2026/8/5
自民、食料品の消費税1%方針を了承 反対姿勢の前税調会長らは欠席:自民党総務会が8月5日、食料品の消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針を了承した。減税に慎重とされてきた宮沢洋一前税制調査会長、中谷元前防衛相、谷公一元国家公安委員長らは、この場に姿を見せなかった。
新聞の見出しは「欠席」とだけ伝える。しかし自民党の意思決定の作法を知る者にとって、この二文字は決定的な意味を持つ。減税反対派は、拒否権を行使できる位置を自ら降りたのである。
総務会とは何をする場か。まず前提を整理しておきたい。総務会は自民党の最高意思決定機関である。政府が閣議決定する方針も、内閣が国会に提出する法案も、あらかじめ党の了承を得るのが長年の慣行だ。これを事前審査制と呼ぶ。
そして総務会の議決は、出席者の全会一致が原則とされてきた。多数決ではない。一人が異議を唱え続ければ、議事は前に進まない。この慣行こそが、党内の少数の実力者に事実上の拒否権を与えてきた装置である。
だからこそ、反対論を抱える議員の身の処し方には、独特の作法が生まれる。正面から異議を唱えて議事を止めれば、政権への公然たる反乱となる。かといって席に着いて黙っていれば、賛成したものと数えられる。その中間に用意された選択肢が、欠席であり退席なのだ。「賛成はしない。だが阻止もしない」という、沈黙による意思表示である。
つまり今回の欠席は、反対派が矛を収めたことの表明にほかならない。全会一致という建前が保たれたということは、彼らが拒否権を使わなかったということだ。景気過熱局面で財政拡張が問われている場面ならいざ知らず、物価高が家計を直撃するいま、減税に正面から立ちはだかる大義名分は乏しい。執行部は強行手続きに訴える必要すらなかった。反対派の劣勢は明白である。
より本質的な変化は、党税制調査会の位置にある。戦後の税制は、長らく党税調のいわゆるインナーが実質的に決め、財政当局と歩調を合わせてきた。財政規律を重んじる宮沢氏は、その中枢に長く座った人物である。その党税調が今回、少なくとも形の上では首相の決断を追認する側に回った。
理由は明快だ。2月の衆院選で、食料品の消費税を2年間ゼロにすると掲げて大勝した。この民主的正統性の前に、従来型の反論は通用しなかった。消費税率の引き下げは1989年の導入以来初めてである。党内力学の転換は、この一点に凝縮されている。
もっとも、楽観は禁物である。勝負はこれからだ。
1%、2年間という設計そのものが、慎重論への譲歩の産物にほかならない。財源が曖昧だという批判、2年後に8%へ戻すのは困難だという指摘は、そのまま巻き返しの足がかりになる。臨時国会での法案審議が次の戦場だ。
食料品への課税を軽くする方向は正しい。誤っているのは、それを2年で打ち切るという設計である。減税は恒久的であってこそ家計の予想を変え、消費を動かす。期限を切れば、駆け込みと反動を招きかねない。総務会通過は到達点ではない。出発点である。ここから恒久化と、さらなる税率引き下げへ議論を進めることが急務だ。
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