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空き家問題は「家」だけの問題ではない〜世田谷区を視察〜

2026/8/11

皆さんのお近くに、「この空き家、だいぶ傷んできているな」「このままで大丈夫かな」と気になる建物はありませんか?

今回は、同じ板橋区議会議員の五十嵐やす子さんにお声がけいただき、世田谷区の空き家・老朽建築物対策について視察しました。

板橋区でも空き家は増えています

世田谷区では、住宅約54万1,000戸のうち、空き家は約5万8,850戸。空き家率は約11%となっています。

板橋区でも、令和5年の調査では住宅総数36万3,490戸に対し、空き家は4万2,490戸、空き家率は11.7%です。

平成30年には空き家数3万6,690戸、空き家率10.9%でしたので、5年間で約5,800戸増加しています。

板橋区の場合、空き家の約7割を賃貸用住宅が占めていますが、一方で、戸建て住宅などが長期間放置され、老朽化していくことも大きな課題です。

 

空き家問題は「建物」だけを見ていても解決できない

今回の視察で特に印象に残ったのは、空き家の問題は建物だけを見ていても解決できないということです。

例えば、

「所有者が高齢になり、施設に入ったことで空き家になった」

「相続したものの、どうしたらいいのか分からない」

「相続人がいない、あるいは所在が分からない」

「所有者自身に福祉的な支援が必要」

など、空き家が放置される背景には、一つひとつ異なる「人」の事情があります。

 

世田谷区では、必要に応じて福祉部門や弁護士などとも連携しながら対応しています。

中には、所有者と3年以上にわたりコミュニケーションを取り続けたケースもあるとのこと。

何度も足を運び、まずは話せる関係をつくる。そして、行政側が一方的に結論を押し付けるのではなく、「本人はどうしたいのか」という意思を大切にしながら解決策を探っていく。

制度だけではなく、職員の方々の粘り強い働きかけによって解決につなげていることが、とても印象に残りました。

 

「管理不全空家」への対応も強化

令和5年の空家等対策特別措置法の改正では、「管理不全空家」という区分が新たに設けられました。

放置すれば「特定空家」になるおそれがある建物について、市区町村から勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例の対象から外れることがあります。

世田谷区でも、こうした制度について所有者へ伝えることで、建物の改善や解体などへの動きが以前より早くなったケースがあるとのことでした。

 

危険な状態になってから対応するだけではなく、その前の段階で所有者に働きかける仕組みが重要です。

 

民間の力を活かす「せたがや空き家活用ナビ」

もう一つ、板橋区でも参考になると感じたのが「せたがや空き家活用ナビ」です。

空き家を所有していても、

「何とかしなければと思っているけれど、何から始めればいいのか分からない」

「売却するのか、貸すのか、解体するのか決められない」

「家財道具も残っていて整理できない」

といった理由で、なかなか動き出せない方もいます。

そこで、専門の相談員が中立的な立場で話を聞き、所有者の希望を整理したうえで、複数の選択肢を提示し、必要な民間事業者へつなげます。

 

世田谷区が公募によって民間事業者を選定し、協定を結んで実施している仕組みですが、特徴的なのは、区から委託費を支払うのではなく、民間同士で成り立つ仕組みがつくられていることです。

区が一定の信頼性を担保しながら、実際の相談や事業者とのやり取りは民間の中で進め、所有者自身が比較し、選択していきます。

行政がすべてを担うのではなく、行政だからこそできる部分と民間だからこそできる部分を組み合わせ、持続的に空き家の解消や活用につなげていく仕組みは、とても参考になりました。

 

仕組みだけではなく「相談員の人柄」が重要

そして、「せたがや空き家活用ナビ」についてお話を伺う中でも、繰り返し出てきたのが「人」の重要性でした。

区から通知が届いても、なかなか対応に踏み出せない所有者もいます。

そうした方に対して、相談員が最初から売却や解体の話をするのではなく、雑談もしながら話を聞き、少しずつ関係を築いていく。

その結果、「この人になら相談してみよう」と心を開き、解決に向けて動き始めるケースもあるそうです。

実際に、難しい条件の土地について「解体は難しい」と言われていたケースでも、相談員が親身になって方法を探しているというお話も伺いました。

どんなに良い制度をつくっても、相談につながらなければ利用してもらえません。

 

「相談してみよう」と思ってもらえる人や窓口をどうつくるか。

これは空き家対策に限らず、行政のさまざまな支援に共通する大切な視点だと感じました。

 

相続人がいない、あるいは所有者の所在が分からないなど、通常の働きかけだけでは解決できない空き家もあります。

今回の視察では、こうしたケースで財産管理制度を活用した事例についても伺いました。

家庭裁判所に申し立てを行い、選任された専門家が財産を管理することで、建物の解体や土地の売却まで進めた事例もあるとのことでした。

特に接道していない土地などは、通常の不動産として売却することが難しい場合もあります。

一つの制度ですべてを解決しようとするのではなく、それぞれの状況に応じて法律や制度を組み合わせていくことも必要です。

 

「空き家になってから」では遅いケースも

そして、これからさらに重要になると感じたのが、空き家になる前からの取り組みです。

老朽化した住宅の中には、空き家ではなく、実際に人が暮らしている建物もあります。

建物がかなり傷んでいても、「住んでいる」というだけでは空き家対策の制度では対応できない場合があります。

さらに、そこに高齢化や経済的な問題、福祉的な課題などが重なっていることもあります。

だからこそ、

「空き家になったらどうするか」だけではなく、「住んでいるうちから、家のこれからをどう考えてもらうか」

という視点が大切です。

世田谷区では、そのきっかけづくりとして「せたがや 家の終活」という冊子を作成しています。

https://www.city.setagaya.lg.jp/02066/3882.html

相続や不動産など、普段はあまり聞き慣れない言葉や手続きについて分かりやすく解説し、元気なうちから自分の家の将来について考えてもらうもので、大変好評とのことでした。

自分の意思を元気なうちに示しておくことは、残された家族の負担を減らすことにもつながります。

 

板橋区でも「予防」から「解消」まで一体的に

板橋区でも空き家は増えています。

さらに、老朽建築物、無接道敷地、相続、所有者不明、高齢化など、一律の制度だけでは解決できない問題があります。

だからこそ、

予防する。
早い段階で相談につなげる。
所有者の事情に寄り添う。
活用できるものは地域の資源として活かす。
そして、危険なものは着実に解消する。

こうした一連の仕組みをつくっていくことが必要だと感じています。

空き家対策というと、「危険な建物をどうするか」という建物の問題として捉えがちです。

しかし、その建物の向こう側には、必ず所有者や家族がいて、それぞれの事情があります。

今回の視察を通じて、空き家問題は「家」だけの問題ではなく、最後はやはり「人」とどうつながるかが大切なのだと改めて感じました。

世田谷区で学んだ、行政・民間・福祉・専門職がそれぞれの役割を果たしながら解決につなげていく取り組みを、板橋区の今後の空き家対策にも生かしていきたいと思います。

お声がけいただいた五十嵐やす子区議、そして丁寧にご説明いただいた世田谷区の皆様、ありがとうございました!

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著者

大野 ゆか

大野 ゆか

選挙 板橋区議会議員選挙 (2023/04/23) [当選] 3,042.783
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肩書 宅地建物取引士・管理業務主任者。プレーリーダー。板橋区議会議員
党派・会派 無所属
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