2026/6/7
ぎじゅちゅ。

世界の技術覇権争いが激しさを増している。米国はAIとプラットフォーム、中国は国家主導の巨大投資で存在感を誇示する。一方の日本は派手な覇権競争の中心にはいないが劣後しているわけではない。むしろ日本は世界の産業を成立させる不可欠な基盤技術を握ることで独自の優位性を築いている。
半導体分野では最先端ロジックそのものではなく材料や装置で世界の根幹を支えている。東京エレクトロンやSCREENホールディングスといった企業は製造工程に不可欠な装置で高い国際競争力を持つ。さらに電子材料や高機能素材においても東レに代表される企業群がサプライチェーンの要所を押さえている。同様にロボットと自動化も日本の基盤的優位を示す分野だ。ファナックや安川電機は製造業の生産性そのものを規定する存在であり、人手不足とコスト上昇に直面する世界経済において需要はむしろ拡大する。ここでも日本は完成品ではなく生産の仕組みを握っている。
新たな成長領域において日本はどのような立ち位置を確保できるのか。第一に挙げるべきはAIである。米国の巨大IT企業が先行するのは否定できないが、日本はセンサーやエッジデバイスで強みを持つ。ソニーのCMOSセンサーに象徴されるように現実世界のデータを高精度で取得する技術はAI時代に不可欠だ。生成AIの時代であっても入力データの質が価値を左右する以上、日本の役割は決して小さくない。第二に、次世代エネルギーである。脱炭素の流れの中で水素や蓄電池の重要性は飛躍的に高まっている。トヨタ自動車が推進する燃料電池技術や全固体電池の研究はエネルギー構造そのものを変える可能性を秘める。エネルギー安全保障が国際政治の焦点となる中、この分野での主導権は国家戦略そのものに直結する。第三に、医療・バイオである。山中伸弥によるiPS細胞研究に象徴される再生医療は日本が基礎研究から応用まで優位を持ち得る数少ない分野だ。さらにオリンパスの内視鏡技術のように低侵襲・高精度という日本的価値は今後の医療の方向性とも合致する。
加えて、宇宙・量子といった新興分野でも基盤技術の蓄積は無視できない。宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とする探査技術や小型衛星に関わる精密部品は日本の得意分野と親和性が高い。量子分野でも材料・冷却・精密制御といった周辺技術での貢献余地は大きい。
日本の課題も明確である。第一に、統合力の不足である。優れた要素技術を持ちながら、それをプラットフォーム化し収益化する力では米中に後れを取る。第二に、リスクマネーの不足と意思決定の遅さである。先端分野ではスピードそのものが競争力であり、この点での構造的弱点は看過できない。日本は無理に覇権を目指すのではなく、代替不可能な技術領域を徹底的に強化すべきだ。半導体材料、精密機械、センサー、エネルギー、医療等を横断的に結び付け、国家としてサプライチェーンの中核を担う。その上で、AIや量子といった新領域では支配ではなく不可欠性を確保する。この立ち位置こそが日本の現実的な生存戦略である。世界が分断へと向かう時代において最も強いのは「誰もが必要とする技術」を握る国である。日本の先端技術はその条件を満たし得る数少ない存在だ。問われているのは技術そのものではない。それをどう位置づけ、どう使うかという意思である。
#東京エレクトロン #SCREENホールディングス #ファナック #CMOSセンサー
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