重黒木 優平 ブログ

鎌倉市議会 財政勉強会メンバーによる行政視察 兵庫県明石市(後編)

2026/7/27

日本国民・鎌倉市民を最優先に考える市政へ!

鎌倉市議会議員の重黒木優平(じゅうくろきゆうへい)です。

 

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▼鎌倉市議会 財政勉強会メンバーによる行政視察 兵庫県明石市(後編)

 

▼前編はこちら

https://go2senkyo.com/seijika/180455/posts/1449891

 

▼無償化の財源と、将来負担について

前編では、明石市で子育て世代の転入や人口増が続いてきた一方、市税収入の増加をすべて子育て施策の成果と見ることはできないとまとめました。

後編では、無償化の財源をどのように確保してきたのか、そして公共施設更新を含む今後の財政負担について確認します。

私は、行政による無償化とは、費用がなくなることではなく、利用者の直接負担を税負担に置き換えるものだと考えています。

だからこそ、無料になったサービスだけを見るのではなく、何を見直して財源をつくったのか、その負担を将来も続けられるのかまで確認する必要があり、この点が最も重要であると考えます。

 

▼子育て施策は、厳しい財政状況の中で始めている

泉房穂氏が市長に就任した平成23年度、明石市の財政に大きな余裕があったわけではありません。平成23年度の一般会計決算は、歳入991億円、歳出983億円でした。主要3基金の残高は70億円、市債残高は臨時財政対策債を除いて699億円です。

その後、明石市は平成26年度から令和5年度までを期間とする財政健全化推進計画を策定しました。

財政的に恵まれた状態で無償化を始めたのではなく、事業を見直しながら、子ども施策へ予算を重点配分していったということです。

 

▼福祉関連事業の予算カット

子育て施策の財源について、よく行政の無駄を削ったと説明されることがあります。

明石市が平成26年度予算で行った事業見直しでは、削減されたのは庁内経費だけではありませんでした。同年度には、54事業、約8,000万円が削減。その中には、次のような事業が含まれています。

 

・福祉ふれあい事業(廃止または段階的な廃止)

・老人憩の家設置運営事業(廃止または段階的な廃止)

・観光市民トイレ助成事業(廃止または段階的な廃止)

・在宅福祉サービス講演会の廃止

・敬老月間推進事業の見直し

・高齢者福祉サービス推進事業の縮小

・高齢者ふれあい入浴事業への利用者負担導入

 

主な削減額は、敬老月間推進事業が1,061万4,000円、高齢者福祉サービス推進事業が778万9,000円、高齢者ふれあい入浴事業が1,370万3,000円。(資料添付)

もちろん、効果が薄れた事業や時代に合わなくなった制度を見直すことは必要です。

(※むしろここが重要で、私は鎌倉市議会で最も力を入れて取り組んでいる点)

一方で、子育て施策が、誰にも負担を求めず、わずかな無駄を削るだけで実現したわけではありません。高齢者福祉を含む既存施策を廃止・縮小し、利用者負担を導入したうえで、子ども施策へ財源を振り替えています。

これは「無駄を削って無料化した」というより、政策の優先順位を大きく変更したと見るべきです。

 

▼JT工場跡地の売却益

明石市の主要3基金は、平成7年度の174億円から減少を続け、平成21年度には69億円まで落ち込みました。その後は回復し、平成30年度には115億円となっています。

ただし、この基金回復には、大きな臨時収入があることを忘れてはいけません。

明石市の視察資料では、JT工場跡地を約36億円で取得し、工業専用地域から第一種中高層住居専用地域へ用途変更し、その一部を住宅開発用地として約67億円で売却されています。差額となる約31億円は基金に積み立てられました。

つまり、基金残高の増加を、子育て施策による人口増や税収増だけの成果と見ることができない点には注意が必要です。約31億円は、毎年度継続して入る収入ではなく、土地売却による一時的な財源です。

▼土木費を削り、子育て施策に回すなんてことは本当に可能なのか

明石市の土木費は、平成25年度の181億円から令和5年度の82億円へ、表面上は99億円減少しています。この数字だけを見ると、道路やインフラ整備を減らし、子育て施策へ回したようにも見えます。しかし、主な減少理由は別にあります。

一つは、下水道事業の企業会計への移行です。これまで土木費に含まれていた下水道事業への繰出金が、別の科目に移ったため、土木費が減ったように見えています。

※支出そのものがなくなったわけではありません。

 

もう一つは、明石駅前再開発事業の完了です。

平成28年度の土木費138億円のうち、明石駅前再開発事業は約73億円でした。大規模事業が終了すれば、翌年度以降の土木費が減るのは当然です。

明石市の資料でも、下水道への繰出金を戻して比較すると、土木費の一般財源はおおむね横ばいとされています。

※土木費を削って子育て施策へ回したという表現は正確ではない。

 

▼公共施設の更新が控えている

これは明石市に限らず全国的な問題ですが、公共施設の老朽化という課題は残っています。明石市でも1970年代以前に建設された公共施設が全体の41.8%、今後は大型施設の整備が続きます。

・市役所新庁舎建設費は約202億円で、財源は借入れ182億円、基金20億円。令和10年3月末の完成予定。

新ごみ処理施設建設費は約451億円で、国の補助金136億円、借入れ271億円、基金44億円を充てる計画。

 

▼基金は減少し、市債は増加する見通し

明石市が示した財政見通しでは、市役所新庁舎や新ごみ処理施設の整備に伴い、令和12年度以降、収支差引がマイナスとなる年度が続きます。

3基金残高の見込みは令和7年度の130億円から令和16年度には84億円に減少。

市債残高は令和7年度の1,037億円から令和16年度には1,103億円へ増加。

今後は、未利用地の売却、市税収納率の向上、広告料収入、ふるさと納税、人件費削減、公共施設の適正化、事業の見直しなどにより、収支改善を進めるとしています。

 

▼財政危機なのか

SNS上で、明石市の財政はすでに危機的な状態と見かけたことがあります。

令和6年度の財政指標を見ると、実質公債費比率は3.9%、将来負担比率は19.9%です。

地方債残高は、平成27年度の1,136億7,115万円から、令和6年度には1,076億6,729万円へ減少しています。

積立金現在高は、同じ期間に108億9,289万円から167億2,341万円へ増加しています。

現時点の数字だけを見れば、直ちに財政危機に陥っているとまでは言えないかと思います。ただし、大型施設整備による借入れと返済はこれから本格化。

現在の財政状況は危機的ではないものの、今後は基金が減少し、市債が増える厳しい局面に入ると思いました。

 

▼まとめ

今回の視察を通じて明石市の子育て政策は色々と意見はあるものの、単純な成功か失敗かでは整理できないと感じました。子育て世帯の転入が増え、人口が増加してきたことは事実です。所得制限を設けず、医療、保育、給食などの負担を軽減したことも、子育て世帯から選ばれる理由の一つになったと考えられます。

一方で、子育て施策に投入した一般財源を、人口増による税収だけで回収できたとは言えません。財源には「福祉事業を含む既存施策の廃止・縮小」「利用者負担の導入」「人件費や施設管理費の見直し」「景気回復や国の財政措置による歳入増」「人口30万人到達に伴う事業所税」「地方交付税や交付金の増加」「JT工場跡地売却による約31億円の臨時収入」「国の幼児教育・保育無償化による市負担の軽減」などがありました。

 

明石市の特徴は、子育て施策が新たな財源を生み出したことよりも、増えた一般財源や事業見直しで確保した財源を、子ども施策へ集中的に配分した点にあります。

政策の優先順位は明確でした。

しかし、無償化によって費用そのものがなくなったわけではありません。

今後は、新庁舎、ごみ処理施設、公共施設の老朽化対策、社会保障費の増加が重なります。明石市の政策が持続可能な成功モデルだったかどうかは、これからの財政運営によって判断されることになります。

 

鎌倉市が明石市から学ぶべきなのは、無償化の項目をそのまま増やすことではありません。「これは素晴らしい取り組み!うちの自治体でも真似します!は論外」

新たな施策を始める際には、財源と効果だけでなく、代わりに何を見直すのかを明確にする必要性を改めて感じました。また、単年度の予算ではなく、公共施設更新、市債返済、維持管理費まで含めた中長期の財政見通しを示すことが重要です。

「無料化」という言葉だけで判断せず、財源、優先順位、将来負担を一体で市民に示すことが、鎌倉市の政策形成にも必要だと考えます。

松尾市長(鎌倉)は、人が良く話を聞いてくれる方ではありますが、それは同時にデメリットでもあります。事業の拡大や新規事業を広げる一方で、私としては歳出削減の観点が弱いと感じているので、今後もしっかり行政監視を徹底してまいります。

 

前編・後編が終わり、最後はおまけを記載します。

政策や鎌倉市に対するご意見・ご相談は、

直通の携帯電話・LINE、又は、メールにてお気軽にお問合せ下さい。

#鎌倉市

#鎌倉市議会議員

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メール jyukuroki@horie-juku.com

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著者

重黒木 優平

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肩書 鎌倉市議会議員
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