2026/8/18
高槻市議会議員 小森さだゆき
「この秋から、また物価が上がる」という報道を目にするようになりました。
実際に、総務省、日本銀行、帝国データバンク、資源エネルギー庁、日本郵便、財務省などの公表資料を確認すると、 2026年秋から再び物価上昇圧力が強まる可能性はかなり高い と考えられます。
ただし、9月1日からすべての商品が一斉に値上がりするという話ではありません。
食品、エネルギー、物流、輸入品など、それぞれ違うタイミングでコストが価格に反映されていくため、 秋から冬にかけて、徐々に家計への負担が広がっていく と見る方が正確です。
総務省が発表した2026年6月の消費者物価指数では、総合指数は前年同月比1.7%上昇、生鮮食品を除く総合指数は1.6%上昇でした。
2025年には3%前後の上昇が続いていたことを考えると、一見すると物価上昇は落ち着いてきたようにも見えます。
しかし、ここで注意しなければならないのが、現在の数字には政府の電気・ガス料金などへの負担軽減策が反映されていることです。
つまり、現在の消費者物価指数だけを見て「物価高は終わった」と判断するのは早いということです。
この点について、日本銀行もかなり明確な見通しを示しています。
2026年7月31日の金融政策決定会合後の説明では、これまでの原油価格上昇に加え、AI関連需要の増加による半導体価格の上昇、円安による耐久財価格への影響などから、 2026年度後半以降、消費者物価の伸び率が2%をはっきりと上回る水準まで高まる との見通しを示しています。
つまり、「秋から物価が上がる」というのは一部の報道機関だけの予測ではなく、日本銀行自身も警戒している動きです。
家計への影響が最も分かりやすいのが食品です。
帝国データバンクが主要食品メーカー195社を調査したところ、2026年8月の値上げは2,311品目でした。
さらに、 9月には4,531品目 の値上げが予定されています。
これは2026年では最多で、単月としても2023年10月以来の規模です。
10月についても現時点で2,720品目の値上げが判明しており、1月から11月までに判明している値上げは合計1万8,347品目に達しています。
対象も限定的ではありません。
冷凍食品、パック米飯、ハム・ソーセージ、カップ麺、調味料、醤油、飲料、コーヒー、菓子、酒類など、普段の生活で購入する幅広い商品が対象となっています。
今回の値上げは、単純に一つの原材料だけが高くなったためではありません。
帝国データバンクの調査では、2026年の食品値上げの要因として「原材料高」が90.9%、「物流費」が65.8%、「包装・資材」が64.0%となっています。
原油価格が上がれば、工場を動かすエネルギーだけでなく、商品の輸送費にも影響します。
さらに、食品トレーやフィルム、ペットボトルなど石油由来の包装資材にも影響します。
そこへ円安による輸入原材料の上昇、人件費の上昇などが重なります。
つまり、 原油高 → エネルギー → 物流 → 包装資材 → 商品価格 という形で、一つのコスト上昇がさまざまな商品へ広がっていく構造になっています。
食品以外で私が注目しているのが、電気・ガス料金です。
現在、政府は2026年7月から9月使用分について電気・都市ガス料金への支援を行っています。
家庭向けの低圧電力では、7月と9月使用分が1kWhあたり3.5円、8月使用分が4.5円支援されています。
都市ガスについても、7月と9月使用分は1㎥あたり14円、8月使用分は18円の支援があります。
しかし、 現時点で公表されている支援は9月使用分までです。
今後新たな延長措置が決まらなければ、10月使用分以降はこの支援がなくなることになります。
実際に家計に反映される時期は電力会社や検針日によって異なりますが、秋から冬にかけて電気やガスの使用量が増える時期と重なる可能性があります。
そのため、食品だけでなく、秋以降の光熱費についても注意して見ておく必要があります。
原油高だからといって、原油価格の上昇分がそのままガソリン価格に反映されるわけではありません。
現在、政府は全国平均のガソリン小売価格が1リットル170円程度を超える見込みとなった場合、その超過部分を補助する仕組みを実施しています。
このため、少なくとも現時点では、原油高の影響の一部が政府の支援によって抑えられています。
物価を見る際には「市場価格がどう動いているか」だけではなく、 政府の補助によって実際の家計負担がどこまで抑えられているのか も同時に見る必要があります。
今回調べていて、食品以外で気になったのが物流です。
日本郵便は2026年10月1日から、ゆうパックやゆうパケットなどの運賃を改定します。
ゆうパックの基本運賃は、 平均で約10%の値上げ となります。
クリックポストも185円から240円へ値上げされます。
物流費の値上げは、単に「荷物を送る人の負担が増える」というだけではありません。
ネット通販や小売業、食品メーカーなど多くの企業が物流を利用しています。
企業側の配送コストが上昇すれば、送料の値上げや商品価格への転嫁につながる可能性があります。
こうした企業間のコスト上昇が、少し時間を置いて消費者価格へ波及することにも注意が必要です。
2026年10月には酒税制度も変わります。
ビール系飲料の税率は350mlあたり54.25円に一本化されます。
また、チューハイなど「その他の発泡性酒類」の税率は350mlあたり35円へ引き上げられます。
ただし、これは「すべてのお酒が値上がりする」という意味ではありません。
ビール系飲料については現在の商品区分によって税負担が上がる商品と下がる商品があり、実際の店頭価格を各メーカーがどう設定するかは別の問題です。
ここは単純に「10月からビールが全部値上げ」と考えない方がよいでしょう。
もう一つ注意したいのが、家電やスマートフォン、パソコンなどです。
世界的なAI需要の拡大により、AIサーバー向け半導体への需要が急増しています。
日本銀行も、AI関連需要の増加に伴う半導体価格の上昇と円安が、耐久財価格を押し上げる要因になると指摘しています。
日本は多くの電子機器や部品を海外から輸入しているため、 半導体高と円安が同時に進むと、家電や電子機器の価格には二重の上昇圧力がかかります。
一方で、物価の動きを必要以上に煽るべきでもありません。
例えば国際線の燃油サーチャージを見ると、JALでは2026年7月から8月発券分が「Zone T」だったのに対し、9月から10月発券分は政府の緩和措置も反映して「Zone O」となっています。
燃油市況が春の急騰時より下がったためで、すべての価格が一直線に上がっているわけではありません。
物価は商品やサービスごとに事情が違います。
だからこそ、「物価が上がる」「物価が下がる」という大きな数字だけではなく、何が上がり、なぜ上がっているのかを見ることが大切です。
今回、資料を調べていて重要だと感じたのは、 原油や為替が動いてから、実際にスーパーの価格が変わるまでには時間差がある ということです。
企業は原材料や包装資材を仕入れ、製造し、物流を通して商品を店頭に並べます。
原材料価格が上昇したからといって、その翌日にスーパーの商品価格が上がるわけではありません。
企業がこれまで吸収してきたコストを抱えきれなくなった段階で、数か月遅れて価格改定が行われます。
だからこそ、現在の消費者物価指数が1%台だからといって、数か月後も同じとは限りません。
9月の食品値上げ、10月の物流費、電気・ガス支援終了後の影響などを考えると、 2026年秋から冬にかけては、物価の動きをこれまで以上に注意して見る必要があります。
物価高への対応では、家計負担を軽減するための支援策はもちろん重要です。
しかし、補助金によって一時的に価格を抑えても、原材料、エネルギー、物流、人件費などのコストそのものがなくなるわけではありません。
一方で、企業に値上げをするなと求め続ければ、企業の利益や賃金を圧迫してしまいます。
重要なのは、家計への短期的な支援と同時に、エネルギー調達の安定化、物流の効率化、国内生産力の強化、生産性向上、そして物価上昇に負けない賃金上昇をどう実現するかです。
「物価を上げないこと」だけではなく、「物価が上がっても、それ以上に所得が伸びる経済をどうつくるか」。
これからの物価高対策では、その視点も必要だと思います。
参考資料:総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年6月分」/日本銀行「総裁記者会見 2026年7月31日」/帝国データバンク「食品主要195社 価格改定動向調査 2026年8月」/資源エネルギー庁「エネルギー価格の支援について」/日本郵便「ゆうパックおよびゆうパケットの基本運賃などの改定」/財務省「酒税に関する資料」/日本航空「燃油特別付加運賃」
高槻市議会議員 小森さだゆき
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