徳島市立図書館(はこらいふ図書館)における指定管理者制度の戦略的運用と地域連携に関する調査
三郷市議会 創政MISATO
佐藤 裕之
高橋 誠一
日髙 千穂
鈴木 優作
1. 視察の概要
- 視察先: 徳島市立図書館(徳島県徳島市元町1丁目24番地 アミコビル内)
- 視察日時: 2026年5月11日
- 視察目的: 本市が推進する「日本一の読書のまち」推進事業の質的向上を目指し、駅前立地という利便性を背景とした集客戦略、および指定管理者制度を用いたサービス品質の担保と地域連携の具体的手法を調査・分析すること。
徳島市立図書館は、平成24年4月に旧施設の狭隘化と立地課題を解消するため、駅前の商業ビル(アミコビル)内へ移転・リニューアルオープンしました。延べ床面積は約3,400平米(旧館の約3倍)、蔵書能力は約50万冊(約2倍)へと大幅に拡充されています。民間事業者のノウハウを活用した指定管理者制度の導入から18年目を迎え、商業施設との共生を図りながら専門性の高いサービスを維持している点は、本市の次期施策立案において極めて重要な示唆を与えるものです。

2. 視察の背景と目的:三郷市「日本一の読書のまち」の更なる深化
本市では、2013年の「日本一の読書のまち」宣言以来、環境整備に注力してきましたが、現在は「市民の日常的な読書習慣の定着」という質的深化のフェーズにあります。
徳島市立図書館が掲げる基本コンセプト「人と文化が出会う駅前図書館」は、単なる資料の貸出に留まらず、学習や情報交流の核としての機能を重視しています。その成果を顕著に示す指標として、学習席(社会人席・会議室開放席)の利用状況が挙げられます。令和3年度の2,391利用に対し、令和7年度(見込み)には4,064利用へと大幅な増加が予測されており、滞在型図書館としての確固たる地位を築いています。駅前移転後の来館者数(平成24年度:58万人超)の飛躍的向上を支える「サービス設計の妙」を解明することが、本視察の主たる目的です。



3. 指定管理者制度の戦略的仕様と品質担保の具体策
徳島市では、指定管理者(株式会社図書館流通センター)との契約において、極めて具体的な数値と活動要件を仕様書に盛り込むことで、公の施設としての公共性と専門性を厳格に担保しています。
- 司書比率と専門職配置の義務化: 仕様書において「司書比率60%以上」を義務付けているだけでなく「再委託の原則禁止」を明記しています。これにより、現場の責任体制を明確にし、質の高い専門サービスを直接提供できる体制を構築しています。
- サービス実施の定量的要件と「仕様書上の義務」: 「毎日2回のおはなし会(午前・午後各30分)」の実施を、運営主体の裁量ではなく「契約上の義務」として設定しています。活動頻度を明文化することで、管理運営のコスト削減によるサービス低下を未然に防ぎ、子どもの読書習慣形成を組織的に支えています。
- 安定した資料費の確保: 仕様書内に「年間図書購入費の最低額」を設定しており、指定管理期間中であっても蔵書の鮮度と質が維持される仕組みを導入しています。
-
ボランティア連携による人材育成サイクル: 職員とボランティアの役割分担を明確にし、以下の好循環を生み出しています。
- 幼少期におはなし会に参加した子どもが、中学生の職場体験やボランティアとして回帰。
- ボランティア経験が司書を志す契機となり、専門職としての進学・就職につながる事例を創出。
- ボランティアと協力した絵本ブックリストの作成による、地域一丸となった読書推進。


4. 専門性の追求:レファレンスサービスの「量から質」への転換
同館の最大の特徴は、レファレンス(調査相談)サービスの卓越した質にあります。
- 具体的成果: 国立国会図書館「レファレンス協同データベース」への積極的な参画と登録実績が評価され、これまでに計10回の感謝状を受領しています。
- 評価軸の高度化: 以前は年間約2,000件という「受理件数(量)」を重視していましたが、現在は「本の所在確認」等の簡易な問い合わせと、高度な調査が必要な「踏み込んだ調査回答」を厳格に精査しています。その結果、現在は年間100〜200件程度の「質の高いレファレンス」に注力し、市民の課題解決に直結する回答を提供する体制へと転換を図っています。
- 組織的な知見の蓄積: 平成26年度から継続している専門研修により、司書のスキルアップを常態化させています。個人の能力に依存せず、組織として回答の品質を担保する仕組みが、全国的な高評価に繋がっています。
5. 地域連携の「出口戦略」:イベントから貸出への接続
同館では、多角的な機関と連携したイベントを、単なる「賑わい」で終わらせず、確実に「実貸出数」へ繋げる「出口戦略」を徹底しています。
連携実績の概観(主要事例)
| 連携先 |
具体的な連携内容 |
| 徳島大学附属図書館 |
連携協定に基づき、館内に「徳島大学コーナー」を常設。 |
| 徳島ヴォルティス |
選手による推薦本展示、メッセージ・試合結果の掲示。 |
| 徳島地方法務局 |
相続講座の毎年開催。 |
| 徳島県信用保証協会 |
女性経営者向け講座の実施。 |
| 徳島市消防局・JR四国 |
親子体験イベント、講話、鉄道史の紹介。 |
貸出誘導への徹底した執念
イベント実施時には、以下の行動フローを標準化し、専門職としての知見を発揮しています。
- 事前準備: イベントテーマに関連する資料の「副本(複本)」をあらかじめ購入・確保し、貸出集中による欠品を防ぐ。
- 資料展示: 関連資料を会場近接箇所に即座に展示し、手に取りやすい動線を確保する。
- 情報提供: 「徳島関連テーマ」や「ビジネス支援」に特化したパスファインダー(調べ方案内)を配布し、興味を書架へ誘導する。
6. 施設立地のリスク管理と運営上の課題分析
駅前・商業ビル内立地には、本市にとっても反面教師とすべき構造的・環境的課題が存在します。
- 構造的制約: ビル型施設特有の「床荷重制限」により、書架の自由な増設や大幅なレイアウト変更が困難です。書架がこれ以上増やせない中で、照明や背表紙の見せ方といった「運用の工夫」による視認性向上が課題となっています。
- 核テナント撤退による影響: かつての核テナント「そごう徳島店」の撤退により、ビル全体の回遊性が低下しました。その後「高松三越」が入居したものの、依然として空きスペースが残るなど、周辺環境は厳しい状況です。このため、図書館自体が単独で人を呼び込む「集客装置(アンカー)」としての役割をより強く求められています。
- アクセシビリティとコスト: 専用駐車場を保有しておらず、近隣の有料駐車場に依存している点は最大の弱点です。利用者からの無料化要望は強く、駅前立地における「車社会への対応」は本市の施設検討においても極めて重要な検討事項です。



7. 三郷市への具体的提言
徳島市立図書館の視察成果に基づき、本市の「読書のまち推進事業」の高度化に向け、以下の4点を提言します。
- 「質的KPI(重要業績評価指標)」の導入と評価手法の確立: 入館者数等の量的指標に加え、イベント参加者が実際に資料を借りた割合を示す「貸出転換率」や、レファレンスの解決率を評価指標に加え、特に貸出転換率は、配布したブックリストの回収率や当日貸出実績から算出する手法を確立し、施策の有効性の検証を提言します。
- ICT(AI顔認証等)による属性分析の先行実施: 徳島市では現在、入館者ゲートはあるものの「性別・年代」等の属性分析までは至っていません。本市においては、ICT技術を先行導入し、データに基づいた精緻な選書・企画運営(EBPM:証拠に基づく政策立案)の実施を提唱します。
- 読書通帳等の付加価値サービスの持続可能性検討: 徳島市で導入されている「読書通帳」は、機器導入費用と年間リース料約22万円を要しています。本市での導入に際しては、費用対効果を精査した上で、利用の定着を図るために「一通100円程度の利用者負担金」を設定するなど、持続可能な運営スキームを検討を提唱します。



8. 結びに代えて
本視察を通じて得られた最大の知見は、図書館の真の価値は蔵書数という「ストック」ではなく、司書の専門性と地域連携によるフローの質によって決定されるという点です。指定管理者制度下であっても、明確な仕様設定と継続的な人材育成により、全国トップレベルの専門性を維持できることは、徳島市立図書館が証明しています。
三郷市議会議員として、今回得られた知見を今後の予算編成や政策審議に厳格に反映させ、「日本一の読書のまち」が市民の知的創造と地域活性化に真に寄与するよう、エビデンスに基づいた政策立案に邁進する所存です。