2025/10/7
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
話題の免疫抑制薬「アクテムラ®」。
その開発の原点は、なんと日本人研究者の発見にあります。IL-6という炎症に関わる物質を突き止め、世界中のリウマチ治療を変えた日本の研究。
しかし、その栄光の裏には“外資支配”という現実も見えてきます――。
開発元の中外製薬は日本の会社ですが、株式の約6割をロシュ(スイス)が持っており、実質的に外資系企業の傘下となっています。
■ IL-6を発見したのは日本人
ILは、「インターロイキン(Interleukin)」の略です。“白血球(leukocyte)同士(inter-)が情報を伝え合う物質”という意味で名づけられた、免疫の伝達物質です。しかも、発見したのがなんと日本人!大阪大学の岸本忠三教授です。素晴らしいですね。
なお、IL-1~10の番号は、だいたい見つけた年代順となっています。

■ IL-6の発見と働き
1986年に、活性化B細胞を抗体産生細胞に分化させるサイトカインとして発見。その後の研究からIL-6は多彩な生物活性を有することが明らかとなり、特に炎症反応においても中心的な役割を果たしていることが示されました。

■ 抗IL-6受容体抗体の開発(トシリズマブ)
IL-6の作用を邪魔する薬剤を作れば炎症を抑えられるのではないか、ということで、抗IL-6薬が作られました。IL-6は細胞表面にある受容体に作用するのですが、広大な面構造で結合するため、一般的な化学物質の医薬品では止めることができませんでした。
そこで、「抗体」を利用することになります。つまり、抗体がIL-6の受容体に結合し、IL-6が作用できないようにするよう設計されたのです。

そうしてできたのが「トシリズマブ」。商品名がアクテムラ®です。IgG抗体をベースに、マウスの免疫系で抗体を得ました。それを基に、ヒトの体に合うよう改良した“ヒト化抗IL-6受容体抗体”です。マウス型の部分が残っていると、アレルギー反応の原因にもなるため”ヒト化”しました。

さらに、近年には完全ヒト型の抗体医薬品サリルマブも誕生しています。

■ 関節リウマチとアクテムラ®
関節リウマチは良く聞く病気ですよね。そもそもリウマチの語源は「流れ」を意味する「rheuma(リューマ)」に由来します。古代ギリシャ語の"flow"に近く、体液の流れが悪くなって関節に溜まると病気になると考えられていました。それが原因の痛みを“rheumatism”と呼ぶようになります。
20世紀となって、自己免疫疾患であることがわかり、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)となりました。”~oid”は、”~のような”を意味するので、「rheumaのような」と訳すことができます。長い歴史を引き継いだ病名となっています。
関節リウマチは、関節を包む“滑膜”を自分の免疫が攻撃してしまう病気です。炎症を起こすため強い痛みが発症し、骨や軟骨がボロボロになって変形してしまうのです。メカニズムが判明していますが、発症の原因は未だに謎です。高齢女性がなりやすい傾向があり、男性の3~4倍程度。女性ホルモンとの関連性も指摘されています。

アクテムラは、関節リウマチ治療薬として大ヒットします。それまではステロイドやDMARDsと呼ばれる免疫抑制の飲み薬やTNF-αへの抗体医薬品が使用されていました。効果が限定的であったり、副作用が強く出る患者さんにとっては、新たな治療選択肢として颯爽と登場したのです。しかも、それを切り開いたのが日本人というのが嬉しいですね。
■ 中外製薬とロシュ
冒頭に中外製薬は"実質外資系"と書いたのは、株式の60%近くをロシュ(スイス)が保有しているためです。いつの間にやらファイザー(Pfizer)をも抜いて売上ランキング1位になっていますね…。

日本の製薬会社は、世界的に見たら主導権を握られているように見えます。アクテムラに関する歴史的経緯を見ても、当時の社内の判断はどうだったのか不明ですが、首をかしげるタイミングです。
1988年
中外製薬が大阪大学と共同研究開始。完全独立の日本企業。ロシュとは無関係。
1997年
抗IL-6受容体抗体「トシリズマブ」(後のアクテムラ)を創製。
2001年
ロシュと資本・業務提携契約を締結。提携開始。
2002年
ロシュが中外製薬の株式50.1%を取得し筆頭株主に。
中外はロシュの子会社となる。ロシュ傘下入り。
2005年
日本でアクテムラ発売(関節リウマチなど)
2009年
ロシュがアクテムラを世界展開(欧米ではロシュ名義で販売)。
参照:中外製薬
IL-6は日本人が発見し、関節リウマチ治療でもあらたな選択肢を作り出せたのは誇らしいことです。しかし、日本発の研究成果が、ロシュのグローバルネットワークを通じて世界展開された形になりました。戦略と言えば聞こえは良いのですが、なんだかなぁ…という気分になります。
■ おまけ:お騒がせのアレにも使用
アクテムラは、新型コロナ感染症にも使用できます。ただ、エクモを使用する程度の重症例に限られています。抗体医薬品は、総じて高価であり、アクテムラ自己注射用1本でおよそ32,000円です。関節リウマチで2週間に1度という使い方になります。○○マブと名がつけられている薬剤は、抗体医薬品であり、総じて高いことを知っておきましょう。ラゲブリオの9万円が異常値ですね…。
参照:刮目せよ!これが9万円の実力じゃい! 【ラゲブリオ】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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