2026/6/23
累計12.6兆円――都民の暮らしを支える税が、なぜ他県に回るのか。 令和9年度改正の前に、東京から声を上げたい。
東京都の税収が毎年およそ1.6兆円、国の手で他県に回されている――。そう聞いて驚かない都民は、まだ多くないかもしれません。
地方法人課税の「偏在是正」と呼ばれる仕組みのもとで、本来は都民のために使われるはずの税が、長年にわたり国税化されてきました。その累計は約12.6兆円。これは、東京都の年間予算の規模に匹敵する金額です。
都民の暮らしと東京の未来を預かる都議会議員として、このテーマを避けて通ることはできません。
地方法人課税とは、企業活動が行われる地域で課税し、その地域の行政サービスの財源にあてる仕組みです。法人事業税は、企業が立地する都道府県の道路・防災・治安・医療・子育て支援などを支えるための「応益課税」。法人住民税も、企業が地域社会の一員として負担する地方税です。
ところが、「東京都に税が偏っている」という理由から、これらの一部を国がいったん吸い上げ、他の道府県へ再配分する仕組みが導入されました。これが「偏在是正」措置です。
平成20年度に法人事業税の暫定的な国税化が始まり、平成26年度の一部復元を経て、令和元年度には特別法人事業税・特別法人事業譲与税として恒久措置になりました。法人住民税についても、平成26年度・平成28年度と段階的に国税化・交付税原資化が拡大されています。
東京都の試算では、これら一連の措置によって、令和8年度当初予算ベースで年間およそ1.6兆円、累計で約12.6兆円の税源が国税化され、他の道府県に分配されてきました。
1.6兆円――これは、東京都の子育て支援、防災対策、高齢者福祉、教育、中小企業支援といった、都民生活に直結するあらゆる分野に充てうる規模の財源です。それが「東京は豊かだから」という一言で、毎年都外へ動いている。この事実を、もっと多くの都民と共有する必要があります。
私たち都議の多くが問題視しているのは、額の大きさだけではありません。地方税制そのものの基本原則が崩されている、という点にあります。
こうしたなかで示された令和8年度与党税制改正大綱には、さらに踏み込んだ見直しの方向が盛り込まれました。令和9年度改正に向けた検討課題として、次のような項目が並びます。
資本割は、もともと比較的規模の小さな法人の担税力にも配慮して設けられた仕組みです。その税率を「0.2%→0.3%→0.4%→0.5%」と引き上げてきたのは国自身でありながら、ここに来て「東京に偏っているから」と国税化の対象に加えるのは、率直に言って筋が通りません。
さらに、特別区の固定資産税にまで踏み込むとすれば、都区財政調整制度や都と区の事務配分にも影響しかねません。都政の根幹に関わる議論であり、都議会としても看過できないテーマです。
誤解のないように申し上げますが、私たちは「地方への配分は要らない」と言っているのではありません。地方が直面する財政課題は深刻であり、地方全体の財源を底上げすることは必要です。
ただし、その手段として、東京の地方税を国がいったん召し上げて配るやり方は、地方分権にも地方税原則にも反します。地方全体のパイを増やす議論こそ進めるべきで、東京と地方を分断する制度設計は、結果的に地方自治全体の力を弱めます。
東京都の税収は、東京で働き、暮らし、子育てをし、企業活動を行う都民・事業者が、東京の行政サービスから受けた便益に応じて納めてくださっているものです。
それが毎年、年間およそ1.6兆円、これまで累計12.6兆円、東京の外へ動いてきました。そして、令和9年度の税制改正に向けて、さらに踏み込んだ「偏在是正」が検討されようとしています。
この問題は、都議会の中だけで議論していて変わるものではありません。都民の皆さまに事実を知っていただき、声を上げていただくことが、何よりの力になります。
※本稿は、令和8年6月23日に開催された「地方税財源全体の拡充を目指す都議会議員連盟」勉強会資料(池上岳彦・立教大学経済学部特別専任教授/東京都税制調査会会長)をもとに、東京都議会議員の立場から再構成したものです。
※数値は資料時点のもので、令和8年度当初予算ベース、累計はH20〜R8、H26〜R8の値です。
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