広田 まゆみ ブログ

【ニセコ町視察報告②】山を壊さず、地域のなりわいを育てる――ニセコ町でも実践者がいる「自伐型林...

2026/7/24

【ニセコ町視察報告②】山を壊さず、地域のなりわいを育てる――ニセコ町でも実践者がいる「自伐型林業」

ニセコ町視察報告の第2弾は、地域の森林資源を生かした「自伐型林業」についてです。

自伐型林業については、ご縁があり、これまでも北海道自伐型林業推進協議会の皆さんから提言をいただいたほか、私が担当する地域のラジオ番組にもご出演いただきました。
https://hokkaido-jibatsukyo.net

自伐型林業と一口に言っても、そこには地域や実践者に応じた多様な生き方、働き方があります。今回、ニセコ町に実践者がいらっしゃることから、現場での技術や経営に加え、全道における自伐型林業の現状と行政制度上の課題について、北海道自伐型林業推進協議会副理事長の澤田健人さんから、地球温暖化プロジェクトの皆さんとともに、お話を伺いました。

自伐型林業の特徴は、大型機械を使って一度に広い範囲を伐採するのではなく、森林の状態を見ながら必要な木を少しずつ伐り出し、長期にわたって森を管理していくことにあります。

山に入れる作業道も、軽トラックが通れる幅2メートル余りに抑え、地形に沿って丁寧に整備します。幅の広い道路を一気に造るのではなく、山への負荷をできるだけ小さくしながら、繰り返し手入れのできる環境を整えていきます。

伐採についても、すべての木を一度に伐る「皆伐」ではありません。将来残したい木を選び、その成長を妨げる木を間引くことで、森の質を高めながら木材を収穫します。

こうした管理は、水源涵養や土砂災害の防止、生物多様性、景観の保全にもつながります。

二酸化炭素についても、若い木が新たに吸収する量だけでなく、成長した森林や土壌にすでに蓄えられている炭素を維持するという視点が重要です。これは、私にとっても今回の視察で新たに確認したことでした。

また、伐り出した木は、建築材や家具、薪など、価値の高い用途から順に活用します。枝葉や未利用材から精油やコスメを作るなど、森林資源を地域の中で余すところなく使う「カスケード利用」も進められています。

もう一つ印象的だったのは、担い手の多様さです。

今回お話を伺った澤田さん自身も、もともとは美容師でした。ほかにも、元消防士、サーファー、ハンター、IT関係者など、さまざまな経歴を持つ人たちが山に入っています。

林業だけを専業にするのではなく、夏は観光やカヌーガイド、冬は森林整備に携わるなど、地域の季節や仕事を組み合わせた「複業」としての林業が生まれています。

軽トラックやチェーンソーなど、比較的小規模な装備から始められ、薪や木工品、精油などの販売につなげられることも、自伐型林業の特徴です。

これは単に木を伐る仕事ではありません。森を守りながら、地域で暮らす人の仕事と所得を生み出し、移住や定住にもつなげていく、地域経営の一つの形です。

人口減少が進む地域において、地域資源を生かした仕事を生み出し、多様な人材を受け入れる取り組みとしても、大きな可能性があるのではないでしょうか。

一方、現場からは、制度上の大きな課題も伺いました。

北海道の林業政策や補助制度は、大型機械を用いた施業や、皆伐・再造林を中心に組み立てられてきました。このため、小規模な作業道の整備や、選木による長期的な森林管理など、自伐型林業の実態に合った支援制度は十分とは言えません。

道内では、理解のある市町村や森林組合などが、森林環境譲与税を活用しながら取り組みを進めています。しかし、自治体によって知識や支援体制に差があり、北海道庁にも、自伐型林業について相談し、分野横断的な支援を受けられる明確な窓口が確立されているとは言えない状況です。

7月21日に閣議決定された、いわゆる「骨太方針2026」では、森林・林業基本計画に基づき、多様な林業経営体を育成する方向性が示されています。また、6月に閣議決定された森林・林業基本計画では、自伐型林業に取り組む事業者の育成についても触れられています。

国の森林・林業政策も、多様な担い手や、地域の実情に応じた森林づくりを重視する方向へと動いています。

だからこそ北海道も、大規模林業か自伐型林業かという二者択一ではなく、森林の地形、所有形態、地域の人材や産業構造に応じて、複数の林業のあり方を選べる制度を整える必要があります。

私は、この状況から、かつて慣行農業と有機農業が、相容れないもののように扱われていた時代を思い起こしました。

しかし今では、農業も林業も、それぞれの地域や自然条件に応じて、多様な方法を選択することが求められています。これは一時的な流行ではなく、地域の資源を持続可能な形で生かしていくための、後戻りすることのない大きな転換ではないでしょうか。

まずは、道庁における相談窓口を明確にし、実践者、市町村、森林組合、研究者などが同じテーブルで課題を話し合う場をつくること。

そして、小規模で壊れにくい作業道や、長期的な森林管理、複業型の担い手育成などを適切に評価できる支援制度を検討することが必要です。

自伐型林業は、単なる環境保全活動ではありません。

地域の大切な資産である森を守り、その価値を次の世代へ引き継ぎながら、そこで暮らす人の仕事と豊かさを生み出す取り組みです。

北海道の広大な森林には、それぞれ異なる地形、歴史、暮らしがあります。

その多様性に応じた「選べる林業」を実現するため、北海道自伐型林業推進協議会の皆さんからいただいた提言と、今回伺った現場の声を、今後の道議会での議論につなげていきたいと思います。

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著者

広田 まゆみ

広田 まゆみ

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札幌市白石区

肩書 北海道議会議員/NPO推進北海道会議理事
党派・会派 立憲民主党

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