2025/9/30
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
今日は小学校の視察に行ってきました。また後日レポートします。さて、今日は前回取り上げた骨粗しょう症。その治療薬についてです。
過去の当ブログにて、ビタミンD製剤を取り上げました(リンク)。今回は、骨粗しょう症のメイン治療薬「ビスホスホネート」について。
もともとは工場の配管詰まりを防ぐ“スケール防止剤”として誕生した化合物が、なぜ骨の病気を治す薬に進化したのか――その科学的な偶然と、臨床応用の流れを解説します。
■ 骨粗しょう症の薬
まず戦略的に3つに分けられます。
骨吸収抑制薬(骨を壊す側を抑える)
骨形成促進薬(骨を作る側を刺激する)
骨代謝改善薬+α(ミネラル代謝を整える)
■ 骨吸収抑制薬
メインで使用されるのが、骨を壊すことを抑える薬です。
大きく3つ
・ビスホスホネート系
・SERM
・抗RANKL
この中でもビスホスホネート系が基本となります。
■ 工業製品から誕生
ビスホスホネート製剤(以下、ビスホス)の誕生はなかなかにおもしろいです。
まず、ビスホスとは以下の共通構造を持つ化合物です。P(リン)は英語でフォスファラス、それがビス(ラテン語で2つの意味)あるので、ビスホスホネートbisphosphonateと呼ばれます。

1800年代、すでにこの系統の化合物が工業用品として使用されていました。
具体的には、工場配管でカルシウムなどが詰まることを防ぐ薬品(スケール防止剤)です。

1960年代に Herbert Fleischらが「無機ピロリン酸(PPi)が骨や血管の石灰化を抑える」ことを発見しました。そのPPiの構造がこちらです。

ビスホスと同じような構造ですよね。この時は、石灰化、つまり「不要なカルシウム等が骨などに沈着するのを抑える=カルシウムをキャッチする」というイメージで薬が開発されていました。
しかし、このままの構造では体内ですぐに分解されてしまうため、PPiを改造することにしたのです。研究が進むと、「あれ?工場で使用されているスケール剤が使えるんじゃない?」ってことで、構造的に「P–O–P(PPi)」を「P–C–P(ビスホス)」に置き換えることで、分解されない安定構造が確立したのです。
■ 初代ビスホス
改造された安定化されたビスホスは、なんと骨に沈着することがわかりました。正確には、骨のヒドロキシアパタイトのカルシウム部分に強く吸着することが判明し、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きも抑えることが発見されたのです。

そして、登場したのがエチドロネート(ダイドロネル®)です。元々、スケール剤として使用されていました工業用品そのものです。
これを医薬品に応用し、骨粗しょう症へ効果が示されました。

■ 第2世代の誕生
しかし、エチドロネートは効果も弱く、骨の必要な石灰化までもを邪魔して骨軟化することが報告されていました。
そこで開発されたのがアレンドロネート(フォサマック®/ボナロン®)とリセドロネート(ベネット®/アクトネル®)です。窒素Nが着くので「窒素型ビスホス」とも言われています。

しばらくはこの2剤がツートップ状態。骨粗しょう症の薬と言えばコレ状態でした。
■ またもや偶然的な発見
体内での分解速度が速いため、毎日飲まなければならないと思いこまされていたのですが、いざ骨に沈着すると長生きすることがわかったのです。だったら、「いっぱい飲んだらいいんじゃね?」となり、1990年代の臨床試験で、週1回投与でも毎日投与と同等の効果を示し、週1回製剤が誕生しました。
さらに、「もしかしたら月1回でもイケんじゃね?」のノリで、なんと月1回製剤まで登場しました。

これまで毎日飲んでたのは何やったんや…。
■ 第三世代
より強力な効果を示すことを目的にさらに改造が進みました。
ゾレドロン酸(ゾメタ®注射)、イバンドロン酸(ボンビバ®)、ミノドロン酸(ボノテオ®)

■ 進化しても変わらないこと
いくら進化しようが、これだけは変わらないことがあります。それは「吸収が極めて悪い」こと。リン酸基が2つもついており、水溶性が高くて基本的には小腸から1%程度しか吸収されないとも言われています。
対処法として、起床時の空腹時にコップ1杯の水でしっかり飲んでくださいと指導します。骨とくっつく=カルシウムとくっつくわけですから、牛乳で服用したら全部取られてしまいます。必ず水でと言われています。
あと水も、硬水は避けた方が無難です。マグネシウムなどとも結合(キレートをつくる)とされており、可能な限り軟水、水道水レベルのもので服用しましょう。間違ってもコントレックスとかで飲んではいけません^^;
■ どうやって効くのか?
これも面白いです。骨に強く結びついたビスホスは、破骨細胞が骨を一緒に吸い込んでしまうのです。吸い込んだ細胞が、「あ、あかん変なもん食べてもうた!死ぬ!」といって死滅します。

そして、さらにマニアックなことは、第1世代(窒素がない)ビスホスと第2世代(窒素がある)ビスホスでは、細胞の殺し方が違うことが分かっています。
第1世代)
破骨細胞が取り込むと、エネルギー通貨であるATPと誤認します。ATPとして機能しないから、エネルギー不足となって死滅します。
第2世代)
FPPS(ファルシネルピロリン酸合成酵素)を阻害することで細胞を死滅させます。

■ 顎骨壊死
ビスホスの謎に、逆に骨が折れやすくなるという報告もあります。
骨は傷ができたら破壊して骨を作っていく骨代謝をしています。ビスホスを服用するとそれを強力に抑えてしまうので、”修復”までもが停まってしまうのです。そのため骨は固くなったように見えてしなやかさがなくなるとも言われています。したがって、服用期間を制限する運用(5~10年)がなされています。
また、服用期間とは別に「顎骨壊死」という恐ろしい字面の特徴的な副作用があります。よく歯医者で見つかるため、ビスホスを服用している方は必ず歯科医に伝えるようにお願いします。

発生メカニズムが研究されていますが、明確な根拠はまだなようですね。

以上です。ビスホスは歴史も長く、効果も高いことから汎用される薬剤です。分子メカニズムがわかるにつれて、また異なる戦略による治療薬も登場しています。それはまた別の機会に^^
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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