2026/8/23

今年の夏、天気予報やニュースで「レベル4」「レベル5」という言葉を目にする機会が急に増えたと感じないだろうか。それは気のせいではない。2026年5月末、防災気象情報の体系が大きく刷新され、警報にはすべて警戒レベルの数字が付くようになり、警戒レベル4相当には「危険警報」という名称が新設された。避難指示の目安となるレベル4の情報が、災害の種類を問わず一目でわかるようになったのだ。
制度が変わった背景には、気候変動がある。短時間に集中する猛烈な雨は増加傾向にあり、いわゆるゲリラ豪雨はもはや「郊外や山あいの話」ではない。8月22日に関東南部を襲った豪雨では、豊島区・板橋区・北区で1時間100ミリ級の記録的な大雨が観測され、神田川では氾濫に関する警戒レベル4の情報、白子川では氾濫発生の情報まで発表された。東京23区そのものが、夏の豪雨の最前線に立たされている。
ところが——同じ23区でも、川と運河が縦横に走る江東区では、こうした氾濫の警報が出ることはない。「水の街」なのに警報が出ない。この違いはどこから来るのか。
河川の氾濫情報は、水防法に基づく指定制度の上に成り立っている。洪水のおそれが大きい川のうち、水位を予測して情報を発表するのが「洪水予報河川」、水位が基準に達したときに知らせるのが「水位周知河川」。国や都道府県がこの指定を行い、指定された川にだけ警報の仕組みが備わる。神田川は前者、白子川は後者だ。
裏を返せば、指定を受けていない川には、氾濫警報という制度そのものが存在しない。全国の中小河川の多くは指定の外にあり、近年の豪雨災害では、こうした「情報の空白」にある川の氾濫がたびたび課題として指摘されてきた。
ただし、警報が出ない川がすべて危険な空白地帯かといえば、そうではない。大きく2つのタイプに分けて考える必要がある。
ひとつは、本来なら監視が必要なのに、指定や水位計の整備が追いついていない川。雨が降れば水位が急上昇する性質を持ちながら、情報発信の仕組みがない。「空白」として埋めていくべきタイプだ。
もうひとつは、水位そのものを人工的にコントロールしているため、「水位の急変を警報で知らせる」という発想自体が当てはまらない川。都市の治水インフラが、警報の代わりに常時働いているタイプである。
後者の典型が江東区だ。海抜ゼロメートル地帯を抱えるこのエリアでは、水門で外の海や川と仕切り、ポンプで水を汲み出すことで、内部河川の水位を平常時から低く保っている。豪雨が来る前から、雨を受け止める「余白」を確保しておく設計だ。
方式は場所によって異なる。東側の河川群は水位を海面より低い水準まで下げ、西側は潮の影響を受ける川を護岸と水門で守る。この東西の水位差をつなぐ小名木川の「扇橋閘門」は、船が通るたびに前後の扉で水位を上下させる、いわば都市の中のパナマ運河である。
つまり同じ「警報が出ない川」でも、監視の空白と、管理された静けさとでは意味がまったく違う。自分の街の川がどちらなのかを知ることが、水害への備えの出発点になる。
最後に重要な注意点がある。川が氾濫しなくても、下水道の処理能力を超える集中豪雨では、道路に水があふれる内水氾濫が起こりうる。気候変動で雨の降り方が変わる以上、このリスクは23区のどこにいても他人事ではない。高潮や大河川の氾濫という広域リスクも別に存在する。「川があふれる水害」と「街に水がたまる水害」は、別物として備えが必要だ。
江東区の治水システムの詳細な仕組み、東西で異なる方式の全体像、豪雨当日の現場の様子、そして残されたリスクへの備えについては、こちらで詳しく分析している。
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ホーム>政党・政治家>中島 ゆうたろう (ナカジマ ユウタロウ)>レベル4危険警報とは|ゲリラ豪雨で変わる東京23区と「警報が出ない川」の仕組み