2026/8/8
「消費税を減税しても食料品の店頭価格は下がらない、だから『物価高対策』にはならない。」そうした批判がある。ここは百歩譲ってその指摘のとおりだとしよう。それでも今回の減税に反対する理由にはならない。なぜなら、価格が下がらないということは、減税分がどこかに残るということだ。残る先は、デフレ期に仕入れ値の上昇を売値に転嫁しきれず、自らの利幅を削って耐えてきた流通過程の事業者である。彼らの手元に資金が戻る。それは決して「効果がなかった」ということではない。
減税とは、価格を動かす政策である前に、民間から吸い上げた資金を民間に戻す政策であることを忘れてはならない。
食料品に限って税率を1%まで下げるだけでも、1年でおよそ5兆円、2年で10兆円が国民と企業の手元に返る。日本経済の規模のほぼ1%にあたる資金が、毎年政府の側から民間の側へ移るということだ。これを景気に対する下支えと呼ばずに何と呼ぶのか。
景気が過熱し、旺盛な需要が供給を上回って物価を押し上げているのならいざ知らず、いま起きているのはエネルギーなど輸入コストの上昇に端を発する物価高である。需要を冷やすべき局面ではない。民間に資金を戻すことに、何のためらいもいらない。
したがって「価格が下がらないから無意味だ」という論法そのものが、政策判断として誤っている。減税の効果を店頭価格の引き下げという一点だけで測ろうとすれば、民間から取りすぎた税を返すという、経済全体に及ぶ最も大きな効果を取り落とすことになる。不完全だからという口実で今回の減税を止めれば、喜ぶのは霞が関官僚だ。
もっとも、今回の減税には重大な弱点がある。期限が切られていることだ。
2年で終わるとわかっている減税は、家計にとっては一時的な所得の上振れにすぎない。人は先行きの見通せない収入を消費に回さず、貯蓄に振り向けることはフリードマンの恒常所得仮説の指摘通りだ。企業も同じで、2年後に元へ戻るとわかっている環境を前提に設備投資へ踏み切ることはない。年間の減税額が同じ5兆円であっても、恒久であるか時限であるかで、景気浮揚の効果は段違いになる。
だからこそ、今回の食料品消費減税を終着点にしてはならない。食料品への課税をゼロ税率として恒久化し、年間5兆円規模の資金を継続的に民間へ戻し続けること。今回の減税をその第一歩と位置づけ、オールドメディアとそのバックにいる霞が関官僚の反対を跳ねのけ、期限を撤廃することが不可欠だ。

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