2026/3/17
本年、東京都におけるドクターヘリの運航休止が話題となりました。技術者、医療従事者の不足、制度設計の限界、そして支援が必要な人に届ききらない現状。東京の医療・福祉は、いま構造的な問いを突きつけられています。令和8年度予算を審議する第一定例会厚生委員会(保健医療局所管分審議)において、ドクターヘリについて、予防医療について、薬局の役割について、今月が厚労省の定める対策強化月間でもある自殺対策について取り上げました。
以下、実際の質問と東京都からの答弁を整理したものです。
本年話題になりました、東京都ドクターヘリ事業について伺います。東京都には、2種類のドクターヘリが存在しています。2007年にスタートし、東京消防庁が管轄する「東京型ドクターヘリ」(こちらは主に島嶼部で運用)と、2022年にスタートした保健医療局管轄の「東京都ドクターヘリ」(こちらは主に多摩地域で運用)となっています。4月以降一時運休となっているのは後者の「東京都ドクターヘリ」でありますが、
A.医療政策部長
・ドクターヘリの運航については、現在、基地病院を運営する法人が運航事業者と委託契約を締結
・来年度から、都が直接委託を行う方式に変更
・昨年七月から複数の事業者にヒアリングし、事業を実施可能と回答した事業者があった
・昨年十二月末に、当該事業者から人員体制の確保が困難等の理由により、事業を実施できない旨の申し出
・他の自治体でドクターヘリの運航を受託している全事業者にヒアリングを行ったが、人員体制の確保が困難等の理由により受託可能な事業者を確保できず、令和八年四月から一時運航を休止
現在進行中の予算委員会の中でも他会派が取り上げましたが、東京都が委託して事業を行っている「ヒラタ学園」について
A.医療政策部長
・ドクターヘリの運航については、現在、基地病院を運営する法人が運航事業者と委託契約を締結
・事業開始にあたり、法人が入札により当該事業者を運航事業者に決定
本件を受けて、先日厚生労働省とも意見交換を行なったのですが、この「ヒラタ学園」は名前の通り整備士養成学校に紐づいた学校法人となっておりまして、全国10拠点のドクターヘリを受託しています。さらに答弁にあった通り都は法人経由の入札という一定の開かれたプロセスの下で「ヒラタ学園」を採択しているとのことです。その時点ですでに実績のあったヒラタ学園が他よりも低い価格で落札してきたとなれば、現行の選定プロセスには則っており事前に予見することは難しかったのではと拝察します。
運行休止に至った背景には全国的な整備士不足と、就職選択時のネームバリューや労働環境の課題、有資格者が一度仕事を辞めた後どこに行ってしまったか追跡・把握しきれないといった中長期的な課題が存在しており、短期的に解決することは1都道府県単位でどうにかなるものではありません。
A.医療政策部長
・ドクターヘリの運休中は、救急車や消防ヘリにより対応
・ドクターカーの運行地域拡大に向け、多摩地域の救命救急センターと調整
・近隣県の救命救急センターに対し、円滑な患者受入れについて協力を依頼
A. 医療政策部長
・島しょ地域の医療機関で対応が困難な患者が発生した場合は、東京消防庁のヘリコプター等で本土へ搬送
・ドクターヘリは島しょの救急搬送に活用していない
なんとなく「ドクターヘリ」と聞くと島嶼部や都心から離れたエリアでの運航を想像している方が多く、限られた文字数での報道が先行している中で改めて「島嶼部に影響がない」という旨ここでご答弁いただいたことは意義のあることだと思っています。ドクターヘリはそもそも23区内では運航されておらず、今回運休となったドクターヘリも多摩地域での運航がメインとなっています。
A.医療政策部長
・東京都ドクターヘリは、通報内容から消防指令室が重症・重篤と判断した場合に直ちに出動を要請
・医師がヘリコプターに同乗して速やかに患者のもとに赴き、必要な治療を行いながら救命救急センターに搬送
・多摩地域の17市町村で運航しており、運航を開始した令和4年3月31日から6年度末までの搬送実績は797人
A.医療政策部長
・ドクターヘリの運航を開始した令和4年3月31日から6年度末までの期間で、出動件数に対してヘリで搬送しなかった件数の割合は約78%
・ヘリで搬送しなかった主な理由は、119番通報時の内容から重症・重篤と判断し出動したものの、患者のもとに先に到着した救急隊員が、患者の状態を確認し重症・重篤ではないと判断して救急車での搬送となった場合など
今回「休止をする」という判断に至ったということは、休止をしてもカバーできると一定の見込みが立ったからこその判断だと思いますが、
A.医療政策部長
・運航休止期間中の対応として、救急車での迅速な搬送、山間地域を中心とした消防ヘリコプターの活用、ドクターカーの運行地域の拡大、さらには近隣県の救命救急センターへの協力依頼など、様々な方策により、多摩地域の救急医療の確保に努めていく。
断定的なことは言えないにしても一定の目処が立っていると受け取りました。ここまでのやりとりを踏まえても、人口や都市の密度において他の道府県と異なった条件であり、ドクターカーの拡充などハードの選択肢も様々に増えている東京都においてドクターヘリの運航の在り方そのものを一度整理すべき時に来ているのではないでしょうか。全国で導入されているドクターヘリですが、例えば唯一独自導入がされていない京都府は府内に基地病院を置かず、関西広域連合として一体的に運用しています。
A.医療政策部長
・都は山梨県と、災害時の都県全域を対象とした相互運航など、ドクターヘリの広域連携に係る基本協定を締結
・広域連携を進めるには、各自治体が運航するドクターヘリの数や医療資源、出動から搬送までに要する時間など、様々な観点からの検討が必要
・まずは、ドクターヘリの運航再開に向けて、取組を進めていく
再開に当たっても様々に方法を模索している最中かと思いますが、本件を踏まえれば、入札形式で委託契約する会社や法人についてはとあらかじめ持続可能性を見越した要件を設ける必要がありますし、隣接県が契約している大手企業に紐づいた会社・法人であっても整備士が不足しているという状態である以上、運航そのものの抜本的な見直しを行うべきではないかと考えます。かねてより指摘されてきたキャンセル割合の高さを踏まえても、隣接県との建設的な連携はもちろん、ドクターカーなどの新しいハードを用いた東京モデルの構築も併せて模索していくことを求めて、次の質問に移ります。
次に予防医療についての質問に移ります。
A(保健政策部長)
・都は、誰もが生涯にわたり健やかで心豊かに暮すことができる持続可能な社会を目指し、健康づくりの基本計画として、東京都健康推進プラン21を策定している。
・このプランでは、健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目指し、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・睡眠といった生活習慣の改善など、対策が必要な18分野について、目標や取組の方向性を定めており、これに基づいて、生活習慣病の予防等に向けた施策を展開している。
対策が必要な分野の一つとして休養・睡眠を掲げているとのことで、来年度予算案では、睡眠の事業が盛り込まれています。その中で、「都民参加型の取組を予定している」となっているが、実践を促す要素は必要だと思う一方で都民参加型の取り組みにおける「成果」は非常に見えにくいものだと考えます。
A(保健政策部長)
・都は、来年度、都民の睡眠に関する意識や行動変容を促すため、参加者を募り、一定期間、望ましい睡眠習慣の実践を継続した方に抽選で景品を提供するキャンペーンを実施する。
・実施に当たっては、参加者数をKPIとして把握しながら、本キャンペーン特設サイトやSNS広告を通じた発信を行うとともに、協賛企業と連携した周知を図るなど、広く都民に参加を呼びかけていくこととしている。
単年度施策終わらないよう、継続的な都民参加とその拡大、民間企業など協賛する側にも継続的に参加してもらえるような施策としていくことを要望します。
「予防医療」という言葉からは、どうしても生活習慣の改善や運動習慣をつけることなど、個の取り組みに依存してしまう印象を受けています。特に高齢者は病院によく行く人となかなか行かない人が大きく分かれており、家族に限らない体の不調を相談する先を持つことが非常に重要です。
A(食品医薬品安全担当部長)
・地域包括ケアシステムは、地域全体で医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する仕組み
・薬局及び薬剤師は、専門性を活かして健康相談等を行い、他職種と連携して高齢者を支援する役割を担う
OTC医薬品などを用いたセルフメディケーションの考え方も一般的になってきたにも関わらず、体の不調があったらまずは「病院」で「お医者さん」に聞くという考え方をもっている人が少なくないのではないでしょうか。
A(食品医薬品安全担当部長)
・薬局には、地域住民の健康の保持・増進を支援する役割あり
・薬局うち「健康サポート薬局」は、地域住民の健康の保持増進を積極的に支援
・国は、「健康サポート薬局」が更に活用されるよう、法改正を行っており、現在、令和9年の施行に向け、制度詳細を検討
・都は、内容が明らかになり次第、都内薬局に新制度を周知し、その機能・役割を都民に広く情報提供し、活用を促進
薬局は、処方箋を受け付ける場所というだけでなく、地域で最も身近に存在する「医療」のひとつです。都としても、今後の制度改正の動向を踏まえながら、薬局が地域の身近な健康拠点として機能していくよう、関係団体とも連携しながらより実効性の高い取組を進めていただくことを要望し、次の質問に移ります。
私は本日黄色の服を着ていますが、これは我が党の色というわけではなく「黄色」は、命の尊さや希望を象徴する自殺対策における啓発のシンボルカラーとしても使われています。3月は厚労省が定める自殺対策の強化月間です。東京都における自殺対策について伺います。
A(保健政策部長)
・都は、電話に加え、SNSによる自殺相談窓口を設け、相談しやすい環境を整備することにより、様々な年代の方からの相談に対応している。
・窓口では、自殺念慮や生きづらさを抱える方を対象に相談を受け付けており、学校や家庭、経済・生活上の問題、性自認など、様々な背景を持つ方からの相談に対応している。
・自殺対策においては、相談できる場所があること、そしてその窓口が多様な背景を持つ方に開かれていることが重要であり、都が電話やSNSなど複数の手段を用意していることは大変重要な取組であると認識している。
A(保健政策部長)
・電話とSNSによる自殺相談は、委託により実施しており、精神保健福祉士や公認心理師等の資格を持つ相談員が、死にたい気持ちを抱える方への支援等に関する研修を受講したうえで、相談対応している。
・また、相談の質の向上と自殺相談特有の相談員の心理的不安を軽減するため、スーパーバイザーを常時配置している。
A(保健政策部長)
・電話相談は正午から翌朝5時30分まで、SNS相談は午後3時から午後10時30分まで、土日祝日も含め、毎日受け付けている。
・令和7年4月から12月までの1日当たりの対応件数及び対応率の平均は、電話相談が約75件で36.5%、SNS相談が約25件で58.0%であった。
・これらの相談窓口では、これまで段階的に受付時間の拡大や回線数の拡充を進めてきており、来年度も、より多くの相談に対応できるよう、時間帯別の回線数の拡充や相談員の配置体制の見直しを図る。
自殺対策において「相談できる時間」があることは非常に重要です。一方で、相談窓口を整備するだけでは足りず、身近な人が深く悩んでいたとしても、本人が弱っている場合誰かに相談するという発想に至らないまま、支援につながれないという事例も少なくありません。
A(保健政策部長)
・相談窓口では、相談者の自殺念慮や生きづらさを受け止めて話を聴き、気持ちを落ち着かせ、自殺を思いとどまってもらうとともに、悩みへの対応方法を共に考えるなど、相談者に寄り添った支援を行っている。
・必要に応じて、保健所や福祉事務所などの専門的な相談・支援機関の案内や仲介を行うほか、相談者の身体や命に危険があると判断した場合には、警察や消防への通報も行っている。
A(保健政策部長)
・自殺未遂により救急搬送された若者等を、地域での継続的な支援につなげるため、都は、多職種の専門家による「東京都こころといのちのサポートネット」により、自殺未遂者を支援する地域の関係機関への助言や本人への支援等を実施している。
・また、地域の関係機関が連携した支援の取組が拡がるよう、救急医療機関の医師や看護師等の医療専門職や区市町村の職員等に対し、自殺未遂者への支援に関する研修を実施している。
A(保健政策部長)
・都は、生きづらさを抱えていても相談に踏み切れない若者がいることを踏まえ、そうした若者への訴求を目的に、新たなウェブサイトを設けることとした。
・サイトには、心の問題解決を手助けするAIチャットボットを実装するとともに、つらい気持ちを軽減するセルフケア方法を発信する。
・また、若者の目に留まりやすい漫画により相談の方法や効果等も伝えるサイトとし、SNS広告やサイトに誘導するカードの配布等により、周知を図る。
A(保健政策部長)
・検索連動型広告については、令和4年度に実施した調査研究において、悩みを抱える方に相談先等の支援情報を届ける有効な手法との結果が得られた。
・事業の実施にあたっては、調査研究で示された、悩みを抱える方が多く検索しているキーワードや、効果的に訴求できる広告文を取り入れており、広告のクリック数をKPIとして設定している。
・来年度実施する若者自殺対策強化事業については、新たに設けるウェブサイトへのアクセス数をKPIとして設定する。
A(保健政策部長)
・都は、令和5年3月に策定した東京都自殺総合対策計画に基づき、生きることの包括的な支援として自殺対策に取り組んでいる。
・計画では、都の自殺の現状等を踏まえ、集中的に取り組むべき重点項目として、早期に適切な支援窓口につなげる取組、自殺未遂者の継続的な支援、若年層の自殺防止などの6つを掲げ、普及啓発や相談・支援事業の拡充を図り、対策を推進している。
A(保健政策部長)
・東京都自殺総合対策計画においては、重点項目である若年層の自殺防止に関し、保健医療局のほか、子供政策連携室、福祉局、教育庁などの施策を盛り込んでいる。
・計画に掲げる取組の着実な実行に加え、若者の自殺防止に資する新たな取組も関係各局で進められており、引き続き、緊密な連携を図りながら若者の自殺対策を推進していく。
ありがとうございました。学校、家庭、人間関係、将来への不安など自殺の背景は多様です。悩みを抱えていても相談に踏み切れないケース、悩みから目を逸らすために自傷や非行には知ってしまうケースも少なくなく、周囲が異変に気付いていても、どこにつなげればよいのか分からないまま孤立してしまうこともあります。個別の事業を積み重ねるだけでなく、社会の様々な場面の中に「支援につながる導線」をどれだけ作れるかが重要です。私も1政治家として党派を超えて連携し、全ての世代が心身健康に生きていける社会の実現のため取り組んでいきたい旨申し上げ、私の質問を終わります。
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ヤマグチ ハナ/28歳/女
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