2025/11/5
こんにちは。
昨日、沖縄タイムスの11/4付の記事で「風疹児(ふうしんじ)」という言葉を初めて目にしました。
『沖縄で大流行した1964~65年生まれの「風疹児」110人、還暦で再会』(沖縄タイムス 2025年11月4日付)【¹】
記事には、1960年代の大流行によって生まれた先天性風疹症候群(CRS)の方々が、還暦を迎え再会する様子が描かれていました。
その数、約400人以上。
米軍統治下の沖縄で、米国から持ち込まれたとみられるウイルスにより多くの命が影響を受けた――そんな事実を、私は初めて知りました。
その話をSNSで投稿したところ、同級生の医師から、
「“遥かなる甲子園”という漫画を読んでみて」
と勧められました。
調べてみると、それは1960年代の沖縄で実際に起きた“風疹児”達の野球にまつわる物語を元にした作品でした。
漫画だけでなく映画にもなっており、『遥かなる甲子園』(1990年公開)は、聴覚障がいを持つ高校生たちが、野球を通して夢を追いかける実話を描いた作品です。
彼らは、まさに1964~65年の大流行の中で生まれた“風疹児”。
声援も打球の音も聞こえない彼らが、それでも仲間と白球を追い、甲子園を目指した――。
この映画は、単なる青春ドラマではありません。
「医療の遅れ」と「人の尊厳」、「記憶の継承」を描いた、沖縄のもう一つの戦後史なのでしょう。
沖縄には、彼らのために北城ろう学校という特別支援学校も設立されました。「6年限定の学校」だったといいます【¹】。
その卒業生たちが、今もそれぞれの場所で生き、社会に関わり続けている。
まさに、歴史の生き証人です。
そもそも風疹とは何か?
「三日ばしか」とも呼ばれ、発熱・発疹・リンパ節の腫れを伴うウイルス感染症です。
通常は軽症で済みますが、妊娠初期の女性が感染すると、胎児に心疾患・難聴・白内障などの障がい(CRS)を引き起こすことがあります【²】。
(※妊娠12週までに風疹にかかった場合85%、妊娠13~16週の場合は50%などの確率でCRSになるとされています)
1976年、日本では女子中学生を対象に風疹の予防接種が定期接種として始まりました【³】。
1995年以降、男女ともに対象となり、CRSは激減していきました。
しかし、2012~2013年には成人男性を中心とした風疹流行が再発し、45例のCRS児が報告されました【³】。
その背景には、成人男性世代(1962~1979年生まれ)に免疫の空白があったことが指摘されています。
一方、アメリカでは、1964~65年に約1,250万件の風疹感染があり、約2万人のCRS児が生まれたとCDCは報告しています【⁴】。
(CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は、アメリカ合衆国の疾病予防管理センターで、保健福祉省(HHS)に属する国の公衆衛生機関です。日本でいうと、国立感染症研究所(NIID)と厚生労働省(MHLW)の機能を合わせたような存在です。)
これを契機に1969年、風疹の予防接種が承認され、国内流行は激減しました。
しかし、まさか、その成功が、皮肉にも「記憶の風化」を招くことになったんです。
1990年代以降、SNSや虚偽論文の影響で“予防接種の忌避”が広がり、一部の州では宗教的・個人信条による接種免除(exemption)が急増しました。
その結果、2000年に根絶されたはずの麻疹(はしか)が2014年、ディズニーランドで再流行しました。
CDCはこの現象を“Epidemics of Amnesia(記憶喪失による感染症)”と警告しています【⁵】。
ここで少し補足します。 風疹と麻疹は別々のウイルスによる病気ですが、どちらもワクチンで予防できるため、多くの国ではMMRワクチン(麻疹・おたふくかぜ・風疹混合ワクチン)が使われています。
つまり、「風疹の予防接種」を避けるという行為は、そのまま麻疹やおたふくかぜのリスクを高めることにもつながります。
1998年に発表された「MMRワクチンと自閉症の関連を示唆する論文」は後に完全な捏造と判明し撤回されましたが、この誤情報をきっかけにMMRワクチン全体への不信感が広がり、接種率が低下しました。
結果として、麻疹の再流行、そして風疹の再出現が相次いで報告されています【⁵】【⁶】。
つまり、“ワクチン(予防接種)忌避”により、一つの病気ではなく複数の感染症を同時に復活させる結果となったのでした。
沖縄では、約60年前に生まれた“風疹児”の方々が、今も生き、社会の中で力強く歩んでいます。
その姿は、「予防医療とは何か」を確かなものとして教えてくれます。
ワクチン(予防接種)忌避の動きは、日本でも再び“風疹児”を生み出してしまうことになりかねません。
それは、医療の問題ではなく、記憶と責任の問題ではないでしょうか?
沖縄が経験したこの記憶を風化させず、次の世代へ継承していくこと。
それは、今年、沖縄尚学が甲子園で頂点に立ったように、次の世代が自らの可能性を信じ、挑戦できる社会を育むことにも繋がるはずです。
参考・引用
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クロシマ アラタ/42歳/男
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