2026/8/19
ねえ9回。

プロ野球選手にとって名球会入りは超一流の証しである。現在の入会資格は野手が日米通算2000安打、投手が200勝または250セーブ。ところが今、投手の250セーブという基準を巡って議論が再燃している。きっかけは、8月4日にロッテの益田直也が史上5人目となる通算250セーブを達成したことだ。これを受け、上原浩治氏が「300とか350に上げてもいい」と発言した。確かに先発投手が200勝を挙げる難しさと抑え投手が250セーブを積み重ねる難しさは単純には比較できない。だからといって250を300、350へ引き上げれば問題が解決するわけではない。そもそも250セーブは決して容易な記録ではない。NPBの通算セーブ記録を見ると250以上を達成しているのは岩瀬仁紀、高津臣吾、佐々木主浩、平野佳寿、益田の5人に過ぎない。250セーブは簡単な記録と切り捨てられるような数字ではないのである。問題は数字そのものよりも現在の名球会の制度が分業制の進んだ現代野球を十分に評価できていないことではないか。かつての投手は先発して完投し、勝利を積み重ねることが大きな役割だった。しかし現在は、先発、中継ぎ、セットアッパー、クローザーへと役割が細分化されている。にもかかわらず、200勝と250セーブという二つの数字だけでは中継ぎ投手の長年にわたる貢献を評価できない。そこで検討すべきなのが、投手の実績を複数の指標で評価する新しい仕組みである。例えば、200勝は維持した上で250セーブを300セーブにする。そして新たに400ホールドを加える。さらに2000投球回に加えて一定の勝利、セーブ、ホールドを記録した投手も対象にする。これなら先発、中継ぎ、抑えという異なる役割をそれぞれの実績に応じて評価できる。さらに一歩進めるなら、勝利、セーブ、ホールドをポイント化する方法もある。例えば勝利、セーブ、ホールドにそれぞれ異なる係数を設定し、一定の総合ポイントに達すれば資格を得られるようにする。こうすれば、先発から救援へ、あるいは救援から先発へと役割を変えた投手も正当に評価できる。
名球会が評価すべきなのは特定のポジションで数字を積み上げたことだけではない。長い年月にわたり一軍の第一線でチームに貢献し続けたことこそ名球会の「名球」の価値ではないだろうか。今回の議論を「250セーブは緩いから300セーブにしよう」という単純な数字の競争に終始しない方が良い。野手の2000安打に対して、投手だけが勝利数、セーブ数という役割別の指標に依存する現在の制度そのものを見直す時期に来ている。特例で救済しなければならない選手が生まれることも制度の不備を示す一つのサインである。個々の選手を特例で救うのではなく最初から現代野球の実態に即した公平な基準を設けるべきだ。
名球会は過去の野球を記念するだけの組織ではない。現代野球における超一流とは何かを示す存在でもある。だからこそ必要なのは250を300にするだけの小手先の改定ではない。200勝、セーブ、ホールド、投球回などを横断して長期間にわたる投手の価値を総合的に評価する制度への再設計である。「誰が名球会に入れるか」ではなく、「何をもって超一流と認めるのか」。そのことが議論の原点である。
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