田中 としかね ブログ

日本酒で乾杯条例

2026/6/16

 福島県会津若松市「日本酒で乾杯条例」

 今回紹介するのは福島県の会津若松市で制定された条例です。福島県といえば奥羽山脈と阿武隈高地という二つの南北に走る尾根線によって、三つの地域に分けられるのでしたね。奥羽山脈と阿武隈高地に挟まれた真ん中の地域は「中通り」と呼ばれ、県庁所在地である福島市や県内最大人口を誇る郡山市が含まれます。阿武隈高地の東側は「浜通り」と呼ばれ、面積において県内最大で人口は第2位であるいわき市が含まれます。奥羽山脈の西側は「会津地方」と呼ばれ、奥羽山脈だけでなく、西は越後山脈、南は下野山地、北は飯豊山地に囲まれた、会津盆地を形成しています。「会津地方」は分水嶺である奥羽山脈の西側に位置していますから、川は日本海に注ぐことになりますよ。気候も日本海側気候になりますからね。
 そんな「会津地方」の中心地が、今回紹介する会津若松市です。会津若松市の東側は猪苗代湖に面しています。日本国内で4番目に広い湖(1位:琵琶湖、2位:霞ヶ浦、3位:サロマ湖)で、阿賀野川水系に属する断層湖です。白鳥の飛来地としても有名で、人気の観光スポットになっています。湖水が澄んでいることから「天鏡湖」の別名もあります。磐梯朝日国立公園に含まれますからね。
 「阿賀野川水系」という言葉が出てきました。新潟県を流れる阿賀野川は、その上流である福島県側を阿賀川と呼びます。猪苗代湖は阿賀野川の水源の一つになります。新潟市と会津若松市は、阿賀野川・阿賀川という日本有数の大河(長さは210㎞で10位、流域面積は7710k㎡で8位)で結ばれていて、古くから人の移動や物資・情報の往来が盛んに行われてきました。特に江戸時代には、北前船により全国から運ばれてきた塩をはじめとする物資が新潟湊を経由して、阿賀野川をさかのぼり会津へと運ばれました。幕末の1858年に締結された日米修好通商条約でも、日本海側では唯一アメリカから開港を迫られたのが新潟ですからね。日本を代表する港であったといえます。そんな湊町である新潟市と、城下町である会津若松市は、舟運によって古くから結びつきを深めてきたのですね。東日本大震災(2011年)の際には、新潟市から会津若松市を経由して、燃料や日常生活物資が被災地に届けられ、両市を結ぶ基幹ルートの重要性と長年の交流による「絆」が改めて確認されました。このことが契機となり、2012年には「新潟市・会津若松市観光交流宣言」が調印され、2023年には「新潟市・会津若松市観光振興に関する連携協定」に発展しています。
 さて「日本酒で乾杯条例」です。正式な名称は「会津清酒の普及の促進に関する条例」で、2014年に施行されました。条文には次のように書かれています。
 「この条例は、本市の伝統産品である清酒による乾杯の習慣をはじめ、会津清酒をより深く理解し楽しむ機会を創出し広めることにより会津清酒の普及促進を図ることを通じて、会津地域及び日本の文化への理解と継承の促進に寄与することを目的とする」と。
こうした「地元で生産された酒などによる乾杯を奨励する」という趣旨の、いわゆる「乾杯条例」(条例本文中に「乾杯」という言葉を使用している条例)は、現在確認された限りで全国「194」の自治体にあるそうです。大人気ですね。その多くは地元の議員による「議員提出議案」をきっかけに制定されています。ちなみに「一番最初」に条例制定した自治体はというと?2013年に「清酒の普及の促進に関する条例」を制定した京都市になります。「伏見の酒」で有名ですからね。都道府県別の「日本酒の生産量」のランキング(2022年)でも京都府は第2位につけています。では気になる1位は?「灘の酒」で有名な兵庫県です。神戸市でも2014年に「神戸灘の酒による乾杯を推進する条例」が制定されていますよ。そして第3位につけているのが新潟県なのです。
 「新潟のお酒と、会津のお酒は違います。会津の料理に合うのは、やはり会津のお酒です!」とおっしゃるのは、会津若松商工会議所の会頭です。「商工会議所」というのは、「商工会議所法」によると「その地区内における商工業の総合的な改善発達を図り、兼ねて社会一般の福祉の増進に資することを目的とする」公共経済団体ということになります。その歴史は古く、1878年(明治11年)に渋沢栄一によって設立された「東京商法会議所」が始まりとされています。「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢栄一ですね。「近代日本医学の父」と呼ばれる北里柴三郎と、「日本女子教育の母」(「母」と言わず「先駆者」と呼ぶケースも多いです)とも呼ばれる津田梅子を合わせた「新紙幣」の三人は、セットで覚えておいてくださいね。
 会津若松商工会議所会頭の話に戻ります。「山間地である会津では、新鮮な海産物の入手は難しく、北前船等を経由して阿賀野川沿いから運ばれてくる保存性のよい干物が中心でした。名物である、ニシンの山椒漬、棒タラの煮つけ、こづゆ(ホタテの貝柱)、すべて乾物を使ったものです。」確かにそうです。「淡麗辛口(たんれいからくち:すっきりしている)の新潟のお酒は、新鮮な魚介に合うのです。芳醇旨口(ほうじゅんうまくち:こくがある)の会津のお酒は、こってりした酒の肴にぴったりでしょう!」確かにその通りです。地元のお酒を「乾杯」ですすめることには、大いに意味があるのですね。

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著者

田中 としかね

田中 としかね

肩書 文京区議会議長 特別区議会議長会会長  
党派・会派 自由民主党

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