2026/9/12
| 小森さだゆき | 高槻市議会議員
高槻市の財政を近隣市と比較して見ていきたいと思います。

令和6年度決算について、豊中市、吹田市、枚方市、茨木市と比較してみました。
結論から言えば、高槻市は今回比較した5市の中では、 「非常に堅い財政運営をしている自治体」 だと評価できます。
借金は最も少なく、貯金にあたる基金は最も多い。 さらに、借金返済の負担を示す指標も極めて低い水準です。
しかし、その一方で、 自治体自身が税収などで稼ぐ力は決して強くありません。
つまり、高槻市の財政を一言で表すなら、
「守りは強い。稼ぐ力には課題がある」
という姿が見えてきます。
まず、主な財政指標を比較してみます。
| 項目 | 高槻 | 豊中 | 吹田 | 枚方 | 茨木 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人口 | 34.6万人 | 40.6万人 | 38.5万人 | 39.2万人 | 28.6万人 |
| 財政力指数 | 0.75 | 0.85 | 0.95 | 0.75 | 0.98 |
| 経常収支比率 | 91.3% | 95.6% | 101.0% | 98.9% | 94.9% |
| 実質公債費比率 | ▲2.7% | 2.0% | 0.5% | 1.9% | ▲0.3% |
| 地方債残高 | 334億円 | 877億円 | 697億円 | 1,118億円 | 539億円 |
| 住民1人あたり地方債 | 9.7万円 | 21.6万円 | 18.1万円 | 28.5万円 | 18.8万円 |
| 基金残高 | 462億円 | 364億円 | 380億円 | 370億円 | 202億円 |
| 住民1人あたり基金 | 13.4万円 | 9.0万円 | 9.9万円 | 9.4万円 | 7.1万円 |
※基金残高は、財政調整基金、減債基金、特定目的基金などの合計です。
まず注目したいのが、 地方債残高334億円に対して、基金残高が462億円ある という点です。
単純比較ではありますが、借金よりも貯金のほうが約128億円多いことになります。
今回比較した5市では、高槻市だけが基金残高が地方債残高を上回っています。
住民1人あたりで見ても、
地方債は約9.7万円、基金は約13.4万円。
枚方市では住民1人あたり地方債が約28.5万円ありますから、大きな差があります。
高槻市の借金は、令和2年度には約475億円ありましたが、その後減少を続けています。
一方で基金を積み上げてきた結果、 非常に厚い財政的な備えを持つ自治体 になっています。
自治体財政には分かりにくい専門用語がたくさんあります。
その一つが実質公債費比率です。
簡単に言えば、
「自治体の年収に対して、借金返済の負担がどれくらいあるのか」
を見る指標です。
家計で言えば、住宅ローンや自動車ローンの返済が年収の何%を占めているのかを見るようなものです。
高槻市は、 ▲2.7% です。
これは極めて低い数字です。
地方債の中には、返済費用の一部が地方交付税の算定上措置されるものがあります。 その影響などから、高槻市の場合は実質的な公債費負担が非常に軽い状態になっています。
つまり、
「借金そのものが少ないだけでなく、毎年の借金返済も財政を圧迫していない」
ということです。
もう一つ重要なのが経常収支比率です。
これは家計に例えると、
「毎月入ってくる給料のうち、家賃、光熱費、ローン、食費など毎月ほぼ必ず出ていく支出に何%使っているか」
を見るような指標です。
数字が高くなるほど、自由に新しい政策へ使えるお金が少なくなります。
高槻市は91.3%。
豊中市95.6%、枚方市98.9%、吹田市101.0%と比較すると、 今回の5市の中では最も低い水準です。
高槻市はここ数年、おおむね90%台前半で推移しており、財政の硬直化という面では比較的余裕があります。
ただし、経常収支比率は低ければ低いほど無条件に良いというものではありません。
行政サービスや投資を抑えて支出を減らせば、数字を改善させることもできるからです。
大切なのは、
「なぜ数字が低いのか」
まで見ることです。
ここまで見ると、高槻市の財政にはほとんど問題がないようにも見えます。
しかし、私は一つ大きな課題があると考えています。
それが、 財政力指数です。
財政力指数とは簡単に言えば、
「自治体が必要とする行政サービスを、自分たちの税収などでどの程度まかなえるのか」
を示す指標です。
家計に例えるなら、
「親などからの仕送りに頼らず、自分の給料だけでどれくらい生活できるのか」
に近いものです。
1.0に近づくほど、自主財源が強い自治体です。
令和6年度では、
茨木市が0.98、吹田市が0.95。
それに対して高槻市は、 0.75 です。
枚方市と並んで、今回比較した5市では最も低い水準です。
私が特に気になっているのは、単年度の数字よりも方向性です。
高槻市の財政力指数は、
令和4年度 0.78
↓
令和5年度 0.76
↓
令和6年度 0.75
と低下しています。
財政力指数は単純な市税収入だけで決まる数字ではありませんが、 自治体としての自主的な財源確保力をどう高めていくのか は重要な課題です。
高槻市では地方交付税が約171億円あり、歳入の約11.5%を占めています。
住民1人あたりの地方税収入を比較しても、
高槻市 約15.0万円
吹田市 約18.7万円
茨木市 約18.3万円
豊中市 約17.9万円
枚方市 約14.7万円
となっています。
高槻市の弱点は、
「お金を貯める力」ではなく、「継続して税収を生み出す力」
にあるのではないでしょうか。
もう一つ確認しなければならないのが、普通建設事業費です。
道路、学校、公共施設などを整備するための投資的経費を見ると、高槻市は住民1人あたり約3.2万円。
類似団体平均の約4.9万円を下回っています。
吹田市は約6.5万円ですので、高槻市とはかなり差があります。
高槻市の普通建設事業費は、
令和2年度 約163億円
↓
令和5年度 約103億円
↓
令和6年度 約109億円
となっています。
もちろん、公共事業を増やせばいいという話ではありません。
しかし、 高槻市の財政の健全性は、歳出や投資を慎重に抑制してきた結果でもある ということは見ておく必要があります。
人件費についても、高槻市は住民1人あたり約6.5万円で、今回比較した5市では低い水準です。
地方公務員給与を国家公務員と比較するラスパイレス指数も96.4で、5市では最も低い数字となっています。
こうした歳出抑制も、高槻市の財政の健全性につながっていると考えられます。
一方、歳出の約52%を民生費が占めています。
扶助費も34%を超えています。
ただ、これは高槻市特有の問題ではありません。
枚方市や豊中市などでも歳出の半分以上を民生費が占めており、高齢化や社会保障費の増加は都市部自治体共通の課題となっています。
私は、ここが今後の高槻市財政で最も重要な論点だと思っています。
高槻市には現在、約462億円の基金があります。
特に、 公共施設等総合管理基金だけでも約219億円 が積み立てられています。
財政を健全に維持することは当然重要です。
税金を必要以上に貯め込むこと自体が行政の目的ではありません。
学校、道路、公共施設、防災、子育て、都市整備。
将来必要になる大規模な施設更新に備えながらも、
「いつまでに、何のために、いくら必要なのか」
を市民に明確に示していく必要があり、インフレが進む今、しっかりとした方向を示す必要があるのではないでしょうか
高槻市の財政について数字を見る限り、 現時点で危機的な状況とは全く言えません。
むしろ、借金の少なさや基金の厚さ、公債費負担の軽さという点では非常に健全です。
しかし、だからこそ次に問うべきことがあります。
なぜ財政力指数は低下しているのか。
なぜ他市と比べて税収基盤が弱いのか。
積み上げた462億円を、いつ、何のために使うのか。
公共施設等総合管理基金219億円を、学校や公共施設の更新計画とどのように結びつけるのか。
こうした点まで議論して初めて、「健全な財政」が市民生活につながるのではないでしょうか。
今回の数字を私なりにまとめると、
借金の少なさ ◎
基金の厚さ ◎
借金返済負担 ◎
財政の柔軟性 ○
自主的な税収基盤 △
将来への投資 要検証
という評価になります。
これまでの高槻市は、非常に慎重な財政運営によって「守り」を固めてきました。
これから必要なのは、その財政余力を単に使うことでも、ただ貯め続けることでもありません。
将来世代に何を残すために、どこへ戦略的に投資するのか。
人口減少が進む時代だからこそ、企業、雇用、子育て世代、都市インフラなどへの投資と、将来負担を増やさない財政規律の両方が求められます。
議会でも、「高槻市は財政が健全です」という説明だけで終わるのではなく、
「この財政力を、これからの高槻の成長にどうつなげるのか」
という視点で議論していきたいと思います。
※数値は総務省「令和6年度決算カード」及び各自治体の財政状況資料等をもとに整理しています。自治体間では事業構成や基金・地方債の性質などに違いがあるため、単純比較だけで財政の優劣が決まるものではありません。
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>小森 さだゆき (コモリ サダユキ)>高槻市の財政徹底分析