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副首都法案、参院本会議で成立。だからこそ「大阪ありき」を検証すべき

2026/7/25

国民のための国家機能分散になっているのか

副首都法案が、参議院本会議で可決・成立しました。

採決結果は、投票総数244、賛成123、反対121。
わずか2票差での可決でした。

この数字からも、副首都構想をめぐる国会内の意見が大きく割れていたことが分かります。

私は、副首都構想そのものに反対しているわけではありません。

首都直下地震や大規模災害に備え、東京一極集中を見直し、政治・行政・司法・経済・通信・物流などの国家機能を分散させることは、国民生活を守る上で極めて重要です。

実際、副首都法案も、大規模災害に備えて国家社会機能の継続性を確保し、多極分散型経済圏の形成を通じて日本経済の成長に資することを目的としています。

だからこそ問われるべきなのは、今回成立した副首都法案が、本当に国民のための制度として設計されているのかという点です。

国民生活が厳しい中で、なぜ副首都法案を急ぐのか

参議院本会議での反対討論では、現在の国民生活の厳しさが指摘されました。

物価高が続き、燃料や原材料価格の上昇も国民生活や地域経済に大きな影響を与えています。

本来、与党が優先すべきは、選挙で掲げていた減税や社会保険料の負担軽減ではなかったのでしょうか。

それにもかかわらず、国民の負担軽減に直結する法案ではなく、国家中枢機能をどこでどのように維持するのかという、国の形に関わる重要法案を短期間で成立させたことには疑問が残ります。

副首都構想に意義があるとしても、巨額の財政負担を伴う可能性のある国家プロジェクトを進めるのであれば、必要性、費用対効果、国民負担について、もっと丁寧な説明が必要です。

国民生活が苦しい中で、なぜ今この法案を急ぐのか。

この問いに対して、国民が十分に納得できる説明が尽くされたとは言い難いと思います。

なぜハード整備から入るのか

反対討論で特に重要だと感じたのは、国家中枢機能のバックアップを考えるなら、まずオンラインやバーチャルな仕組みを検討すべきではないかという指摘です。

災害時に、国会、行政、司法などの中枢機能をどう維持するのか。

この課題に対して、いきなり建物や都市整備といったハード面から入る必要があるのかは、冷静に検証すべきです。

オンライン国会、裁判所機能の代替、行政データの分散保管、通信インフラの冗長化、行政手続のデジタル化など、まず検討すべきソフト面・デジタル面の対策は多くあります。

それにもかかわらず、大規模な都市整備や副首都指定の議論が先行するのであれば、「国家機能のバックアップ」という名目で、実際には開発事業が先にあるのではないかという疑念が生じます。

国家機能を守るための制度なのか。
それとも、大規模開発を進めるための制度なのか。

この点は、今後も厳しく見ていく必要があります。

大阪ありきでは、危機管理として不十分ではないか

災害に備えた首都機能バックアップと言いながら、南海トラフ巨大地震の影響を受ける可能性がある大阪などが対象から除外されていない点も、反対討論で指摘されていました。

大阪には、経済規模、都市機能、交通網、空港・港湾、大学・企業の集積など、大きな強みがあります。

西日本の経済・行政拠点として、大阪が重要な役割を担うことは否定できません。

しかし、国家中枢機能のバックアップ拠点として考えるのであれば、南海トラフ巨大地震、津波、液状化、長期浸水などのリスクを無視することはできません。

危機管理を目的とするなら、東京と同時被災しにくく、災害リスクの系統が異なる地域を、全国的に比較検討すべきです。

大阪が候補になること自体を否定するものではありません。

問題は、最初から「大阪ありき」で議論が進んでいないかという点です。

二重・三重の行政投資にならないか

副首都機能を複数の大都市に分散させる場合、国会、行政、司法、通信、交通などの機能が重複し、莫大な整備費や維持費がかかる可能性があります。

国家機能のバックアップは必要です。

しかし、それが二重・三重の行政投資となり、将来世代に大きな負担を残すなら本末転倒です。

複数の大都市に分散するのか。
それとも、東京と同時被災しにくい地方都市に一定の機能を集中させるのか。

安全性、迅速性、費用対効果の面から、丁寧に比較すべきです。

その議論を十分に尽くさないまま、結論ありきで制度だけを先に通すことには、強い違和感があります。

「大阪のための制度」になっていないか

反対討論では、今回の副首都法案が、大阪の副首都構想と多くの部分で重なっているのではないか、という指摘もありました。

日本全体の危機管理や発展を考えた制度というより、大阪に開発事業、予算、税制措置を持ってくることが前提になっているのではないか。

この疑問に対して、国会審議の中で十分に納得できる説明が尽くされたとは言い難いと思います。

副首都構想は、大阪のための制度であってはなりません。

また、特定政党の選挙対策や、連立政権を維持するための取引であってもなりません。

国家の危機管理も、大都市制度の改革も、特定の政党や特定の地域への予算・権限配分を目的とするものではなく、日本全体と国民全体、そして将来世代の利益を基準に決めるべきです。

多極分散とは、東京と大阪の二極集中ではない

副首都法案では、多極分散型経済圏の形成も目的とされています。

しかし、多極分散とは、東京と大阪の二極を強化することではないはずです。

本来の多極分散とは、全国各地域がそれぞれの特色を生かしながら、国家機能や経済機能を分散し、互いに補完し合う国土構造をつくることだと考えます。

大阪だけでなく、名古屋、京都・奈良、仙台、札幌、福岡・北九州、さいたま新都心など、全国にはそれぞれ強みと課題を持つ地域があります。

そして、その中には、本庄市を含む埼玉県北部地域も含まれるべきではないかと考えていま

本庄市を含む埼玉県北部にも検討の余地がある

この点で、私は本庄市を含む埼玉県北部地域にも、内陸型バックアップ拠点としての可能性があると考えています。

本庄市周辺は、東京から近すぎず遠すぎない距離にあります。

上越新幹線、JR高崎線、関越自動車道、国道17号など、首都圏と北関東・上信越方面を結ぶ交通軸上にもあります。

湾岸部とは異なるリスク構造を持つ内陸地域であり、首都直下地震や南海トラフ巨大地震と同一のリスクに偏らない分散先として、検討する価値はあるのではないでしょうか。

この点については、本庄市も近い問題意識を示しています。

本庄市長コラムでは、本庄市と児玉郡美里町・神川町・上里町について、これまで自然災害の少ない地域として知られ、記録的な洪水や土砂災害、大規模な地震被害が少ない地域であることに触れています。

もちろん、活断層の存在や近年の記録的な大雪などを踏まえれば、「災害が起きない地域」と考えるべきではありません。

しかし、広がる台地による広域水害への強さ、地盤の安定性、南海トラフ巨大地震や首都直下地震において深刻な被害を受ける可能性が比較的低いとされる点は、内陸型バックアップ拠点としての大きな優位性です。

また、本庄市・児玉郡は、関越自動車道、主要幹線道路、上越・北陸新幹線、在来線などの道路・鉄道網を有しており、平時・災害時を問わず機動力を発揮できる地域です。

首都圏に深刻な被害が生じた際にも、物資輸送や人員派遣、広域支援の要として機能し得る地域だと考えます。

実際に、本庄市と児玉郡1市3町は、防災庁の地方設置に向けて国への要請活動を開始するとしています。

これは、私が主張している「本庄市を含む埼玉県北部地域を、危機管理・行政継続・広域物流などの一部機能を担う候補地として検討すべき」という考えとも方向性が重なります。

ただし「本庄市を副首都に」と単純に主張するものではない

誤解のないように申し上げると、私は「本庄市を副首都に」と単純に主張しているわけではありません。

副首都として、首都中枢機能の全部または大部分を代替するには、相当な都市機能が必要です。

大阪や名古屋と比べれば、本庄市を含む埼玉県北部地域には、人口・経済規模、国の行政機関の集積、宿泊施設、医療機能、警備体制、国際会議機能などの面で課題があります。

また、深谷断層帯などの地震リスクも存在します。

したがって、過度に「安全な地域」と言い切ることはできません。

大切なのは、現実的な役割分担です。

国の多極分散政策の中で、危機管理、行政継続、データバックアップ、広域物流、防災支援、人員派遣などの一部機能を担う候補地として、本庄市を含む埼玉県北部地域も検討対象に加える。

そのような現実的な議論こそ、今後必要だと考えます。

成立したからこそ、これから厳しく見ていく

副首都法案は可決・成立しました。

しかし、成立したからといって、国民の疑問が解消されたわけではありません。

本当に国民のための制度なのか。
大阪ありきで進まないか。
財政負担は明らかにされるのか。
全国の候補地を公平に比較するのか。
オンラインやデジタルを含めた代替手段は検討されるのか。
将来世代に無駄な負担を残さないのか。

これらの点を、今後も厳しく見ていく必要があります。

国家100年の計に関わる制度を、政権維持や政党間の取引にしてよいのでしょうか。

十分な検証も国民への説明もないまま、数の力で押し通す政治は、民主主義への信頼を損ないます。

副首都構想は、特定地域のためでも、特定政党のためでもなく、国民全体のための制度であるべきです。

大阪には大阪の役割があります。
名古屋にも、さいたまにも、各地域にそれぞれの役割があります。

そして、本庄市を含む埼玉県北部地域にも、内陸型バックアップ拠点として果たせる役割があるはずです。

副首都法案は成立しました。
だからこそ、これからが本当の検証の始まりです。

今後も、この制度が本当に国民のために運用されるのか、冷静に見極め、発信してまいります。

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著者

出牛 じゅんいち

出牛 じゅんいち

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肩書 本庄つむぎの会 代表 IT関連企業 勤務
党派・会派 無所属
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