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「親なき後」に備える——住まいと地域生活の保障|第5回

2026/6/30

「うちの子は、私が死んだあとどこで暮らすのだろう。」

知的障がいや精神障がいのある子どもを持つ親御さんの多くが、この不安を胸に抱えながら日々を過ごしています。
この問いに、行政はどう答えられているか。
今回はその現実を直視します。


「親なき後」という課題

障がいのある人を支えてきた親が高齢になり、介護や支援が難しくなる——。
そのときに備えた居住と生活支援の場が、まだ圧倒的に足りていません。

特に知的障がい・精神障がいのある方は、一人暮らしや一般住宅での生活に一定のサポートが必要です。
そのサポートを担う場のひとつが「グループホーム(共同生活援助)」です。

グループホームとは、数人の障がいのある方が共同で暮らしながら、スタッフの支援を受けて地域で生活する住まいの形です。
施設入所とは異なり、「地域の中で暮らす」という理念のもとに設けられています。


板橋区の現状:531人が利用、目標は651人

板橋区内のグループホーム利用者は、令和5年度に 531人 となりました。
増加傾向にあることは確かです。

しかし、板橋区の「障がい福祉計画(第7期)」が定める令和8年度末の目標は 651人 です。
令和5年度からあと3年で120人分——つまり約23%の増加が求められています。

用地の確保が難しく、整備が計画通りに進まないケースが多いのが現状です。

特に深刻なのは、重度の障がいのある方に対応できるグループホームと、緊急時に利用できる「ショートステイ」の不足です。
計画書にも「重度対応グループホーム・緊急ショートステイの不足」が明記されており、区としても課題と認識しています。


地域移行の目標——施設から地域へ

板橋区が目指しているのは、グループホームの整備だけではありません。
「施設入所から地域生活へ」という大きな流れを作ることです。

障がい福祉計画(第7期)では、次の目標が掲げられています。

  • 令和4年度末時点の施設入所者386人のうち、令和8年度末までに24人以上が地域移行する
  • 同期間に施設入所者数を 20人以上削減する

「削減」という言葉だけ聞くと、サービスを減らすように聞こえます。
しかし本来の意味は、施設で暮らさざるを得ない方を減らし、地域の中で暮らせる環境を整えるということです。
方向性としては正しい。ただし、受け皿となるグループホームや地域の支援体制が整っていなければ、絵に描いた餅になってしまいます。


精神科の「長期入院」という問題

もう一つ、忘れてはならない問題があります。

精神障がいのある方の「長期入院」です。

全国で、1年以上の長期入院を続ける精神障がい者は約 20万人 にのぼります(入院中の精神障がい者全体の約3分の2)。

毎年約5万人が退院する一方で、新たに約5万人が長期入院に移行しているという構造が続いており、減っていません。
国連障害者権利委員会は、日本に対して「施設・病院への隔離政策の廃止」を強く求めています。

地域に戻れない理由は何か。
受け皿となるグループホームが足りない。
退院後の生活を支える相談支援が手薄。
住まいを確保できない。
この3つが主な壁です。

板橋区でも精神障がい者は令和元年度から令和5年度の間に 約27%増(約1.27倍)という急激な伸びを示しています。
地域の支援体制を今すぐ拡充しなければ、退院後に行き場を失う方が増えていくことになります。


地域生活支援拠点とは何か

「地域生活支援拠点」という仕組みも、「親なき後」対策の重要な柱です。

これは、障がいのある方が緊急時や親の急病・死亡などの危機的状況に直面したとき、迅速に相談・入居・支援が受けられる体制を地域に整えるものです。

具体的には次の5つの機能を持ちます。

  1. 相談:24時間・365日対応できる緊急相談体制
  2. 体験の機会・場の提供:自立生活や共同生活を体験できる場
  3. 緊急時の受け入れ・対応:ショートステイなど短期入所による緊急対応
  4. 専門的人材の確保・養成:支援人材の育成・研修
  5. 地域の体制づくり:関係機関のネットワーク形成

板橋区は障がい者計画2030(令和6年3月策定)においてこの整備を重点施策の一つに位置づけていますが、24時間対応の緊急相談・ショートステイの充実はまだ途上にあります。


中妻じょうたとして言いたいこと

私が障がい者政策に取り組む原点は、長男の自閉症診断です。
「親が倒れたらどうなるのか」という問いは、私自身のものでもあります。

率直に言います。
現状の板橋区の取り組みは、数値目標こそあれ、動く速さが足りていません。

グループホームを1カ所増やすには、用地の確保から整備まで数年かかります。
「令和8年度末に651人」という目標が今の勢いで達成できるか、私は危惧しています。

必要なことは3つあると考えます。

第一に、グループホームを作りやすい環境整備です。
土地と建物の確保を助ける補助制度を充実させ、運営事業者が参入しやすい条件を整えることが急務です。

第二に、緊急ショートステイの拡充です。
親が突然入院したとき、子どもはどこへ行けばいいのか。
今の板橋区には、その緊急の受け皿が十分ではありません。
「命綱」となる緊急受入の場所を確保することを、最優先課題として区に求め続けます。

第三に、相談支援体制の強化です。
障がいのある方とその家族が、「将来の住まい」「緊急時の対応」を事前に相談し、準備できる仕組みを充実させることが必要です。
基幹相談支援センターの機能強化を、議会で引き続き訴えていきます。


連載を終えるにあたって

この連載では5回にわたり、障がい者政策の各テーマを掘り下げてきました。

障がいのある方が、その人らしく地域で生きていける社会をどう作るか。
それは「弱者支援」の話ではなく、誰もが安心して老いていける社会の設計です。

板橋区議として、この課題を議会の場で問い続けます。
住民の皆さんのご意見・ご経験も、ぜひ聞かせてください。


【出典】

  • 板橋区障がい者計画2030および障がい福祉計画(第7期)・障がい児福祉計画(第3期)(令和6年3月):板橋区公式HP
  • 厚生労働省「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性(取りまとめ)」:厚労省PDF

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