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黒島 新 ブログ

沖縄で起きた断水から考える ―― ウォーターPPPと「地域を守る」ということ

2025/11/26

昨夜から本日の夕方まで沖縄で断水が発生しました。

生活に直結する“水”が止まるというのは、本当に不安な出来事です。


“蛇口をひねれば水が出る”

それが「当たり前」ではなかったと、改めて思い知らされる出来事でもありました。

ちょうど、法要で行っていた岡山から帰ってきた日だったので、より不安な気持ちが強かったです。

私は今回の断水を、

「水インフラの未来をどう守るのか」

を考える大切なタイミングだと捉えています。その中で今、全国的に議論が促されているのが「ウォーターPPP」です。

 

そもそもウォーターPPPとは?

ウォーターPPP(Public Private Partnership)とは、

水道事業の一部を民間企業に委ね、運営・維持管理を効率化しようとする仕組みのことです。

具体的には以下のような手法があります。

(1)委託型

検針・料金徴収・維持管理など、作業の一部を民間に委託する。

→これは多くの自治体で実施済み。


(2)包括委託

水道施設全体の維持管理を民間企業が担当する方式。


(3)コンセッション方式(運営権方式)

施設の所有権は自治体に残すが、水道の運営権を数十年単位で民間企業に売却し、料金設定や運営の主導権を民間側に持たせる方式。

この③が最も議論を呼ぶ部分です。

価格の透明性、災害・緊急時の対応、長期契約のリスク、過疎地域の切り捨て、利益優先化――

考えるべき問題は少なくありません。


ウォーターPPPと「過疎化」をどう捉えるか

ウォーターPPPの議論の中で、私が特に問題だと感じていることの一つに、過疎化地域への対応がおざなりになり、新規の水道敷設費用の高騰となり、さらに過疎化を加速させてしまう懸念があります。

 

民間企業からすれば、人口が多く、料金収入が見込めるエリアを優先したくなるのは、ある意味では当然です。

一方で、人口が少なく採算の取りづらい地域は、どうしても後回しになりがちです。
 

その結果として、

  • 新たに水道を引きたい地域の負担が非常に高くなる
  • 既存の水道を維持するコストも相対的に重くなる
  • 「そんな不便なところに住まず、便利な場所へ移ればいい」という空気が強くなる

こうした流れが、さらに過疎を加速させる“スイッチ”になってしまうのではないかと危惧しています。

 

「全国的な流れ」でも、沖縄は同じ速度で進んでいいのか?


ウォーターPPPは「全国的な流れ」であることは否定しません。

しかし、その「全国的な流れ」が、どの地域にもそのまま当てはまるとは限りません。

人口減少が急速に進み、財政的にも相当に厳しい地域では、「背に腹は代えられない」という判断もあるでしょう。


 一方で、ここ沖縄では、確かに人口減少の波は来つつあるものの、全国と比べれば “まだ対応策を打てる余地がある” 状況だと感じています。

だからこそ私は、

沖縄がウォーターPPPへ大きく舵を切るのは、まだ時期尚早ではないか?

と考えています。 

「全国がやっているから」ではなく、

沖縄という地域の特性やこれから打てる選択肢を、もっと丁寧に議論してもいいのではないか、と。

 

値上げそのものより、「何に使うか」を議論したい

水道料金の値上げは、多くの家庭にとって本当に痛手です。

物価も税金も上がっているなかで、「またか」と感じるのは当然だと思います。


しかし一方で、老朽化した水道管を更新するには、どうしてもお金がかかるという現実もあります。

 

だからこそ、本来議論すべきは、

どの程度の水道料金の負担であれば、将来世代も含めて“納得できる”のか?

その負担増を、確実に水道管の更新費用に充てていく仕組みはつくれるのか?

既存の水道工事のあり方や発注方法を見直すことで、無駄を減らせないか?

 

といった 「値上げの是非」だけにとどまらない、中身の議論だと思っています。

 

単に「安さ」だけを追求するのではなく、これから数十年先を見据えた上での、適切な投資と負担の在り方 をテーマにすべきではないでしょうか?

 

「効率化」は好き。でも、それだけで守れないものがある
私は「効率化」という言葉が好きです。嫌いではありません。

無駄を省き、限られた資源でより良い成果を出すことは、政治・行政においても重要です。

 

ただ、それでもなお、

皆が住んでいる地域

おじい・おばあが住んでいた地域

「効率が悪いから」という理由だけで消えていくことを、感情の部分でどうしても受け入れきれないという思いが、私の中にはあります。
 

岡山で見た「限界集落の医療」から感じたこと

私は以前、岡山でいわゆる「限界集落」に近い地域の医療を見てきました。

そこに住む人たちに対して、

「便利な都会に移り住めばいいじゃないですか」と

簡単に言うことはできませんでした。

そこには、

その人の人生

思い出

先祖代々受け継いできた土地と家

そういったものが、ぎゅっと詰まっているからです。

 

一昨年、妻の祖母が亡くなりました。

その義祖母の家は、いわゆる「ポツンと一軒家」に出てきそうな場所にある、築100年以上の農家でした。

90歳を超えても、亡くなる数ヶ月前まで、義祖母はそこで一人で暮らしていました。

 

義祖母には、

「家を守る」

という強い意志がありました。

家を長く空けるのを嫌い、施設に入ることについても最後まで拒否していました。


医療や買い物の利便性だけを考えれば、市の中心部に移り住むほうが、はるかに「効率的」です。

でも、妻の祖母はそれを選びませんでした。

 

人は合理的なだけの存在ではない

人間は、本来そこまで合理的な生き物ではありません。

むしろ、不便であっても、非合理であっても、自分にとって大事なものを守ろうとしてしまう

そんな存在なのだと思います。

 

妻の祖母の姿を見ていて、私はその「非合理さ」こそが、人としての魅力そのものなのではないか、とも感じました。

 

たとえ不便であっても、

たとえ効率が悪くても、

「家を守る」「地域を守る」という行為の中にあるその人間らしさを、

私はとても尊く思います。


だからこそ、ウォーターPPPには「慎重でありたい」

効率化そのものを否定したいわけではありません。

財政的な制約がある中で、工夫を重ねることは必要です。

ただ、

  • 「効率が悪い」という理由だけで、地域が切り捨てられてしまわないか
  • 「採算が取れない」という理由だけで、水インフラが後回しにされないか
  • そこに暮らす人たちの「非合理なまでの想い」が、置き去りにされないか

 

そのことを考えると、

水道という“命のインフラ”を、大きく民間へ委ねるウォーターPPPに対しては、やはり とても慎重であるべきだ と感じています。

 

“海外ではPPP後に行政へ戻った事例がある”という事実

ウォーターPPPは万能ではありません。

世界ではむしろ近年、民営化された水道を行政が再び取り戻す“再公営化(Remunicipalization)” の流れが起きています。

具体例を挙げると:

 

パリ(フランス)

民間委託後、水道料金の高騰と透明性の欠如が問題化。

→ 2010年に完全に再公営化。


ベルリン(ドイツ)

民間が経営権を保有した後、料金上昇と契約の不透明さを批判する声が住民から噴出。

→ 市が巨額の費用を払って再公営化。

 

アトランタ(アメリカ)

運営不全・水質トラブルが多発。

→ 契約を解除して公営化に回帰。

 

ジャカルタ(インドネシア)

長期の民営化でサービス格差が拡大。裁判所が「民営化は違憲」と判断。

→ 行政に権限が戻された。

 

これらの事例からわかるのは、

一度PPPに進んだ後戻りには、非常に大きなコストがかかる

という現実です。

他の自治体、他の国から学ぶことで、沖縄県や糸満市が同じ轍を踏まずにすむのです。


断水が教えてくれたこと

今回の沖縄での断水をキッカケに

「だからPPPだ」

「だから民営化だ」

という話が盛り上がるかもしれません。

単純に結論付けるのではなく、

どうすれば、水と地域と人の暮らしを、長期的に、そして丁寧に守っていけるのかを問い直す大切な出来事だと受け止めています。

効率だけでは測れない、人の想いや地域の記憶。

その「魅力」を失わせないためにも、

市政を離れた身であっても、ウォーターPPPについては慎重な立場から、議論を続けて欲しいと思います。

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著者

黒島 新

黒島 新

選挙 糸満市議会議員選挙 (2025/11/16) 533 票
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肩書 糸満市議会議員/薬剤師/スポーツファーマシスト
党派・会派 無所属
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