2025/12/11
こんにちは。
久々の投稿です。
今回はおもしろい論文を見つけたのでご紹介。
赤ちゃんがなかなか泣きやまず、寝かしつけが思うようにいかない。
育児の中でも、とりわけ多くの家庭が直面する課題です。
こうした悩みに対し、理化学研究所(RIKEN)が興味深い研究成果を発表しました。
「抱っこして歩くと泣きやみやすい」という、これまで経験則として語られてきた育児の“定番行動”を、科学的に検証したものです。
今回のブログでは、その内容をできるだけわかりやすく整理し、実践に活かせる形で紹介します。
人を含む一部の哺乳類には、親に運ばれることで落ち着く「輸送反応」と呼ばれる生理的反応があることが知られています。しかし、従来の研究は短時間の観察にとどまり、泣きやみや寝かしつけにどれほど有効なのかは十分に分かっていませんでした。
そこで理研の研究グループは、生後7か月以下の赤ちゃん21人を対象に、
「抱っこして歩く」「抱っこしたまま座る」「ベッドに寝かせる」「ベビーカーで前後に動かす」
という四つの状況を比較し、行動と心拍データを同時に解析しました。
研究の結果、赤ちゃんを抱っこして歩くと、5分以内に全員が泣きやみました。
心拍数も低下し、落ち着いた状態に移行していることが確認されています。
さらに注目すべき点として、抱っこして歩き続けている間に、約半数の赤ちゃんがそのまま眠りました。
泣きやみだけでなく、寝入りにも効果があることが示されたのです。
一方、抱っこしたまま座っているだけでは泣きやみはほとんど見られず、静止した状態よりも「運ばれること」そのものが重要であることが分かりました。
「寝たと思ってベッドに置いた瞬間に泣き出す」という経験を持つ方は多いと思います。
研究でも同様の現象が確認され、眠っていた赤ちゃんがベッドに置かれた際、約3分の1が再び目を覚ましてしまいました。
心拍データを分析すると、赤ちゃんの体が親の腕から離れ始めたタイミングで覚醒反応が生じていることが分かりました。いわゆる「背中スイッチ」と呼ばれる現象の生理的な裏付けと考えられます。
研究では、次の三つのステップが最も成功率が高いと示されています。
赤ちゃんは寝入りの直後が最も浅い眠りで、この時期は刺激に反応しやすいと考えられます。そのため、眠った直後にすぐ置かないことが大切です。
以下は研究結果をもとにした、日常ですぐ活用できるチェックリストです。
泣いているとき
寝た後すぐ置かない
ベッドへ置くとき
ベビーカーの場合
この研究は、生命科学分野の国際誌「Current Biology」に掲載されています。同誌はインパクトファクターが10以上あり、査読が厳格な学術誌として知られています。
研究は理化学研究所と海外大学の共同で行われ、行動観察と心拍計測を組み合わせた精度の高い手法が用いられています。
一方で、対象者が21人と小規模であるため、一般化には追加研究が必要な点もあります。
ただし現段階でも、育児の現場で参考にできるだけの妥当性は十分にあると思われます。
Ohmura, N., Okuma, L., Truzzi, A., et al. (2022).
A method to soothe and promote sleep in crying infants utilizing the transport response.
Current Biology. DOI: 10.1016/j.cub.2022.08.041
理化学研究所プレスリリース(2022年9月14日)
https://www.riken.jp/press/2022/20220914_1/
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クロシマ アラタ/41歳/男
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