2026/4/7
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
経済学の格言としてあまりに有名な「悪貨は良貨を駆逐する」。この言葉を残したのが、16世紀イングランドの金融家トーマス・グレシャムです。彼はロンドン証券取引所の原型を築いた実務家であり、王室の財政顧問として通貨の混乱を目の当たりにしてきました。彼が発見した法則は、数世紀を経た現代の経済を読み解く上でも、極めて重要な示唆を与えてくれます。

「悪貨は良貨を駆逐する」という法則は、極めてシンプルな人間の心理に基づいています。例えば、同じ「1ポンド」として通用する二つの金貨があるとします。
| 種類 | 特徴 | 人々の行動 |
|---|---|---|
| 良貨 | 金の純度が高い。本来の価値がある。 | 手元に保管(貯蔵)し、使わない。 |
| 悪貨 | 混ぜ物があり、純度が低い。 | 支払いに使い、真っ先に手放す。 |
結果として、市場からは価値の高い「良貨」が消え去り、粗悪な「悪貨」ばかりが流通することになります。これは、お金が「物」としての価値(商品貨幣論的側面)と「額面」としての価値(国定貨幣論的側面)の間で引き裂かれた時に起こる現象です。
この法則が生まれた背景には、当時の権力者による「通貨改鋳(かいちゅう)」がありました。王たちが財政難を埋め合わせるために、金貨や銀貨に混ぜ物をして、見かけ上の発行枚数を増やそうとしたのです。
しかし、国家がいくら権力(国定貨幣論)で「これは1ポンドだ」と言い張っても、市場の人々は騙されませんでした。質の落ちたお金を真っ先に使い、本物の価値があるお金を隠してしまったのです。これは、国家による信用の毀損が、経済の健全な循環を止めてしまうことを示した歴史的教訓です。
グレシャムは単なる理論家ではありませんでした。彼はエリザベス1世の信頼を得て、王室の借金整理や通貨改革を断行した実力派の金融家でした。彼が1565年に建設した「ロイヤル・エクスチェンジ(商業取引所)」は、後のロンドン証券取引所の原点となり、英国を世界金融の中心地へと押し上げる礎となりました。
現代の紙幣やデジタル通貨には、もはや金のような実体的な価値はありません。すべてが「信用」の上に成り立つ信用貨幣です。しかし、インフレが加速し、通貨の価値が実質的に目減り(=悪貨化)し始めると、人々は再び自国通貨を売って外貨やゴールド(=良貨)を貯め込もうとします。
「通貨の質を保つことこそが、経済の安定に直結する」というグレシャムの視点は、デフレやインフレ、そして財政問題を抱える今の日本にとっても、極めて重い問いを投げかけています。
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
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