2026/6/12
前回の記事では、札幌市の財政推計をもとに、収支不足200億円超・5年後の基金枯渇という現状をお伝えしました。
今回はその続編として、財政悪化のもう一つの柱である「建設事業費の増加」と「市債(借金)残高の膨張」に焦点を当てます。老朽化した公共施設の更新ラッシュが重なる今後10年間、市の財政はどのような局面を迎えるのか。資料のデータをもとに整理します。

目次
財政悪化の大きな要因の一つが、今後本格化する公共施設の老朽化対応と大型建設事業です。政令指定都市に移行した後に集中的に整備された施設が、いっせいに更新時期を迎えています。
推計によれば、建設事業費は令和8年度以降増加し、令和11年度(2029年度)をピークに、令和15年度(2033年度)まで高止まりが続く見込みです。物価・人件費単価の上昇による工事費の増加や、アクションプラン策定時には具体化していなかった事業の追加も、費用を押し上げる要因となっています。

主な建設事業としては、以下のものが推計に含まれています。
これらの事業費はあくまで現時点での仮定額です。事業の実施可否・時期・費用は未確定のものも多く、今後大きく変動する可能性があります。
建設事業を実施する際、市は「市債(地方債)」を発行して費用を調達し、後年度にわたって返済します。市債の返済は最長30年にわたるため、今の建設事業の負担は将来世代にも引き継がれます。
資料では、各年度の建設事業費と公債費(元利償還金)を合わせた「実質的な市の負担額」を推計しています。その結果、令和21年度(2039年度)に1,279億円でピークを迎え、令和8年度と比べて約2.1倍(+110.8%)に達する見込みです。ピーク後も同程度の負担が長期間続くと推計されています。
なお、市債の返済額の一部は国から「地方交付税」として補填される仕組みがあります。市が実質的に負担するのは、各年度の一般財源に、建設債の元利償還金から交付税措置分を差し引いた額を加えたものです。
建設事業費の増加に伴って市債の発行額が増えることで、市債残高(借金の総額)は今後大幅に膨らむ見通しです。

| 残高の種類 | ピーク時期 | ピーク額 |
|---|---|---|
| 一般会計市債残高(建設債+臨時財政対策債) | 令和15年度(2033年度) | 1兆2,654億円 |
| 建設債残高のみ | 令和21年度(2039年度) | 1兆1,975億円 |
臨時財政対策債とは、地方交付税の財源不足を補うために国が発行を認める特別な地方債で、後年度に交付税で措置されます。建設債は施設整備のための借入です。いずれも市の負債として計上されます。
自治体の財政健全性を測る指標の一つに「実質公債費比率」があります。これは、借金の返済負担が標準的な収入規模に対してどの程度かを示すもので、数値が高いほど財政は苦しい状態にあります。

推計によれば、財政状況の改善に向けた対策を行わなければ、この比率は急速に悪化し、以下のような段階を踏んで深刻な局面を迎える可能性があります。
| 時期 | 比率 | 区分・意味 |
|---|---|---|
| 令和16年度(2034年度) | 18%超 | 起債許可団体|市債の発行に国・道の許可が必要になる |
| 令和19年度(2037年度) | 25%超 | 財政健全化団体|財政健全化計画の策定が義務付けられる |
| 令和25年度(2043年度) | 35%超 | 財政再生団体|国の指導のもと財政再生計画を策定し、サービス水準などを厳しく見直すことが求められる |
「財政再生団体」とは、いわゆる「財政破綻」に近い状態を指し、北海道夕張市がかつてこの状態に陥ったことで広く知られています。推計はあくまで「対策を行わなかった場合」の試算ですが、市自身が「目前に迫っている」と表現するほど危機感は強まっています。
こうした厳しい見通しを受け、資料では今後の財政運営について以下の方向性が示されています。
資料は、「聖域なき見直しに着手せざるを得なくなる状況が目前に迫っている」と明記しており、市民サービスへの影響を極力避けながらも、抜本的な対策が不可欠との認識が示されています。
札幌市の財政について、市民として気になること・行政に伝えたいことがあればぜひご意見をお寄せください。
著者:角谷尚哉(かくたに なおや)/医学博士・理学療法士。株式会社Health Link 代表取締役として心臓リハビリテーションの普及と医療・介護人材の育成に取り組む。国民民主党北海道 札幌市豊平区 政策委員。2027年札幌市議会議員選挙(豊平区)に向けて活動中。
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カクタニ ナオヤ/38歳/男
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