2026/8/5
議会改革継続実施のための組織体制運用:
―枚方市モデルに学ぶ持続可能な変革の仕組み―
三郷市議会 創政MISATO
佐藤 裕之
高橋 誠一
日髙 千穂
鈴木 優作

1.視察の概要
・視察先:大阪府枚方市
・視察日時:2026年8月5日10:00~11:30
・調査テーマ:議会改革
2. はじめに:議会改革を「仕組み」で動かす戦略的意義
議会改革が一時的なムーブメントや一部の議員の熱意で終わってしまう最大の要因は、改革のエンジンが「人」という不安定な要素に依存しているからです。属人的な取り組みは、選挙後のメンバー交代や政治情勢の変化によって容易に停滞します。地方自治体行政改革の観点から言えば、改革を組織のDNAとして定着させるためには、個人の資質を問わず自律的に機能する「組織体制」への立脚が必要不可欠です。
本報告書は、三郷市議会をはじめとする地方議会において、枚方市議会の先進事例をモデルとした実務的指針を提示するものです。枚方市が構築した「議会改革懇話会」という議論のプラットフォームと、「議会広報課」という実行部隊の二本柱は、改革の「停滞」を防ぐ極めて強力なエンジンとなります。
組織体制の整備は、単なる事務の効率化ではありません。それは、議会が自らの「議決責任」を再認識し、市民に対する存在意義を再定義するプロセスそのものです。次章では、合意形成の質を劇的に高める組織論の核心について詳述します。
3. 議会改革懇話会:合意形成を加速させる諮問機関の運用
改革を推進する上で最大の障壁は、会派間の利害調整です。枚方市が導入した「議会改革懇話会」は、法律や会議規則に縛られない「任意の場」であることが戦略的メリットとなります。公式な委員会では「記録」や「立場」が優先され、本音の議論が阻害されがちですが、非公式な懇話会は、議員報酬の削減や通年議会の導入といったデリケートな課題に対して、柔軟かつ実効性の高い事前調整を可能にします。
設置・運営のガイドライン
・設置サイクル:2年に1度の定期的設置 常設化による形骸化を防ぎつつ、改選や役員交代のタイミングに合わせた「2年に1度」のサイクルで運用することで、継続性とリフレッシュ効果を両立させます。
・構成員選定:各会派から1名ずつ選出 全会派を議論のテーブルに着かせることで、プロセスに透明性を持たせ、「一部の勢力による独走」という疑念を払拭します。
・諮問・答申フローの構造化
①議長による諮問: 解決すべき具体的な改革課題(例:通年議会、ICT運用)を提示。
②懇話会での協議: 「任意の場」としての自由度を活かし、会派間の合意形成を図る。
③答申: 合意内容を議長へ報告。
④四制度化: 議会運営委員会等の「所定の手続き」を経て、速やかに会議規則等の改正を行う。
会派間調整の要点:政治心理のコントロール
枚方市における「通年議会」の導入プロセス(平成23年の調査特別委員会設置から、平成24年の課題検討、平成27年の施行に至る流れ)を見ると、この懇話会が「議論の熟成期間」を担保したことが分かります。 特に重要なのは、「全会派一致」または「極めて高い合意」を追求する姿勢です。これにより、通年議会のような大きな変革に際しても、反対勢力を孤立させることなく、組織全体の総意として改革を昇華させることが可能になります。

4. 議会広報課:20代・30代職員による戦略的情報発信
議会事務局内に「広報専任チーム」を設置することは、市民とのエンゲージメントを再構築するための優先的な投資です。枚方市では、20代・30代の若手職員4名による内製化体制が、議会の「顔」を劇的に変えました。
若手職員中心の内製化体制と役割分担
SNS親和性が高く、市民(特に現役世代)の感性に近い職員を配置し、以下のような役割分担で運用します。
企画・構成: 市民目線でのInstagram/YouTubeの企画、台本作成。
撮影・技術: 一般質問の収録や、ショート動画用の素材撮影。
編集・エンゲージメント: 動画編集、コメントモニタリング、速報発信。
戦略管理: 議事側との調整、広報ガイドラインの遵守確認。
これらを外注せず「内製化」することで、外注コストを削減するだけでなく、議会内部の動向をリアルタイムで届ける「速報性」と、職員・議員の熱量が伝わる「親近感」を創出できます。枚方市では、この内製広報が市民の好感度向上に直結したと評価されています。
5. 現場での再現性と課題への対処法
改革には必ず「事務負担の増加」という反作用が伴います。これを克服するためには、ICTの戦略的活用と、明確なルール設計が必要です。
事務負担増加への具体的処方箋
ICT導入(タブレット活用)による費用対効果を、枚方市の事例を基に構造化します。
項目 | 内容・費用感 | 事務負担・コストへの影響 |
|---|---|---|
初期導入費用 | 約507万円(約40台分) | ペーパーレス化による製本・配送事務の撤廃 |
月額運用費 | 約7万円 | 情報共有の即時化、資料修正の容易化 |
紙の削減効果 | 年々累積的に増加 | 物理的スペース削減、印刷コストの抜本的カット |
運用の細部設計:枚方市の会議規則に見る「手当て」
オンライン議会運用の導入にあたっては、以下の具体的運用案が参考になります。
通信断への備え: 委員長の職務代理をあらかじめ指定し、復旧までは他の委員の質疑を優先する。
傍聴人への配慮: 「会議映像は録画・公開用ではない」旨を冒頭に宣言し、プライバシーを保護する。
オンラインの境界: やむを得ない事情がある場合に限り選択可能とするが、代表質問は答弁調整の複雑性から対象外とする。
一事不再理の解釈: 通年議会における再提出の制約を防ぐため、会議規則の文言を「同一会期中」から「同一議会期間中」へ改正(いわゆる枚方条項)し、実務上の懸念を解消する。
「So What?」:管理職が採るべき判断基準
象徴的なのは3月31日の運用です。枚方市では国の法改正を待つため、今年は午後5時5分に参議院での可決を確認した後、同日中に議会運営委員会と本会議を開催し、議決を行いました。「市長への専決処分」という安易な事務効率化を選ばず、議決責任を果たす姿勢こそが、市民からの信頼という最大の投資リターンを生むのです。
6. 三郷市における実践的適用ロードマップ
人口142,423人(令和8年6月時点)、東京都心20km圏内に位置し、都心への通勤世帯が多い三郷市の特性を考慮し、枚方市モデルを以下のステップで導入します。
段階的導入プラン
Phase 1:検討の場の設置(三郷版・議会改革懇話会の創設) 会派を超えた任意の協議体を立ち上げます。ここでは、三郷市の現状に即した「通年議会」の導入可否と、ICT化の優先順位を整理します。
Phase 2:広報体制の再編(都心通勤層をターゲットとした発信) 既存の事務局員から若手を中心とした「広報プロジェクトチーム」を編成します。三郷市は現役世代が多いことから、Instagramのショート動画等を活用し、多忙な通勤世代がスキマ時間に議会の動きを把握できる仕掛けを内製化します。
Phase 3:制度のアップデート(「枚方条項」の適用) 会議規則の改正を行い、一事不再理の規定を「同一議会期間中」へと変更します。これにより、通年議会下でも柔軟な議案提出を可能にし、オンライン委員会の正式運用を開始します。
7.総括:三郷市議会の未来に向けた提言
~「開かれた議会」から「市民と共にある実効的な議会」への転換~
今回の枚方市議会への視察を通して痛感したのは、議会改革とは単にタブレットを導入したり、SNSを始めたりすることではなく、「議会が二元代表制の一翼として、いかに議決責任を果たし続けるか」という組織の姿勢そのものであるということです。現在、三郷市議会が直面している課題と照らし合わせ、以下の3つの視点から本市の未来に向けた総括を行います。
①. 執行部任せにしない「議決責任」
三郷市においても、年度末の急な法改正や緊急を要する案件に対し、市長による「専決処分(地方自治法第179条)」で対応するケースが見受けられます。しかし、枚方市が導入している「通年議会」の本質は、事務的な効率化ではなく、「どのような緊急事態でも、選良である議員が議論し、議決する」という民主主義の根幹を守ることにあります。「国が決めたことだから」と専決処分を容認するのではなく、枚方市のように参議院での可決から数分後には議運・本会議を開くという執念は、市民に対する責任のあり方の一つです。三郷市においても、現在の年4回の定例会制の枠組みを超え、常に議会が機能し続ける体制構築の検討の余地ありです。
②. 「会派の壁」を越え、改革を止めない仕組みづくり
議会改革が往々にして「掛け声」で終わってしまうのは、合意形成の場が公式な会議体に限定され、議論が硬直化するためです。枚方市が実施している、2年に1度の「議会改革懇話会」という仕組みは、三郷市にとって極めて有効な処方箋となります。法律や規則といった「形式」の前に、各会派が膝を突き合わせて「三郷市議会をどう良くするか」を率直に話し合う任意の場を、定期的・継続的に設けること。この「仕組み」があるからこそ、一事不再理の解釈変更といった高度な運用上の工夫も実現可能となります。創政MISATOとしては、この「話し合いの場」の設置を議会全体に働きかけていくべきだと考えます。
③. 市民の「日常」に議会を届ける広報戦略の刷新
三郷市の議会広報は、現在「議会だより」やインターネット中継が中心ですが、これだけでは現役世代や若年層の関心を引くには限界があります。枚方市議会局における「議事広報課」の専任体制と、若手職員による動画・SNSの内製化は、広報を「単なる記録」から「市民との接点」へと昇華させています。 職員が自ら企画し、議員の一般質問をショート動画で配信するなどの取り組みは、市民の反応を劇的に変える力を持っています。三郷市においても、体制整備を含め、外注に頼らない「熱量のある情報発信」を推進し、市民にとって議会を「遠い存在」から「自分たちの声を届ける場所」へと再定義する必要があります。
結びに代えて
今回の視察は、三郷市議会が「変われない理由」を探すのではなく、「どうすれば変われるか」という具体的な手法を学ぶ貴重な機会となりました。ICT化によるペーパーレスやオンライン化はあくまで手段に過ぎません。 私たち創政MISATOは、枚方市議会が10年かけて積み上げてきた「改革を回し続ける組織の形」を三郷市の土壌に合わせ、最適化した形で提案してまいります。「市民とともに創る新しい政治のかたち」を、まずは自分たちから議会改革への道筋を見つけ行動して参ります。

#三郷市議会議員
#創政MISATO
#行政視察
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>日高 ちほ (ヒダカ チホ)>枚方市行政視察 創政MISATO会派報告書