2026/7/11
「首長の退職金ゼロ」と聞けば、多くの人は「その分、税金の支出が減ったんやな」と受け止めると思います。
しかし、制度の中身まで見ると、話はそんなに単純ではありません。
今回取り上げるのは、大阪府吉村知事の「退職金ゼロ」と、八尾市・大松桂右市長の「退職金ゼロ」の違いです。
結論から言えば、同じ0円でも、仕組みはまったく同じではありません。

大阪府知事の退職手当は、条例上は実際に廃止されています。
この点だけ見れば、「退職金0円」は事実です。
ただし、2015年の制度改正では、廃止された退職手当相当額を給料月額へ復元し、その増額分は期末手当にも反映される仕組みに改められました。
つまり、
という制度です。
ここを外して「退職金ゼロ」だけを強調すると、あたかもその分の公費負担が丸ごと消えたかのように見えます。
しかし、実際の制度はそうではありません。

吉村知事や日本維新の会の発信では、しばしば、「1期4,000万円の退職金ゼロ」「3期で1億2,000万円ゼロ」といった強い表現が使われています。
ただ、この4,000万円という数字は、2012年の見直し前の古い水準に由来するものです。
2012年の時点で、大阪府知事の退職手当は本則上1,257万6,000円まで引き下げられていました。
そして2015年に実際に廃止され、給料へ組み替えられたのも、この1,257万6,000円相当です。
つまり、「4,000万円をゼロにした」という見せ方は、制度の実態をそのまま表したものではない、ということです。

制度改正前後の総額を比べると、本則ベースでは大きな差はありません。
退職手当をなくす代わりに、給料と期末手当へ移しているからです。
さらに、当時の特例減額まで反映した4年換算で見ると、改正後の総額は改正前より増えます。
したがって、「退職金をゼロにして、その分だけ歳出を削った」と単純には言えません。
ここは政治的なキャッチコピーではなく、制度として正確に見なければあきません。

これに対して、八尾市の大松桂右市長の退職金カットは仕組みが違います。
八尾市では、市長の退職手当制度そのものは残っています。
その上で、大松市長本人については不支給です。
しかも、退職手当相当額を給料へ付け替えた事実も確認できません。
つまり、
という整理になります。
さらに、大松市長は本則給料も30%減額しています。
2025年8月1日時点の中核市比較では、減額後の月額給料70万7,000円は全国で最も低い水準です。

ここで一番大事なのは、「退職金0円」という言葉だけでは制度の違いが見えないということです。
大阪府知事は
制度廃止+給料への組み替え
八尾市長は
不支給+給料への付け替えなし
同じ0円でも、中身は別です。

大阪府の公文書には、退職手当を廃止し、その相当額を給料へ復元したことが明記されています。
つまり、制度の実態自体が隠されているわけではありません。
問題は、政治的な発信の場面で「ゼロ」「4,000万円削減」「1億2,000万円削減」といった言葉だけが前面に出て、給料への組み替えが十分に説明されていないことです。
有権者が見るべきなのは、看板ではなく中身です。
「退職金ゼロ」という言葉に飛びつく前に、実際に何が廃止され、何が本当に支出されていないのかを確認する必要があります。
今回のような制度論や、八尾市政・大阪府政、地方自治の仕組みについては、YouTubeでも解説しています。
統計データや公的資料、議会活動の現場で得た視点をもとに、できるだけ分かりやすく発信していきます。
是非ご覧下さい。
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