2026/7/15
【佐賀県・鹿島市に学ぶ――人口減少時代の「挑戦する行政」とローカルSDGs】
本日7月15日は、北海道議会「人口減少問題・地方分権改革等調査特別委員会」の道外調査で、佐賀県庁、鹿島市、そしてKATAラボを訪問しました。
① 佐賀県庁――「チェンジメーカー」を育てる行政へ
午前中の佐賀県庁では、人口減少を前提とした地域づくりと、それを支える県庁の役割についてお話を伺いました。
特に印象に残ったのは、県が目指しているのは、単に事業を実施する職員ではなく、地域に変化を生み出す「チェンジメーカー」だということです。
行政が計画を立て、補助金を交付し、地域に実行してもらうという従来型の関係ではなく、職員が地域の中に入り、住民や事業者の声を聴き、課題や可能性を一緒に見つけていく。そして、さまざまな人や資源をつなぎながら、地域から新しい動きが生まれるよう伴走する。そうした職員像を目指しているとのことでした。
その実践を支えているのが「さがデザイン」です。
デザインを単に見た目を整える技術として捉えるのではなく、地域の価値を掘り起こし、それを伝わる形、選ばれる形、持続できる事業へと組み立て直す方法として活用しています。
そして、もう一つ、私が以前から注目していたのが、県外のNPOやCSO(市民社会組織)を佐賀県に呼び込む取組です。
今日の説明では、それを「志の誘致」という印象的な言葉で表現されていました。
行政には公平性が求められるからこそ、どうしても手の届きにくい、きめ細かなニーズがあります。そこに、自発的に動き、専門的なノウハウを持つCSOが「プレイヤー」として加わる。
外から来た組織が地域を一方的に変えるのではありません。地元の人たちの一員となり、ともに地域課題の解決に取り組むことで、地元の自発的な活動との相乗効果を生み出していく。「外から人を呼ぶ」のではなく、地域に必要な志と力をつなぐという考え方なのだと受け止めました。
さらに、こうした活動を支える自由度の高い財政支援も用意されています。
行政の縦割りや、地域と県庁との距離を越え、職員が地域の人たちと対話しながら、課題の背景にある本質を探っていく。その過程そのものが、人材育成であり、組織を変えていく取組でもあるのだと感じました。
視察メンバーからは、「北海道とは自治体の規模も、県庁と市町村との距離も違う」という意見も出ました。確かに、広大な北海道と佐賀県を、そのまま比較することはできません。
しかし、「規模が違うから北海道では難しい」と結論づけてしまえば、今回の視察から学べるものは少なくなってしまいます。
むしろ距離が遠く、地域ごとの事情が大きく異なる北海道だからこそ、職員が現場に入り、地域の言葉を行政の政策へ翻訳する機能や、地域同士、さらには地域と外部の人材や組織をつなぐ中間支援の仕組みが、より必要なのではないでしょうか。
何より心に残ったのは、説明してくださった職員の皆さんが、とてもイキイキとしていたことです。
与えられた事業をこなしているというより、自分たちの仕事が地域の変化につながることに、手応えと誇りを感じているように見えました。
② 鹿島市――自然のつながりを軸にしたローカルSDGs
午後は鹿島市へ移動し、鹿島市と太良町が進めるローカルSDGsの広域連携について伺いました。
多良岳から森、里、川を通り、有明海や干潟へとつながる自然の循環。自然は市町村の境界線で分かれているわけではありません。
自然資本や第一次産業、地域経済を一つの圏域として捉え、二つの自治体が連携して地域の未来を描くという発想に、大きな可能性を感じました。
北海道でも、水道や消防、廃棄物処理など、行政サービスの効率化を目的とした広域連携は進んでいます。しかし、自然資本や地域経済、地域課題の解決を軸として、自治体の枠を越えたローカルSDGsの連携は、まだ十分に展開されていません。
広大な北海道だからこそ、市町村単位だけでなく、流域、森林、海、農業、観光など、共通する自然や産業を軸に地域を捉え直す視点が必要です。
鹿島市と太良町の取組が、今後どのように発展していくのか。「鹿島モデル」として期待したいと思います。
一方、県の関与があまり強く感じられなかったことは、少し残念でした。
自治体間の連携を継続し、民間や大学なども巻き込みながら発展させるためには、県が市町村の間をつなぎ、広域的な視点を示す役割も重要だと考えます。
③ KATAラボ――鉄路の危機を「自発の地域づくり」へ
続いて訪問したKATAラボでは、西九州新幹線の開業に伴って肥前鹿島駅への特急停車が激減したという危機を、地域を変える契機とした取組を伺いました。
佐賀県、鹿島市、太良町が連携し、肥前鹿島駅を地域全体の玄関口とする「駅やど構想」、地域の日常そのものを価値として伝える「まち歩き・暮らし観光」、農産物の付加価値と関係人口を高める「みかんの木オーナー制度」などが進められています。
ここで大切にされていたのは、「自発の地域づくり」です。
行政が答えを用意するのではなく、住民や事業者の思いを引き出し、挑戦に伴走し、将来にわたり地域を支える人を育てていく。午前中の県庁で聞いた「チェンジメーカー」の考え方が、地域の現場で形にできるようトライされているようです。
佐賀県には、北海道のような振興局はありません。だからこそ、鉄路をめぐる地域の危機に、県庁職員が自ら現場へ飛び込み、市や町、地域の人たちとトライ&エラーで、一緒に考え、伴走する仕組みをつくったとも言えます。
では、北海道はどうでしょうか。
私たちには、地域に近い行政組織として振興局があります。むしろ、その強みをもっと生かせるのではないか。中央政府に求めるべきことは求めつつ、お金がなくても、もっとできることがあるはずです。
組織が大きいことや地域が広いことを「できない理由」にするのではなく、北海道庁と振興局が、地域の自発を生み出すためにどう現場に関わるのか。
今回視察した取組は、その役割を改めて考える大きなヒントになりました。
ただ、同じ鹿島市・太良町を舞台としながら、KATAラボの取組と、ローカルSDGsの広域連携は、別個の事業として進められていました。
どちらも価値ある取組だからこそ、自然資本や産業をつなぐローカルSDGsと、人や挑戦を育てるKATAラボが結びつけば、より大きな地域戦略になるのではないか。その点には、惜しさも感じました。
そして、まさにこうした個別の取組をつなぎ、一つの圏域の将来像として描いていくことこそ、県や道といった広域自治体に求められる仕事ではないかとも感じました。
人と取組を、一つの地域ビジョンへ
人と人をつなぐ。
地域と行政をつなぐ。
自治体と自治体をつなぐ。
外からの「志」と地域をつなぐ。
そして、個々の取組を一つの地域ビジョンへとつなぐ。
人口減少時代に必要なのは、新しい事業を増やすことだけではなく、地域の中にある力を見つけ、自発的な変化を生み出す「つなぐ力」なのだと、改めて考えた一日でした。

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