長田 たくや ブログ

【くすり】 「20人死亡」の本質とは?アバコパン問題とANCA関連血管炎

2026/5/16

兵庫県 川西市議会議員(薬剤師) #長田たくや です。

アバコパン服用により国内で20人死亡、新規患者への使用控えを呼び掛け(5/16)」というニュースがありました。アバコパンは、米国ChemoCentryx Inc.が創薬し、国内開発は※キッセイ薬品工業です。
※長野県にある日本の製薬会社で、泌尿器・腎臓系の薬(ユリーフなど)に強みがある製薬メーカー

20名の死亡例が着目されがちですが、本質はそこではなく、承認申請データにおける有効性データの捏造です。本剤は、日本人も参加したグローバル試験によって承認を得ているため、FDAの結論が出るまで、「新規患者への使用控え」が通知されたものです。

本ブログでは、アバコパン(タブネオス®)とは、どんな薬なのか。かなりイメージしづらい疾患に対する医薬品で、その複雑さをぜひ感じていただき、本質は死亡例ではないことを説明します。


アバコパン(タブネオス®)
選択的C5a受容体拮抗薬…いきなり謎の言葉ですよね。血液成分を見ますと、C5と呼ばれる「補体というものが存在します。これがくっつく受容体に対して邪魔をする薬という意味です。

世界で初めての医薬品で、注目されたものでもありました。日本では2021年に承認されました。

1カプセル約1,400円で、1日標準的に6カプセル服用するので8,400円/日と、高額な医薬品ですね。

【アバコパンの適応疾患】
顕微鏡的多発血管炎(MPA)」と「多発血管炎性肉芽種症(GPA)」で、いずれも難病指定43番、44番です。


補体って何?
感染防御に関わる、抗体とは別の血液中のタンパク質群です。これを補体(Complement)と呼びます。

頭文字のCを付けて1~9まで番号がつけられています。
補体は反応すると2つに分かれます。小さい方を「a」、大きい方を「b」と名付けています。
以下、画像参照:FOCUSよみがえる補体科学より

【単純なモデル】
マクロファージ(貪食細胞)は、侵入した細菌を食べます。しかし、食べやすいように味つけしてほしいと思うのです。
そこで、C3という補体は、細菌を感知するとC3→C3a+C3bに分かれ、C3bが細菌にくっつき、マクロファージがおいしく食べることができるようになります。

【複雑なモデル】
実際には補体の機能は、もう少し複雑です。
①が先ほど説明した、味つけしてマクロファージに食べやすくする役割を果たします。
②は分離した小さいカケラ「a」たちの機能で、白血球に集合・活性化を仕掛けます(ここでC5aが登場します。)。
③は、分離した大きなカケラ「C5b」から始まり、最終的に膜侵襲複合体(membrane attack complex:MAC)を作って細菌を殺します。

ややこしいですよね…。簡単に言えば、補体は、感染時に「敵が来たぞ!集まれ!攻撃しろ!」と免疫細胞同士の連携を強めるシステムなんですね。

アバコパンは、補体成分C5aが関わる連携システムを抑える医薬品なのです。

では、なぜ抑える必要があるのでしょうか。


ANCA関連血管炎
白血球の中で多く占めるのが「好中球」です。
補体C5の小さいカケラである”C5a”が、好中球の受容体にくっつくことで、MPOやPR3というタンパク質が細胞外に出現します。
それらに対する抗体が産生されます。

これを抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCAと言います。

細菌やウイルス感染により体内が緊急事態になったときには、このような反応で必死に抵抗することわけですが、これがもし何もない時に起こってしまったらどうなるでしょうか。それがANCA関連血管炎、つまり、無意味に活性化された好中球が、周りの血管壁を攻撃してしまい炎症が起こるのです。

このC5aによる好中球の過剰な活性化を抑える薬が、アバコパンなのです。

引用:北海道大学大学院保健科学研究院病態解析学分野

ANCA関連血管炎の具体的病名が「顕微鏡的多発血管炎(MPA)」と「多発血管炎性肉芽種症(GPA)」であり、アバコパンの適応疾患でもあります。

原因や発生メカニズムの詳細は未だ不明であり、これまでの治療はステロイドで炎症を抑える、リツキシマブでB細胞を抑える、シクロホスファミドで免疫自体を抑え込むなどして、症状を抑えて様子を見るというものになります(寛解と言う)。

ステロイドに代わる新たな選択肢としてアバコパンが加えられ、ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023にも掲載されています。
参照:キッセイメディカルナビ


FDAが承認取り消しを検討
2026年4月27日、アメリカの医薬品評価研究センター(CDER)は、アバコパンの有効性が十分に証明されていないとする新たな情報、およびFDAの承認申請資料に「重要な虚偽の記述」が含まれていたことを理由に、販売中止を提案しました。

承認から3年以上経って、治験担当者が薬剤が有効であるかのように見せるために、重要な臨床試験の結果を操作していたことが判明したというのです。
参照:CDER proposes to withdraw approval of TAVNEOS

記事の20名死亡(投与者数、約8500名)という、死亡だけが注目されがちですが本質はデータの捏造なのです。

ANCA血管炎は、そもそも難病であり、致死率も低くない疾患です。そのため、標準治療であっても死亡例は発生します。重篤な肝胆道系障害も、承認時の副作用でも報告されています。

ただし、胆管消失症候群(VBDS)や致死的な肝障害は市販後にあらたなに報告されたようです。

つまり、死亡者数で販売中止が提言されたわけではないのです。

難病ですし、リスクがあっても有効な医薬品を使うことは合理的です。しかし、「効かない薬」だったら話が全く違います。だからこそ「投与の中止」を呼び掛けたということでしょう。

効果の面では、ステロイドと比較した寛解率の差も、正直微妙な感じもします。コスト面でも、使用する対象は限定的な薬のように思えます。

引用:神戸市立医療センター


補体系の医薬品
近年、補体をターゲットにした医薬品が非常に多く出ています。
これまでは、補体に対してくっついてその機能を奪う「抗体医薬品(注射)」が開発されていました。最近では、ダニコパンやイプタコパンなど、補体を選択的に抑える低分子医薬品も登場しました。

共通するのは、感染防御機能が損なわれてしまうため注意が必要ということです。私も補体系医薬品は、取り扱ったこともなく、こんなに医薬品が出ていたんだと驚きました。他の補体医薬品については、またの機会に書きます。


申請データを捏造するというのは、エビデンスを重視する医療にとって致命的です。

さて、新型コロナワクチンを取り巻く情勢も変わりつつあります。アバコパンも、その申請データを基にガイドラインに組み込まれた薬です。もし恣意的なデータ等が発覚すれば、これまで強力に推奨し、「健常人」にまでワクチン後遺症を残したのです。インフルエンサーなどを活用したキャンペーンに、どれほどの整合性があるものかをしっかり調査してほしいものです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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参照:患者さんのためのANCA関連血管炎

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長田 たくや

長田 たくや

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肩書 薬剤師で市議会議員
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