2025/6/18
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
病院で処方される薬を「処方薬」、ドラッグストアで購入できる薬を「OTC(Over The Counter)」と言います。処方薬が、ドラッグストアなどで販売できるようになることを「スイッチOTC」と呼びます。
代表的な例が胃薬のガスター10®です。これは医療用医薬品がベースで、OTC化されたものです。
さて、ガスターのようなH2ブロッカーとは別に、より強力に胃酸を抑える薬として「プロトンポンプ・インヒビター(以下、PPI)」があります。PPIは長年スイッチOTC化が議論されてきましたが、否決が続いていました。ところがいつの間やらGOサインが出て、2025年6月、ついに「パリエットS」として発売されることになりました。
参照:国内初、OTCのPPI「パリエットS」が発売

■ プロトンポンプとはなんぞ?
胃酸は胃の壁(壁細胞)から分泌されます。非常に強い酸(pH1~2)ですが、自分自身が溶けないように胃粘膜で守られています。この防御が破れると、胃酸で胃を傷つける「胃潰瘍」になります。
治療のアプローチは3種類
①胃粘膜守る(防御機能↑)
②胃酸を中和する(一時休戦)
③胃酸分泌を抑える(攻撃力↓)
昔は①、②しか治療法がなく、胃潰瘍が死因にもなっていました。あの夏目漱石さんですね。
その後③の研究が進み、胃酸分泌の引き金が「ヒスタミン」であることがわかりました。これを抑える薬として登場したのが、H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)で、爆発的な人気医薬品となりました。

■ プロトンポンプ・インヒビターの登場
しかし、ヒスタミンが1つのチャンネルに過ぎず、胃酸を出す大元の蛇口は「プロトンポンプ」という輸送タンパク質だったのです。「ほんなら、この口を閉めたら完璧なんじゃないか?」と研究が進み、プロトンポンプをインヒビター(邪魔する)、略してPPIが誕生します。
・オメプラゾール(オメプラール®)➡1998年世界発
・ランソプラゾール(タケプロン®)
・ラベプラゾール(パリエット®)
・エソメプラゾール(ネキシウム®)
これらが現在でも使われているPPIです。今回OTC化されたのは「パリエット」。他薬と比べて薬物相互作用が少ない(代謝酵素CYP2C19に大きく依存しない)ため、比較的安心して使えるのも理由でしょう。
■ PPIの特徴と政治的判断
PPIは強力な効果を持ちますが、効き始めるまでに時間がかかります。
「すぐに気持ち悪さを止めたい」という症状には不向きなのです。そのため、本来OTCには不向きとも言えます。今回のOTC化は、やや政治的な判断もあると感じます。
近年、PPIが苦手としていた速効性を解消した新規薬剤ボノプラザン(タケキャブ®)が登場しました。これが爆発的に処方が増えており、売り上げトップ10にも入りました。これもあって「OTCにしても、まぁええやろ」という判断もあったのかなと。
実際、服用が本当に必要な方もいれば、惰性で飲み続けている方もおられます。処方上は服用期間に制限がありますが、「長期服用が必要」という一文で継続処方できてしまいます。今後ますますタケキャブの処方が増えていくと予想されます。

なぜ効果が遅いか、なぜタケキャブが弱点を克服したのかは、次回お話ししましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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