2025/12/6
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
今年10月に販売された「ネクセトール®」というお薬をご紹介します。

ん?「寝ぐせ」治しの薬!?と思った方いませんか。
実は脂質異常症、つまりコレステロールを下げるお薬です。
代表的な「スタチン」とは異なるメカニズム。全く新しいお薬で、私も知らない作用機序にとても驚きました。
■ ネクセトール(ベムペド酸錠)
成分名は、ベムペド酸。これまた珍妙な名前の化合物ですね。
商品名がネクセトール。「NEXt LEvel TOLerability」に由来していますが、正直ピンとこないですよね^^;
ウミムシみたいな形ですね。
現在、コレステロールを下げる薬の代表格は、「スタチン」です。1980年代に開発され、青カビ由来で、実は日本人の研究者が深く関わっているんですよ。
当ブログ参照:【くすり】 コレステロールを下げるスタチン:日本人の大発見
この薬は、「スタチンで効果がない・副作用で服用できない」方を対象しています。何がどう違うのか簡単に解説。
■ 上流の経路を阻害
コレステロールは、肝臓で次のような経路でつくられます。
TCA回路以後をもう少し詳しくみてみましょう。2つの物質の変換酵素が関与しています。
スタチンという薬は、HMG-CoA還元酵素阻害剤ですので、図中のここをブロックします。
では、今回の新薬であるベムペド酸はどこをブロックするのか。ATPクエン酸リアーゼ(ACL)をブロックします。
そう、スタチンのさらに上流を阻害するというお薬です。このため、スタチンが効きにくい方や、副作用で中止せざるを得ない方に使用できるということです。
■ 活性化しないと仕事しない
ベムペド酸は、そのままではACLという酵素をブロックできません。
肝臓内で、ACSVL1(極長鎖脂肪酸CoA合成酵素)という酵素よってCoAが結合し、活性型の「ベムペドイルCoA」 になることで、初めてACLをブロックすることができます。
意味がわからんですよね。つまり、ベムペド酸は肝臓に入って“活性化”されないと仕事をしないということです。

活性化後のベムペドイルCoAは ACL の酵素ポケットに入り込み、「クエン酸が入る前に目詰まりさせる」ことで ACL の働きを止める…ようです。
肝臓ではACSVL1が多いのですが、筋肉にはありません。だからHMG-CoA阻害薬(スタチン)の特徴的な副作用である「横紋筋融解症」が起こりにくいのだ!と説明しています。

これをもってスタチンとの差別を図っているようです。
■ でも本当に筋障害は起こらない?
横紋筋融解症は、スタチン以外の多くの薬(抗精神病薬・抗菌薬・キノロン系など)でも起こり得る副作用です。つまり、筋細胞のHMG-CoAだけが関わるという単純なものではないということです。現在でも明確には解明されていません。
とはいえ、ベムペド酸が筋で活性化されないという特性は「筋障害が非常に起こりにくい理由」として一定の筋が通っています。
■ 用法用量と薬価
用法はお手軽の1日1回1錠です。
薬価は、371.5円。新規作用機序があるので高めの設定のものの、妥当な感じがします。
たかが「コレステロールなんて”食”に気を使えば大丈夫だろ」という意見もありますね。それはそのとおりです。
しかし、遺伝的に値が高くなってしまう「家族性高コレステロール血症」の方で、特にスタチンが服用できない方にとっては、この薬は”福音”だと思います。医薬品は、本来そういった方には安く・手軽に行き渡らせるべきだと思います。
■ 開発元はアメリカ
ネクセトール(ベムペド酸)は、ポカリで有名な大塚製薬から販売されます。
しかし、開発元は米国Esperion Therapeutics社という比較的小規模の製薬会社です。日本では、こうした 小規模でも画期的な医薬品を創る企業が近年でなかなか育たない のが現状で、構造的問題なのか、制度なのか、国民性なのか──個人的にも興味深いところだし、くやしいところでもあります。
新しい作用機序の薬が出ると、その周辺の生化学・薬理学も一緒に学べるので楽しいですね。
「薬理作用をターゲットにした新薬は、もう出尽くした」と言われたこともありましたが、人間の仕組みはまだまだ奥深い。
今後もこうした創薬や新発見が続いてほしいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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ホーム>政党・政治家>長田 たくや (ナガタ タクヤ)>【くすり】 新薬ネクセトール®(ベムペド酸)登場!スタチンとは違う“上流阻害”の仕組みを解説