2026/9/12
| 小森さだゆき | 高槻市議会議員

大阪で再び「特別区制度」、いわゆる大阪都構想の議論が進んでいます。
2026年8月の法定協議会では、大阪市を4つの特別区に再編する区割り案が決まりました。
ただ、この議論はどうしても「維新だから賛成」「維新だから反対」という政治的な話になりがちです。
私はそれとは切り離して、行政制度として本当にメリットがあるのか。逆にどこに問題があるのか。忖度なしに第三者目線で数字と仕組みから考えてみたいと思います。
まず大事なのは、現在の大阪市24区を単純に4つに合区する話ではありません。
現在の政令指定都市である大阪市を廃止し、新たに4つの「特別区」を設置する制度です。
特別区は中核市でも政令指定都市でもありません。
東京都23区と同じ「特別区」という地方公共団体の仕組みを使い、それぞれの特別区に公選の区長と区議会を置きます。
現在は、大阪府の中に政令指定都市である大阪市があり、その大阪市の内部に24の行政区があります。
なお、現在の24行政区は独立した自治体ではなく、大阪市の内部組織です。区長も住民が直接選ぶ首長ではありません。
特別区制度では、大阪市という自治体を廃止し、その区域に4つの独立した特別区を設置します。
自治体としての構造を単純化すると、
現在
大阪府
↓
大阪市
4区案
大阪府
↓
4つの特別区
という変更です。
つまり、住民に近い行政は特別区、大阪全体に関わる広域行政は大阪府という役割分担を明確にすることが、この制度の基本的な考え方です。
なお、2020年の前回案では、現在の24区単位を「地域自治区」として残し、現在の区役所を地域自治区の事務所として活用する設計でした。今回の2026年案で地域自治区をどのように扱うかについては、組織体制を含め今後の協議を確認する必要があります。
2026年8月に決まった区割り案では、人口は次のようになります。
| 特別区 | 人口 |
|---|---|
| 第1区 | 約52.8万人 |
| 第2区 | 約71.4万人 |
| 第3区 | 約68.4万人 |
| 第4区 | 約88.3万人 |
大阪市公式資料では、第1区52万7,671人、第2区71万4,116人、第3区68万3,773人、第4区88万3,064人とされています。
高槻市は約35万人です。
つまり新しい特別区は、1区だけで高槻市のおよそ1.5倍から2.5倍の人口になります。
第4区の約88万人となると、人口規模だけならかなり大きな政令指定都市クラスです。
したがって「大阪市280万人より住民に近くなる」という説明には一定の合理性がありますが、53万~88万人の自治体を本当に「身近な自治体」と呼べるのかは、冷静に考える必要があります。
私は、4特別区案の最大のメリットはここだと思います。
現在の大阪には、約880万人を対象とする「大阪府」と、約280万人を対象とする巨大政令市「大阪市」があります。
大阪市は一般的な市とは比較にならないほど大きな権限、財源、行政組織を持っています。
そのため、都市計画や大規模インフラ、成長戦略などでは、大阪府と大阪市という二つの大きな行政主体が存在します。
特別区制度では、こうした広域的な役割を大阪府側に集約することになります。
大阪都市圏全体の政策を大阪府という一つの広域自治体で考えやすくなる。
これは制度として明確なメリットです。
現在の大阪市24区の区長は、住民が選挙で選ぶ首長ではありません。
一方、特別区になれば、それぞれの区に住民が直接選挙する区長が誕生します。
4特別区なら4人の区長です。
地域によって、子育てを優先するのか、高齢者政策を充実させるのか、教育に力を入れるのか。
それぞれの地域で政策を選択し、その結果について区長が選挙で責任を負うことになります。
地域行政の責任者が明確になることは、自治という意味ではメリットでしょう。
私は高槻市議会議員ですので、ここは特に注目しています。
「大阪市の制度なのだから、高槻や北摂には関係ない」と考えるのは少し違います。
特別区制度になれば、現在大阪市が持っている広域行政の権限と、それを担うための財源の一部が大阪府へ移ることになります。
これによって、大阪府という行政主体の役割は今より大きくなります。
例えば、新大阪駅は行政上は大阪市内ですが、高槻、茨木、吹田など北摂の住民も日常的に利用する広域拠点です。
鉄道、幹線道路、防災、産業政策、大規模なまちづくりなども、大阪市の境界線だけで完結する話ではありません。
そうした政策を、大阪市域だけではなく大阪府全体の視点から考えやすくなることは、大阪市外の府民にもメリットとなる可能性があります。
ただし、注意も必要です。
「大阪市のお金が大阪府に来るから、そのお金を高槻や北摂で自由に使える」という意味ではありません。
基本的には、大阪市から府へ移る仕事に応じて、それを支える財源も府へ移すという仕組みです。
重要なのは「大阪市から府にいくらお金が来るか」ではなく、大阪府に移った権限と財源を、府域全体の成長やインフラ整備につなげられる制度になるのかだと思います。
これは4区案の大きな制度上の変化です。
現在、大阪市民は大阪市長を選びます。
その市長は、人口約280万人の政令指定都市という非常に大きな行政組織を動かします。
特別区制度になると非常に大きな財源と権限を持った大阪市長はいなくなり、4人の特別区長が身近な行政を担当し、大阪府知事が広域行政を担当する。
という仕組みに変わります。
これは見方によっては
「役割分担の明確化」です。
ここは制度を評価するときに避けて通れない論点です。
現在の大阪市会の定数は81人です。(2027年選挙からは70人に削減が決まっております)
4特別区になれば、大阪市会はなくなり、4つの特別区議会ができます。
では議員は増えるのでしょうか。
実は、今回の4区案について議員定数はまだ決まっていません。
特別区設置協定書で今後決める項目に「特別区の議員の定数」が明記されています。
参考になるのが2020年の前回案です。
前回は、
淀川区18人
北区23人
中央区23人
天王寺区19人
で、4区合計83人という設計でした。
当時の大阪市会の定数も83人でしたので、議会は4つになっても議員総数を増やさない設計だったわけです。
今回も同じ考え方を採用するかどうかは、今後の協議を見る必要があります。
ここは注目したいポイントです。
例えば現在、人口50万人台の姫路市は議員定数45人、船橋市は50人、人口約67万人の政令市・静岡市は48人です。
高槻市でも人口約35万人に対して議員定数34人です。
つまり、人口50~70万人規模の主要都市を見ると40~50人程度の議員を置いている自治体が多いのが現状です。
大阪4特別区は53万~88万人。
仮に4区合計の議員数を現在の大阪市会と同程度に抑える設計になれば、1区あたりの議員数は同規模の中核市や政令市に比べて相当少なくなる可能性があります。
もちろん特別区と中核市・政令市では担当する事務の範囲が違うため、単純比較はできません。
しかし、議員を減らせば行政コストを抑えられる一方で、区長や行政をチェックする議会の力が十分なのかという別の問題が出てきます。
「議員を増やさない方が良い」という議論だけでなく、行政監視に必要な人数という観点も必要だと思いますし、通年議会、夜間議会や週末議会などの議会改革もしっかりと求められてくると思います。
大阪市役所という一つの巨大な組織を4つに分ける以上、それぞれの自治体に一定の管理機能が必要になります。
区長、議会、議会事務局、総務、財政、人事など、自治体として必要になる組織があります。
そのため、「都構想を実施すれば行政コストが大幅に安くなる」と単純に考えるべきではありません。
府市間で重複している広域行政を整理する効果と、4自治体に分けることで新たに必要になるコスト。
この両方を比較する必要があります。
4つの特別区では、税収の強さが同じではありません。
都心部には企業や商業施設が集中している一方、住宅地域の割合が高い地域もあります。
そのまま税収だけで行政を運営すれば、大きな財政格差が生まれます。
そこで特別区制度では、固定資産税や法人市民税などを含む財源を府側で管理し、事務分担や各区の財政需要に応じて配分する「財政調整」が重要になります。
前回2020年案でも、この財政調整制度が制度の大きな柱でした。
これは財政格差を抑えるためには必要な仕組みです。
一方で、特別区が自分たちで集め、自分たちの判断だけで使える財源がどの程度になるのかという「財政自主権」の問題があります。
特別区制度のメリットとして「住民に身近な行政」がよく挙げられます。
しかし今回の最大区は約88万人です。
本当に住民との距離を最優先するのであれば、8区やさらに小さな自治体にした方が理屈としては分かりやすい。
一方、自治体を細かく分ければ、行政組織や議会などのコストは増えます。
つまり4区案は、
「住民自治を強くするため小さくしたい」
と
「行政コストを増やさないため大きくしておきたい」
という二つの考え方の妥協点だと見ることもできます。
特別区制度になれば、大阪市という広域行政主体そのものがなくなるため、府と市が同じ分野で競合する問題は制度的には減ります。
これはメリットです。
ただし、大阪では2020年の住民投票後も、大阪市を残したまま府市一体条例などによって府市連携を進めてきました。
つまり、現在の制度のままでも府市連携を進める方法は存在しています。
だからこそ、
「特別区にしなければ解決できない問題なのか」
「現在の府市連携でも解決できる問題なのか」
を一つずつ切り分ける必要があります。
高槻や北摂の立場から私が最も注目しているのはここです。
特別区制度によって大阪府が広域行政の司令塔となれば、府の権限や行政能力は現在より大きくなります。
それが大阪府全体を一つの都市圏として見る方向に使われるなら、大阪市外にもメリットがあります。
一方で、府の権限が強くなった結果、府の投資が大阪市中心部に集中するのであれば、北摂、河内、泉州から見れば必ずしもメリットとは言えません。
つまり問題は、
大阪府の権限が強くなること自体ではなく、その権限を府域全体の利益のためにどう使うのか。
ここだと思います。
現状でも、高槻でも徴収されている宿泊税などは大阪市内に重点的に配分されている印象があります。
現時点では区割り案は決まりましたが、制度の核心部分はまだ協議中です。
大阪市の公式資料でも、今後決める項目として、議員定数、事務分担、税源配分・財政調整、職員移管などが挙げられています。
私は少なくとも次の6点を確認したいと思います。
① 大阪市から大阪府へ移る具体的な権限
② それに伴って大阪府へ移る財源額
③ 4特別区それぞれの自主財源の割合
④ 4特別区の議員定数
⑤ 大阪府・4特別区それぞれの職員数
⑥ 制度移行に必要な初期費用と、その後の年間運営コスト
この数字が出れば、かなり客観的に比較できます。
4特別区案には、メリットがあります。
特に大阪全体の広域行政を大阪府に集約することには、大都市制度として一定の合理性があります。
大阪市外の府民にとっても、大阪市域を越えたインフラや成長戦略を府域全体で考えられる可能性があります。
一方で、行政コストが必ず削減できるとは限りません。
また、大阪市という強い政令指定都市をなくし、その権限と財源を大阪府と4特別区に分けるという非常に大きな制度変更でもあります。
これは単なる「区割り変更」ではありません。
大阪の統治機構そのものを変える話です。
だからこそ私は、「維新だから」「反維新だから」という政治的な立場からではなく、最終的に示される権限、財源、職員数、議員数、行政コストを比較して、市民・府民・そしてその政治家たちも議論・判断すべきだと考えています。
そして大阪市外に住む私たちも、「大阪市だけの話」と考えるのではなく、今後大阪府という自治体の役割がどう変わるのかをしっかり見ていく必要があると思います。
・大阪市「副首都・大阪にふさわしい大都市制度協議会だより」
・大阪市「第5回 副首都・大阪にふさわしい大都市制度協議会」
・大阪市会「市会のしくみ」
・2020年 特別区設置協定書案
・大阪市「府市一体条例等について」
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>小森 さだゆき (コモリ サダユキ)>忖度無し!大阪4区特別案を考える!!