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日高 ちほ ブログ

令和8年度東南部 正副議長会 研修会 感想レポート

2026/8/8

「自助」の正体は備蓄ではなかった?
~震災の常識を覆す5つの衝撃的な真実~
 
「災害への備え」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。水や食料の備蓄、あるいは非常用持ち出し袋の準備。もしこれらを完璧に整えていることで「命を守れる」と確信しているなら、その常識は今すぐアップデートが必要です。
2026年(令和8年)8月7日、危機管理教育研究所の国崎信江氏による研修が突きつけたのは、従来の防災対策の限界でした。直近に発生した「令和8年熊本地震」の生々しい教訓は、私たちの防災パラダイムを根底から揺さぶります。生き残るための「自助」の正体は、私たちが信じてきたものとは全く別の場所にありました。

 

【真実1】「揺れたら机の下」は、すべての人への正解ではない
長年、私たちは「地震が起きたら机の下へ」と教え込まれてきました。しかし、科学的・構造的な視点から見れば、これはすべての住宅に共通する正解ではありません。最新の知見では、建物の耐震性能が命を分けるとされています。
分岐の境界線となるのは、「1981年(昭和56年)6月1日」。この日を境に導入された新耐震基準を満たしていない建物において、1階は物理的な「クラッシュゾーン(崩壊領域)」へと変貌します。
 
  1. 耐震性が低い家の1階: 潜らず、10秒以内に外へ出る。机の下にいても、家全体が押し潰されれば助かりません。
  2. 耐震性が低い家の2階: 1階へ降りようとせず、2階にとどまる。階段を降りる時間はなく、1階よりも2階のほうが生存率が高まるためです。
  3. 耐震性がある家: 屋内で身を守る。家具の固定が前提となります。
 
「17秒——熊本地震で、建物が倒れるまで」
 
この数字は、熊本地震で建物が揺れ始めてから完全に倒壊するまでの時間を示しています。人間が危機を認識し、行動を決定できる「認知の限界」はわずか数秒から30秒。自分の家がいつ建てられたかを知らずに「机の下」を盲信することは、極めて危険な賭けなのです。
 
【真実2】最強の防災は、避難所に行かないための「投資」である
 
防災の「最上流」とは何か。それは、備蓄を増やすことではなく「家を倒さないこと」に尽きます。耐震化は単なる住宅改修ではなく、社会全体を守る「最強の復興政策」です。
家が倒れないことで、以下のような劇的なメリットの連鎖が生まれます。
 
  • 救助・二次災害の抑止: 下敷きになる人がいなければ、消防や警察が二次災害のリスクを冒して救助に入る必要がなくなります。
  • 避難所問題の解消: 自宅で生活が継続できれば、劣悪な避難所環境による災害関連死をゼロに近づけられます。

財政負担の激減: 仮設住宅の建設費、膨大な災害廃棄物の処理費用、これらすべてが「倒れない」だけで発生しなくなります。

 
「耐震化は復興政策でもある」
 
「耐震改修は高額だ」という誤解も、科学的なコスト感覚で塗り替える必要があります。現在、150万円程度で命を守れる工法が普及しています。これは「車1台分」のコストで、家族の命と人生を買い取る投資に他なりません。
しかも自治体の補助金制度を利用すれば、実際のコストは数十万ですむことになります。
 
【真実3】「非常用持ち出し袋」は、現場では持てない
 
能登半島地震、特に石川県珠洲市蛸島町(鵜飼地区)のドライブレコーダーが捉えた映像は、私たちが信じる「訓練」の虚構を暴きました。激しい揺れが収まった直後、避難する人々のなかに「非常用持ち出し袋」を背負っている人は一人もいませんでした。
現実は、袋を手に取る余裕すらなく、靴も履かずに裸足で逃げるのが精一杯なのです。多くの自治体が行う「受付から始まる避難所訓練」は、現場の実態を反映していません。
実際の避難所にまず現れるのは、散乱したガラスで足を切り、血を流しながら逃げてきた人々です。非常食の配付よりも先に、剥き出しの足で逃げてきた人への応急処置が求められる。これが、私たちが直視すべき「現場の初動」です。
 
【真実4】誰でも「1分でリーダー」になれる魔法の箱
 
災害発生時、行政職員や施設の鍵担当者がすぐに駆けつけられる確率は極めて低いのが現実です。この「空白の時間」を埋めるための革新的なツールが、愛知県などで導入が進む「ファーストミッションボックス(FFB)」です。
これは避難所の入口に設置される「即応キット」で、以下のような画期的な仕組みを備えています。
 
  • 誰でも動ける仕組み: 箱を開ければ、小学生でも理解できる平易な言葉と図解でやるべき任務(安否確認や初期消火、救護など)が示されています。
  • 鍵問題の解消: 職員を待たず、防災行政無線で暗証番号を一斉公開する、あるいは鍵預託者の場所を明示した地図を同梱することで、その場にいる人が1分で開錠・設営を開始できます。
  • 主な中身:任務手順書(指示カード)、メガホン、折りたたみ式ヘルメット、ヘッドライトなど。
  • 設置場所:地域の避難所(学校の体育館など)や、マンション共有部などに備え付けられています
 
この仕組みは、出典さえ明記すれば知的財産権の制約なく導入可能です。行政が来るのを「待つ側」から、その場で「動く側」へ。システムが人をリーダーへと変容させます。
 
【真実5】置き去りにされた「赤ちゃん」と「頭巾」の盲点
 
防災の現場では、いまだに「慣習」という名の思考停止が蔓延しています。 その象徴が「防災頭巾」です。布製の頭巾では、瓦やガラスの落下衝撃から頭部を守ることは不可能です。横浜市では、行政予算だけでなく企業やクラブからの寄付を活用し、全児童へヘルメットを配布するモデルを構築しています。予算がないことを理由に安全を妥協しない、戦略的なアプローチです。
また、避難所の環境アセスメントにおいて、最も深刻なのが乳幼児と妊産婦の現状です。大人用の段ボールベッドが用意されていても、赤ちゃん用が不足しているため、母親は「床に寝かせた我が子が他人に踏まれないよう」、24時間抱き続けなければならない過酷な状況に置かれています。弱者への配慮を「善意」に頼るのではなく、備蓄品や設営マニュアルの段階で「物理的な安全」として組み込む必要があります。

 

結び:あなたの「初動」をアップデートするために
防災とは、知識を詰め込むことでも、倉庫を食料で満たすことでもありません。それは「自分の家の耐震性を知る」という、最も泥臭く、最も確実な一歩から始まります。
家が倒れなければ、あなたの持ち出し袋も備蓄水も、瓦礫の下に消えることはありません。反対に、住宅の骨組みが脆弱なままであれば、どんな準備も一瞬で無価値になります。
最後に、あなた自身に問いかけてみてください。
「あなたが今いる場所で、地震が起きたとき、最初の10秒で取るべき行動を本当に知っていますか?」
その答えを出すことが、今日、この瞬間から始まるあなたの真の「自助」なのです。
 
 
あとがき:珠洲の景色を胸に、三郷の未来を守る
 
本レポートを最後までお読みいただき、ありがとうございました。
実は私自身、今年の5月の連休は、能登半島に一週間滞在致しました。 
そこで目にした甚大な被害を受けた珠洲市の光景は、その土地で出会った方々一人ひとりの生活や心情を思うと、正直に申し上げれば、目を背けたいほどに苦しく、切ないものでした。
研修会で流された珠洲市蛸島町での記録映像には、揺れが収まった直後、靴も履かず、非常用持ち出し袋も持たずに裸足で逃げる人々の姿がありました。現地に立った私にとって、それは単なる「記録」ではなく、あの日あそこで必死に命をつないだ方々の、言葉にならない悲鳴として胸に迫ってきました。
 
研修で講師が語った「命が残らなければ、その後の水も食料も使う人がいない」という言葉は、被災地の厳しい現実から導き出された、重く、避けては通れない真理です。防災とは、単なる行政の計画や備蓄品の数を確認することではありません。それは、私たちが愛する家族や隣人の、かけがえのない日常と命を「何が何でも守り抜く」という決意そのものなのです。
家を倒さないための耐震化、そして誰一人取り残さないための避難所運営。これらはすべて、あの日珠洲で失われそうになった、そして失われてしまった多くの命からの教訓です。
 
三郷市で暮らす皆さま。
どうか、今日この時から、ご自身の家を、そして大切な人の避難の姿を思い浮かべてみてください。「自分には何ができるか」を問い続けることが、次なる災害から命を救う最大の力になります。
私も一人の議員として、防災士として、そしてこの街に生きる一人の人間として、能登で出会った方々の眼差しを忘れることなく、「形式の防災」を「命を守る防災」へと変えていくために、全力で取り組んで参ります。
 
※添付写真は珠洲市の道の駅で購入した、珠洲市のお母さんたちが玄関先や庭先で干して
作ったわかめです。舌触りがよく滑らかで柔らかいのでもっとたくさん買っておけば良かったと思っている
商品です。
 
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日高 ちほ

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肩書 医療商社経営/防災士
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