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三豊市行政視察 創政MISATO会派報告書

2026/5/15

廃棄物処理のパラダイムシフト:

―香川県三豊市「バイオマス資源化センター」にみる非焼却・資源循環モデルの全容検証―

 

三郷市議会 創政MISATO

佐藤 裕之

高橋 誠一

日髙 千穂

鈴木 優作

 

1. 視察の概要

  • 視察先: 香川県三豊市 バイオマス資源化センターみとよ(運営:株式会社エコマスター)
  • 視察日時: 2026年5月13日14:00~15:30
  • 調査テーマ: 中心市街地活性化に向けた取り組み(鳴門駅移転プロジェクトおよびインフラ活用)

2. 視察の背景と目的:廃棄物行政の転換期

現在、多くの自治体が抱える一般廃棄物処理施設の老朽化問題は、単なる設備の更新に留まらず、脱炭素社会への適応、人口減少下での財政維持、そして資源循環の高度化という多面的な課題を突きつけています。環境省が推奨する「広域化・大規模焼却」という従来路線に対し、香川県三豊市は「ごみは資源、燃やさない処理」を掲げ、日本初の民設民営によるバイオマス資源化施設を成功させています。本報告では、同市が達成した「三豊モデル」の本質を、技術的合理性、行政経営の柔軟性、そして市民社会の役割という三つの観点から深く考察します。

 

3. 「三豊モデル」成立の政治的・歴史的軌跡

三豊市の選択は、決して平坦な道のりではありませんでした。平成18年の7町合併を経て発足した同市は、当初検討されていたガス化溶融炉計画や焼却路線を、新市長の決断によって白紙撤回しました。

この転換において最も特筆すべきは、「空白の4年間」を受け入れた決断力です。旧施設の期限終了から新施設稼働までの間、市は近隣自治体へ処理を委託するというリスクを負いながらも、安易な焼却路線の継続を拒みました。議会での紛糾を経てなお、「非焼却」という理念を採択した背景には、自治体の未来を「燃やすコスト」ではなく「創る資源」に置くという、強固な政治的合意形成があったことが伺えます。

4. 技術的考察:好気性発酵乾燥(トンネルコンポスト)方式

三豊市が導入した技術は、欧州の知見を日本向けにアレンジした「トンネルコンポスト方式」です。

(1) 生物学的熱エネルギーの活用

この方式の核心は、微生物の活動によって発生する「自発的な熱」の活用にあります。

  • プロセス: 家庭から排出された生ごみ(組成の約1/2)、汚れた紙、紙おむつ等を含む「燃やせるごみ」を、過去の発酵物(種材)と混合し、コンクリート製の巨大な槽(トンネル)に充填します。
  • 発酵乾燥: 17日間にわたり、微生物が有機物を分解する際に発する約70℃の熱によって、ごみの中に含まれる水分を効率的に蒸発させます。
  • 成果物: 乾燥したごみは光学選別機等で選別され、紙、プラスチック、布、紙おむつ等を原料とした高品質な固形燃料(RPF)へと生まれ変わります。

(2) 環境負荷の極小化:排水ゼロと臭気対策

技術的な卓越性は、その環境性能にも現れています。

  • 排水無排出: 水分を水蒸気として放出するため、施設からは一切の排水が出ません。これにより、下水道普及率が極めて低い地域(三豊市は0%)であっても設置が可能となり、水環境への影響を完全に排除しています。
  • 高度な脱臭システム: 都市部での展開において最大の懸念となる臭気に対しては、計680㎡に及ぶ「バイオフィルター(木質チップ)」を導入しています。チップに棲む微生物が臭気の核となる成分を分解し、さらに館内の負圧管理や二重扉の徹底により、近隣への影響を最小限に抑えています。

5. 行政経営的考察:民設民営(PFI「民設民営」を超えた民間活力)

一般廃棄物処理において、施設建設から用地確保、運営までを民間が担う「民設民営」は、全国的にも極めて稀な事例です。

 

(1) 圧倒的な運用効率

焼却施設では24時間の有人管理が一般的ですが、本施設は微生物が稼働主体であるため、夜間は無人となります。実際のスタッフは社員4名とパート1名の計5名という驚異的な少人数体制であり、労働力不足時代における地方自治体の運営モデルとして極めて高い示唆を与えています。また、配線を守るための「保護猫」の活用といった民間らしい柔軟な現場管理も、その生産性を支えています。

 

(2) 事業の安定性とリスク分散

三豊市との契約では、人口減少に伴う一般ごみの減少リスクに備え、産業廃棄物の併用受け入れを認めています。これにより、処理量と熱量を安定させ、民間の事業継続性を確保しています。これは「行政がすべての責任とコストを負う」という従来の発想から、「民間が自律的に収益を上げる仕組みを行政が支援する」という、新しい官民連携の形を示しています。

 

6. 社会システム的考察:18分別という「資源の質」への投資

三豊モデルを技術・経営面から完成させているのは、市民による「18分別」という社会インフラです。

 

(1) 出口戦略としての品質管理

生成される固形燃料は、製紙会社等で石炭の代替燃料として売却されます。この「売れる資源」を作るためには、塩化ビニール(PVC)や金属、薬剤などの混入を徹底的に排除しなければなりません。光学選別技術による除去も行われていますが、その根幹は市民による排出段階での高い分別意識に支えられています。

(2) 環境教育と価値の共有

三豊市では小学4年生の社会科見学などを通じ、分別の意義を「義務」から「価値の創造」へと転換させる教育を継続しています。自分たちの分けたごみが年間1万トンのCO2削減に寄与しているという定量的な成果を共有することで、市民の自発的な協力を引き出しています。これは、廃棄物行政が「物理的な処理」だけでなく「市民の意識変容」を伴う社会デザインであることを証明しています。

7. 総括:地方分散型・非焼却モデルが示す未来

視察を通じて得られた最大の考察は、環境省が推奨する「大規模・広域化・集約化」という方向性だけが正解ではないということです。

三豊市の事例は、1日30トン規模の小規模な施設であっても、民間の知恵と市民の協力を統合すれば、焼却炉を持たずに持続可能な廃棄物処理が可能であることを示しました。これは以下の三点において、現代の自治体経営に重要な問いを投げかけています。

  1. 脱炭素への最短距離: 焼却によるCO2排出を回避し、石炭代替燃料を作ることで二重の削減効果(年間1万トン)を生む本方式は、2050年カーボンニュートラルへの現実的な回答です。
  2. 財政の健全化: 巨額の起債を伴う公設焼却炉に比べ、民間の資金と事業性を活用する民設民営モデルは、自治体の財政リスクを劇的に低減させます。
  3. レジリエンスの向上: 大規模施設への依存は、災害時や事故時のリスクを集中させます。三豊市のような分散型の「資源化拠点」は、地域社会の強靭性を高めることにつながります。

8. 結論

三豊市「バイオマス資源化センター」は、単なるごみ処理施設ではなく、地域社会が「資源をどう定義し、未来をどう描くか」という思想の物理的表現です。 「燃やさない」という決断から始まったこのモデルは、技術的な合理性と経営的な柔軟性、そして市民の誇りによって見事に結実しています。今、すべての自治体に求められているのは、既存の「焼却」という固定観念を排し、三豊市が示したような、地域の持続可能性を最大化する「資源循環システム」への大胆な挑戦であると確信します。

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日高 ちほ

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