2025/6/19
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
前回、新スイッチOTC薬「パリエットS」をご紹介しました(前回ブログ)。この系統の薬剤がスイッチ化されるとは思いませんでした。
本来は日常的に服用する薬ではありません。胃潰瘍が回復しきれていない方や、アスピリンや鎮痛薬を恒常的に服用する必要がある方が対象です。また、長期間にわたって胃酸を抑えすぎることは、腸内細菌のバランス変化、ビタミン・ミネラルの吸収障害、感染症リスクの上昇などが指摘されており、“胃酸は必要なもの”であることを忘れてはいけません。
胃の不快感や痛みを感じたときには、まずは食生活の見直しや生活習慣の改善を優先することが基本です。
胃酸を抑えるメカニズムについてお話しします。
■ 胃酸と壁細胞(プロトンポンプ)
胃の細胞には、胃酸を出す壁細胞というものがあります。

壁細胞にはヒスタミン受容体があり、胃酸を出す1つのスイッチです。胃酸が出てくる蛇口をプロトンポンプと言います。胃酸を抑える薬は、一般的にこれら2ポイントを抑えることになります。
以下の図で、壁細胞についてさらに詳しく示します。

胃酸を抑える代表的な医薬品が、H2ブロッカーとPPI(プロトンポンプ阻害薬)になります。
■ H2ブロッカー
ヒスタミンという物質が胃酸を出すことはわかっていましたが、鼻炎やアレルギーに使われるような従来の抗ヒスタミン薬を投与しても胃酸分泌が抑えられませんでした。ヒスタミンの作用する側(受容体)に、2種類あることがわかったのです。

ジフェンヒドラミンは、古典的な抗ヒスタミン薬(くしゃみ・鼻水など)ですが、これはH1受容体をブロックするものでした。ブリマミドという化合物が合成され、これが胃の壁細胞へのヒスタミンをブロックすることがわかったのです。つまりH2ブロッカーとして必要な基本構造が決定されました。
本剤は画期的な発見で、世界初のH2ブロッカーであるタガメット®は全世界で高い売り上げを達成しました。
■ プロトンポンプ阻害薬
一方、ヒスタミンをブロックしても、他の2チャンネルが残存しており、胃酸を完全に抑えることができませんでした。そこで、胃酸の蛇口自体を止めてやろうと医薬品が開発されたのです。
プロトンポンプ阻害薬(PPI:Proton Pump Inhibitor)が誕生しました。

①から順に発売。赤枠で囲まれた部分に、ほぼ共通の構造が見られますね。この基本構造、結構考えられたものなのです。
■PPIは、どうやって蛇口を止めるのか
PPIは、胃酸のような強酸下で初めて薬効を示す薬です。
しかし、体に吸収される前に胃酸に触れると、すぐに分解されてしまうモロさが弱点でした。そのため腸溶錠やカプセルといった製剤工夫が必要でした。最新の④でさえ、昔ながらのカプセル剤です。
なんとかして小腸から吸収し、血中に入ったPPIは胃の壁細胞までたどり着きます。弱アルカリの性質を持つPPIは、pH1の強酸がある胃酸分泌の出口あたりまで引き寄せられるように移動します。そこで、胃酸により構造変化が起こります。

【どのような構造変化か】
プロトンポンプの胃側にあるシステイン(S:硫黄を含むアミノ酸)とPPIのS原子が強力に結合(ジスルフィド結合-S-S-)します。この結合は、一度くっつくと二度と離れない不可逆的な反応として知られています。これがPPIの効果が強力な理由です。
このようなメカニズムからPPIは速効性が弱点であり、すぐにむかつきや胃痛を抑えることが難しいのです。そのような弱点を克服した薬が登場しました。
■ ボノプラザンの登場
ボノプラザン(タケキャブ®)は、プロトンポンプを止めるのですが、PPIとは作用メカニズムが異なり、種別もP-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー:Potassium-Competitive Acid Blocker)と呼ばれています。
簡単に言えば、胃内でも分解されず胃の壁細胞にダイレクトアタックできるのです。吸収後でも、血管から壁細胞に移動し、そこからでもプロトンポンプを邪魔することができます。

プロトンポンプは、壁細胞がカリウムイオン(K⁺)を取り込み、水素イオン(H⁺)を胃の内腔側に放出することで、胃酸(HCl)を生成する機能を担っています。ボノプラザンは、その通り道を塞ぐように結合します。
このメカニズムを初めて聞いたときは大変驚きました。
ちょっと難しかったかも知れませんが、胃酸を抑えるという一見単純なものでさえ、未だに研究が続いているのです。
人間の体は不思議ですよね。ちなみに、食べ過ぎて胃が気持ち悪いって場合は、”太田胃散”で十分です。このような薬のお世話にならないように、胃を大切にしなければなりませんね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
ご意見・ご感想はこちらまで↓
takuya_nagata_1026@yahoo.co.jp
•━━━━━━• ∙ʚ🐤ɞ∙ •━━━━━━•
各種SNSもフォローを宜しくお願いします。
X(旧Twitter)
Facebook
インスタグラム
LINEオープンチャット(ニックネームで参加可能)
•━━━━━━• ∙ʚ🐤ɞ∙ •━━━━━━•
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>長田 たくや (ナガタ タクヤ)>【くすり】 胃酸を抑える薬のメカニズム 【抗ヒスタミン薬、PPI】