮崎県では、添付資料の閲覧性や操作性まで現場目線で改善したシステムを導入し、電子決裁率の向上と業務効率化を実現していた。
■6 DX・EBPMとの連携
公文書管理は、単なる保存制度ではなく、行政DXやEBPMを支える情報基盤でもある。
フォーラムでは、
・データ資産としての公文書の重要性
・文書検索性を高めるメタデータ整備
・デジタル文書を前提とした管理システム
なども紹介された。
北海道においても、公文書を「データ資産」として捉え、GISなどとの連動も含め、部局横断で政策立案や検証に活かす視点が重要になると感じた。
■7 北海道における公文書管理の今後の課題
北海道には、全国でも早い時期に設置された北海道立文書館があり、歴史資料の保存・公開に重要な役割を果たしている。歴史的公文書を受け入れ、将来の道民や研究者へ継承する基盤は、すでに整備されている。
一方、公文書管理については、「知事の所掌事務に係る公文書の管理に関する規則」に基づいて運用されており、国の公文書管理法が掲げる「公文書は国民共有の知的資源である」といった理念は明文化されていない。
今回のフォーラムを通じて改めて感じたのは、文書館は公文書管理の出発点ではなく、そのライフサイクルの終着点であるということである。どれほど充実した文書館があっても、その前段階である文書の作成、保存、評価・選別、移管が適切に行われなければ、未来に残すべき記録は失われてしまう。
北海道には北海道立文書館という貴重な資産がある。だからこそ今後必要なのは、その文書館へ引き継ぐ公文書を、どのような理念と基準で評価・選別し、将来世代へ継承していくのかという、公文書管理全体の仕組みを改めて考えることである。
■8 専門的人材「アーキビスト」の重要性
制度を実効性あるものとするためには、専門的知見を持つアーキビストの役割が重要である。
歴史的公文書の評価・選別や保存、公開に専門職が関与することで、行政組織だけでは判断しにくい歴史的価値を適切に継承することができる。
北海道においても、認証アーキビストなど専門人材の育成・活用について検討を進める必要がある。
■9 まとめ
今回のフォーラムは、公文書管理条例の制度論にとどまらず、「公文書とは何か」を改めて考えさせられる内容であった。
公文書は、過去を記録するだけのものではない。現在の行政を支え、未来の道民が政策形成過程を検証し、新たな政策へ活かしていくための「知的資源」である。
北海道には北海道立文書館という貴重な基盤があり、公文書管理についても規則による運用が行われている。また、情報公開条例によって行政文書の開示制度も整備されている。しかし今回のフォーラムを通じて感じたのは、情報公開制度だけでは、公文書を「将来に引き継ぐ知的資源」として守り育てるという視点を十分に担うことは難しいということである。
繰り返しになるが、情報公開条例は「存在する文書を公開する」制度であるのに対し、公文書管理は「何を作成し、どのように保存し、どの文書を歴史的公文書として未来へ引き継ぐのか」という行政活動全体のライフサイクルを支える制度である。両者は相互に補完し合う関係にあり、どちらか一方で代替できるものではない。
北海道には、自然環境、水資源、土地利用、産業政策など、将来世代に引き継ぐべき重要な政策記録が数多く存在する。これらを北海道の知的資源としてどのように位置付け、保存・活用していくのか。今回の調査を通じて、公文書管理は単なる文書管理ではなく、北海道の政策形成を未来へ継承するための社会基盤であることを改めて認識した。
今後、現行制度の検証も含め、公文書管理のあり方について議会で議論を深めるとともに、北海道の政策形成を将来世代へ着実に引き継ぐ仕組みについて考えていきたい。

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