2026/7/7
— 和歌山県・NPO法人さんどう・白浜町の視察から —
2026年7月 国民民主党東京都議団 視察報告
2026年7月、国民民主党東京都議団は「二地域居住は首都と地方の共栄の解決策となるか」をテーマに、和歌山県を視察しました。本報告では、都市と地方が共に成長するための具体像を、現地の取組と制度課題の両面から整理します。
いま「偏在是正」の名の下に、都税を国税へ切り替えて収奪しようとする動きが強まっています。これは地方自治の根幹を揺るがす行為であり、限られたパイを切り分けるだけのデフレ的発想にほかなりません。私たち都議団は、他会派とも連帯しながら、こうした動きに断固反対します。
同時に「対決より解決」を掲げる私たちにとって、パイ全体を大きくする方策を示すこともまた、重要な役割です。私はライフワークバランスやテレワーク推進の観点から、二つの地域を定期的に行き来する「二地域居住」に注目してきました。偏在是正の議論を経て、これは都市と地方の双方に利益をもたらす、まさに共栄のかたちだと確信を深めています。
二地域居住の最大の特徴は、完全移住を強要しない点にあります。従来「東京 対 地方」というゼロサムで捉えられてきた構図を、個人・地方・都市の三方良しへと転換する可能性を持ちます。
| 主体 | 得られる便益 |
|---|---|
| 個人 | 都市の利便性(仕事・教育・文化)と地方の魅力(自然・食・住環境)の両立。リモートワーク時代に適合し、災害時のセーフティネットにもなる。 |
| 地方 | 消費・住宅リフォーム・外食などの経済波及、担い手確保、空き家・耕作放棄地の利活用、新規ビジネス・雇用の創出。 |
| 都市(東京) | 住宅高騰・通勤ラッシュ・ヒートアイランドの緩和、首都直下地震への分散リスクヘッジ、地方文化の吸収による国際競争力強化。 |
国土交通省が2025年6月に公表した調査では、二地域居住および関係人口は既に相当な規模に達しています。
| 指標 | 人数 | 備考 |
|---|---|---|
| 二地域居住実施者 | 約701万人 | 18歳以上人口の6.7%。年2回以上、1泊以上の滞在 |
| 関係人口 | 約2,263万人 | 18歳以上の2割強。地域と継続的な関わりを持つ者 |
出典:国土交通省「全国の『関係人口』は18歳以上の2割」(2025年6月公表)
法制度面では、2024年5月に改正された広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律(通称「二地域居住促進法」)が同年11月に施行され、二地域居住を「特定居住」として法的に位置付けました。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| ① 特定居住促進計画 | 市町村が方針・拠点整備等を計画化。建築基準法の特例措置などが付与される |
| ② 特定居住支援法人 | 促進活動を行う民間事業者・NPO等を市町村長が指定 |
| ③ 特定居住促進協議会 | 市町村・都道府県・支援法人・住民・宅建業者等による協議の場 |


和歌山県では、進学・就職を契機とした10代後半〜20代の若年層転出が著しく、完全移住だけに依存しない多層的な人材確保戦略へとシフトしています。
| 施策名 | 内容 |
|---|---|
| わかやまLIFE | 移住・二地域居住・関係人口向けの統合ポータル。コワーキング、ゲストハウス、空き家バンク等を一元提供 |
| わかやまFUNBASE | 2025年新設。地域のキーパーソンと都市部住民をマッチング |
| 貴志川線沿線プロジェクト | 県・市・大学・民間が連携し、分散型滞在拠点・体験・人材育成を一体検討 |
| わかやま×ICT | サテライトオフィス誘致の県全体パッケージ |


和歌山市郊外の山東地域では、農業者の高齢化、耕作放棄地、放置竹林、空き家増加といった課題が深刻化していました。これに対し、住民主体のボトムアップ型まちづくりを志向し、2019年3月にNPO法人さんどうが設立されました。
| 事業領域 | 内容 |
|---|---|
| ① 空き家再生・マッチング | 空き家情報の収集、移住者・二地域居住者との仲介、再生・管理 |
| ② 耕作放棄地の活用 | 未利用農地の情報収集とマッチング |
| ③ 地域課題への対応 | 他団体と連携した困りごと解決 |
| ④ 公共施設の管理運営 | 体験農園等の受託運営 |
| ⑤ 里山環境の保全・活用 | 小盆地の里山環境の保全 |
| ⑥ コミュニティ活性化 | 交流拠点「まんなか」の整備、団体間連携 |
| ⑦ 地産品の開発・販売 | たけのこ・みかん・いちじく等を活用 |
2021年に開所した地域交流拠点「まんなか」、四季の郷公園の運営管理、令和3年度「まちを美しくする市民運動功労者表彰」の受賞など、着実に実績を積み重ねています。


白浜町は、県内で最も先進的に二地域居住の制度実装に踏み込んだ自治体です。その歩みは、失敗からの学びと再挑戦の20年史でもあります。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2001年 | 白浜町を情報通信企業の集積地にする構想開始 |
| 2004年 | ITビジネスオフィス開設。入居2社が数年で撤退(地域サポート不足) |
| 2015年 | セールスフォース・ドットコム入居で風向きが変わる |
| 2017年 | 「ワーケーション」施策を開始 |
| 2020年 | 大型オフィス棟「ANCHOR」開設 |
| 2025年 | 県内初の「白浜町特定居住促進計画」を策定 |
2004年の初動失敗を「企業定着には地域サポートが不可欠」という学びに昇華させた点こそ、白浜町モデルの本質的強みです。2025年の計画は、以下の4施策の連携が中核となります。
| 連携施策 | 内容 |
|---|---|
| ① 企業誘致 | シラコンバレー構想の中核 |
| ② ワーケーション | 仕事と休暇の融合。2017年から展開 |
| ③ 保育園留学 | 子連れ家族が一定期間白浜の保育園に通える仕組み |
| ④ 旅先納税「Yanico」 | 滞在中の経済的貢献を制度化 |
「シラコンバレー」構想は単なる愛称ではなく、進出企業とワーケーション参加者の交流からイノベーションを生み、白浜発のモデルを全国・世界へ展開する野心的ビジョンです。「地方が救いを求める」一方向ではなく、「地方から都市・世界へ価値を発信する」双方向モデルに、白浜町の先進性があります。
現行制度の最大の矛盾は、生活実態が二地域にまたがるにもかかわらず、住民票と地方税が一つの自治体にしか帰属しない点にあります。
| 局面 | 都市側(住民票あり) | 地方側(住民票なし) |
|---|---|---|
| 個人住民税 | 全額課税 | 均等割のみ、または課税なし |
| 行政サービス受益 | フル利用 | 実質利用あり(避難・公共施設等) |
| 提供コストの手当 | 本来分をカバー | 制度上の財源手当は限定的 |
政府は「ふるさと住民登録制度」で対応を試みています。プレミアム登録者には交通・宿泊費補助、公共施設の住民並み利用、災害時の避難受入などが想定されていますが、税や住民票の帰属には踏み込んでおらず、受け入れ自治体のコスト回収は未解決のままです。
特別交付税による部分的補填(コーディネーター1人500万円上限、空き家バンク運営費など)もありますが、これは「入口費用」中心で、常態的な行政サービス費用を賄うものではありません。今後、二地域居住者が701万人からさらに拡大すれば、次のいずれかの議論が避けられません。
| 方向性 | 内容 | 実現ハードル |
|---|---|---|
| ① 副住民票制度 | 住民票を法的に複数化 | 非常に高い |
| ② 地方税の按分 | 個人住民税を居住実態で分割 | 高い |
| ③ 包括的財政調整 | 特別交付税措置の大幅拡充 | 中程度 |
| ④ 受益者負担 | 二地域居住者から直接徴収 | 中程度 |
東京が二地域居住を推す動機は、地方との共存という理念だけでは不十分です。都民や都内事業者にとっての実利として設計されなければ、持続的な政策にはなりません。港区は令和5年度から全国連携ワーケーションを開始し、令和7年度には37自治体まで拡大しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 港区内の民間企業・団体等 |
| 参加自治体数 | 37自治体(令和7年度) |
| 補助上限 | 1事業者当たり最大20万円 |
| 対象経費 | 宿泊費(1泊1万円上限)、交通費(1人5万円上限) |
| 主な狙い | ビジネスマッチング、新事業創出、人材育成、多様な働き方の提供 |
さらに港区は、区民向けにも「全国連携マルシェin芝浦」、商店街での物産展、子どもの自然・漁業体験、公衆浴場での温泉体験など、教育・食・観光・SDGs学習のメニューを拡張しています。
二地域居住は、税制やコストなど課題こそ多いものの、都市と地方が共に成長する数少ない解決策です。都税収奪のようなゼロサム発想ではなく、パイ全体を大きくする方向にこそ、未来があります。
国民民主党東京都議団は、現場の知見を政策に反映させ、対決ではなく解決の道を切り拓いてまいります。首都と地方が共栄する新しい日本のかたちを、皆さまとともに実現していきたいと考えています。
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