2026/4/29
兵庫県 川西市議会議員(薬剤師) #長田たくや です。
医療用のブスコパン®(ブチルスコポラミン)が販売中止になるそうです。お腹が痛いときに何かと処方される医薬品で、一時期、ジェネリックを含めて供給不足になった時は対応がしんどかったことを思い出します。

実はOTC(ドラッグストアで自由に買える薬)でブスコパンそのものが販売されています。ただ、なぜか厚労省が提示したOTC類似薬の対象リストには含まれていません(謎)。
■ ブチルスコポラミンとは
ナス科の植物から抽出される「スコポラミン」がベースになっています。トロパンアルカロイドの一種(植物由来の抗コリン系グループ)なのですが、このスコポラミンは中枢にも影響します。つまり、口渇やふらつき、せん妄(混乱状態)などの中枢性副作用が生じてしまうのです。

【腹痛の状態】
要因にはいくつかありますが、一般的には腸管の動きが激しくなっている状態と考えてください。これを抑えてあげる必要があります。
【抗コリン作用】
抗コリン作用とは、副交感神経の末端から分泌されるアセチルコリンに対して邪魔をするような作用を言います。自律神経は全身に影響しているので、様々な症状となって現れるのです。(画像引用:老年栄養ドットコム)

スコポラミンは、中枢作用が問題となるため、腹痛薬としては適しませんでした。
そこで、スコポラミンにブチル基を結合させて四級アンモニウム塩(窒素原子Nに正電荷(+)を持たせる)とすることで、中枢に入らないようにしました。これにより「腸管運動の低下=腹痛が和らぐ:鎮痙薬」として使用されます。

油に溶けることを脂溶性と言いますが、これが高いと中枢神経に入りやすい。逆に水に溶けるようなものを水溶性と呼び、+のようにイオン化されたものは水に溶けるので、体の末端だけに作用すると考えることができます。
■ お腹の痛み止め
ブスコパンは、「毎日飲む薬ではないが、ここぞという時に使いたい」という薬、いわゆる「頓服薬(とんぷくやく)」として使用されます。したがって、5~10錠程度の処方にとどまることが多く、メーカーからすれば定期的に発注されることがありません。
また薬価がとても安く、ジェネリックもあまり作られないため、ブスコパンを積極的にジェネリックに変える薬局はありませんでした。
ブスコパン(先発品):1錠 6.3 円
ブチルスコポラミン(後発品1社):1錠 6.6 円
ブスコパンA(OTC):1箱20錠で約1000円
こうしてみますと、OTCでいいよねと企業が判断してもおかしくないでしょう。
なお、腹痛のような痛みは、「内臓痛」と呼ばれ、ロキソニンなどの鎮痛薬は効果が乏しいです(炎症が原因であれば多少和らぐ)。
■ 代替薬
ブスコパンが供給不足になったときがありました。その頃の現場では、ジェネリックを仕入れたり、他剤に変更するなどに苦慮したはずです。
私も同効薬についてパッと思いつかず、色々調べた記憶があります。
【同効薬】
チアトンカプセル®(チキジウム)
セスデンカプセル®(チメピジウム)
ダクチル®(ピペリドレート)
ロートエキス
見たことがない薬ばかりでした。
チアトン(チキジウム)
ブスコパンよりも後に開発された医薬品です。これも末梢での抗コリン作用を強め、中枢作用を減らすことを目的に合成されました。
S(硫黄)を含むチオフェン環を表すチ(Thi)と弛緩という意味のアトニー(atony)から チアトン(Thiaton)と命名されたそうです。

セスデン(チメピジウム)
四級アンモニウム塩になっていますが、冒頭に書いたトロパン骨格ではありません。植物由来ではなく、化学合成によって作られた医薬品です。いらない抗コリン作用を減らすため、副作用(Side effects)を否定する(deny)を文字って、セスデンと命名されました。

ダクチル(ピペリドレート)
三級アンモニウムです。つまり四級のものより中枢性が高いとみるべきでしょう。
代替薬の中でもかなり古い医薬品です。存在すら知らなかった…。米国ではすでに販売されていないとのこと(wikipedia)。ちなみに、命名由来なし。

ロートエキス散
ナス科の植物ハシロドコロから抽出した成分で、アトロピン、スコポラミン、ヒヨスチアミンなどの抗コリン作用薬が混在しています。
新芽がフキノトウに似ているらしく、誤食による中毒症状が現れるそうです(引用:野山の花)。そりゃ抗コリン作用を見てもらえば大量摂取すれば何が起こるか想像できますね。1,2枚の葉を食べると中毒をおこし、幻覚に襲われ走り回ることから「ハシリドコロ」と名付けられました。
その毒効果を少しだけ飲むことで腹痛に効くということですね。薬局では散剤の混合処方で使用される程度でしょうか。

また、中国のヒヨス(ロウトウ莨菪)に似ていると考え、ロートと名付けられました。そこからロートエキスとなったわけです。
ちなみに「ロート製薬」は、ドイツ人眼医の名前が由来ですので植物とは関係ありません^^;なお、ロート製薬の胃薬「パンシロン®」には、ロートエキスが含まれています。ややこしいですね(笑)
さて、先発品のブスコパンがなくなれば、後発品もしくは代替薬でなんとかするしかないわけです。
そして販売中止の要因は、やはり薬価にあるのではないかと思います。昔の薬であっても有用なものであれば価格を維持してあげてほしいです。
むしろ超高額な抗がん剤など、見直してほしいものですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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