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稲森 洋樹 ブログ

その政策、根拠ある?EBPMで考える自治体政策の現在地

2026/7/2

今回は、令和6年3月議会の一般質問で取り上げた、EBPM=Evidence Based Policy Making、事実に基づく政策立案について、改めて整理してお伝えします。

EBPMという言葉は少し難しく聞こえますが、考え方はシンプルです。

「なんとなく良さそう」
「昔からこうしている」
「声の大きい人が言っている」

こうした理由だけで政策を決めるのではなく、データや根拠に基づいて政策を立案し、実行し、検証していく。それがEBPMです。

行政の予算も人員も、当然ながら無限ではありません。
限られた税金と行政資源を使う以上、大事なのは「何をやったか」ではなく、その結果、市民生活にどんな成果があったのかです。

ここを見なければ、政策は単なる“事業の羅列”になってしまいます。

自治体政策立案に残る「前例」と「感覚」の限界

基礎自治体の政策立案では、どうしてもこれまでの経験や慣例に頼る場面があります。

もちろん、職員の経験や現場感覚は重要です。
行政実務を進めるうえで、現場を知っていることは大きな財産です。

しかし、それだけに依存すると、新しい社会課題や複雑化する地域課題への対応が遅れることがあります。

過去にうまくいった枠組みが、今も有効とは限りません。
時代も人口構造も、地域経済も、市民ニーズも変わっています。

だからこそ、これまでのやり方を前提にするのではなく、まず課題を正しく分析し、原因と結果の関係を見極める必要があります。

政策は「雰囲気」で打つものではありません。
社会課題に対する処方箋である以上、診断を間違えれば、当然、処方箋も間違います。

「弱いエビデンス」に頼っていないか

政策を考える際、審議会の委員の意見、専門家の意見、関係者の声などは重要です。

ただし、それらが個人の主観や立場に偏っている場合、事実に即した強固なエビデンスとは言えません。

自治体行政では、政治的な配慮、既存の関係性、過去の経緯、声の大きい人の意見が、政策判断に影響することもあります。

もちろん、市民の声を聞くことは大切です。
しかし、一部の声だけで全体像を見誤ってはいけません。

本当に必要なのは、客観的なデータや実際の成果を確認しながら、政策を検証する仕組みです。

八尾市の実施計画とKPIの課題

令和6年3月議会では、令和6年度予算案に対応する実施計画について質問しました。

私が問うたのは、八尾市の実施計画に掲げる成果指標、いわゆるKPIが、政策の効果や市民生活の質の向上、社会課題の解決といった明確なアウトカムに対応した目標設定になっているのか、という点です。

市からは、全34施策について、目指す暮らしの姿の実現に向けて、原則としてアウトカムを把握できる成果指標を設定している、という答弁がありました。

一方で、総合計画審議会でも、市民満足度のような観点を指標に落とし込むべきではないかという意見が出ており、後期基本計画に向けて、効果測定が適切に行える目標設定を研究・検討していくとの答弁もありました。

つまり、市としても、指標設定に課題があることは一定認識しているわけです。

「マニュアルを見直した」は成果なのか

当時の議会で私が具体例として取り上げたのが、学校危機管理マニュアルに関する指標です。

実施計画の中には、
「学校危機管理マニュアルの点検・見直しを実施した学校の割合」
という指標がありました。

もちろん、危機管理マニュアルの点検や見直しは重要です。

しかし、これはロジックモデルで考えると、あくまで行政活動です。
つまり「やりました」という話です。

本当に見るべきなのは、その結果として、学校での事故や事件が減ったのか、被害を最小化できたのか、子どもたちが安心・安全に学校生活を過ごせる環境になったのか、という成果です。

「マニュアルを見直しました」で終わってはいけません。
その結果、何が変わったのか。
そこまで追いかける必要があります。

産業政策の指標は何を測っているのか

もう一つ、産業政策に関する指標も取り上げました。

八尾市では、
「八尾市の産業が全国から注目されている」
という目指す姿に対して、
「産業分野に関わる関係人口の対基準年度比率」
という指標が設定されていました。

その中身を見ると、「みせるばやお」の来場者数、ふるさと納税の寄附件数、商店街イベントの参加者数などが合算されているという説明でした。

しかし、これは性質の違う数字が混ざっています。

来場者数、寄附件数、イベント参加者数。
それぞれ意味が違います。

それを一つにまとめたとき、結局、何を測れているのか。
市民から見て、その指標で政策の成果が分かるのか。

ここに課題があります。

政策の成果を測る指標は、できるだけ客観的で、事業や施策との関係が明確で、市民にも理解できるものであるべきです。

ロジックモデルで政策を考える

この議会で私が提案したのは、政策をロジックモデルに立ち返って考えることです。

行政資源である人員や予算を投入する。
それによって行政活動を行う。
その結果、何が生まれるのか。
さらに、それが市民生活にどんな成果をもたらすのか。
最終的に、社会にどんな影響を与えるのか。

この流れを整理するのがロジックモデルです。

場合によっては、右から左に逆算して考える必要があります。

まず、八尾市として何を実現したいのか。
税収を増やしたいのか。
現役世代人口を増やしたいのか。
昼間人口を増やしたいのか。
一人当たり医療費を抑えたいのか。

そうした市民にも分かりやすい大きな成果目標を掲げる。

そのために必要な結果は何か。
その結果を出すために必要な事業は何か。
その事業に必要な人員と予算は何か。

この順番で、政策や予算を考えていくべきではないかと提案しました。

縦割りを超えて、成果を共有する行政へ

人口や税収のような大きな指標は、単独の課や一つの部だけで達成できるものではありません。

だからこそ、複数の施策が一つの大きな目標に向かって動いていく必要があります。

縦割りでそれぞれの組織がバラバラにKPIを持つのではなく、市全体として何を達成するのか。
そのために各施策がどう貢献するのか。

この構造が見えれば、市民にとっても、市役所が何を目指しているのか分かりやすくなります。

職員にとっても、自分の仕事がどんな成果につながっているのかが見えやすくなります。

政策の見える化は、市民のためだけではありません。
行政組織の中で働く職員にとっても、仕事の意義を見える化するものです。

八尾市でも少しずつ進むデータドリブンな政策立案

この議論を受けて、現在の八尾市役所では、少しずつではありますが、データドリブンな政策立案に向けた動きが進んでいます。

具体的には、年次の実施計画を策定する際の要領の中で、統計データや公開データを活用すること、そしてエビデンスに基づく政策立案を意識して事業を構築することが、全庁に周知されています。

これは、まだ大きな制度改革というより、行政内部の意識づけの段階かもしれません。

しかし、政策を前例や感覚だけで組み立てるのではなく、根拠を確認し、成果を意識して事業を設計していく。
その方向に市役所全体が少しずつ動き始めているという点は、非常に重要です。

「何をやったか」ではなく「何が変わったか」

EBPMは、単に「データを使いましょう」という話ではありません。

政策を立案するときに、根拠となる情報を確認し、その政策によって何を実現したいのか、どのような効果を見込むのか、投入する予算や人員に対してどれだけの成果が期待できるのかを整理する考え方です。

税金を使う以上、行政は説明責任を負います。

「会議をしました」
「研修をしました」
「マニュアルを見直しました」

それだけでは不十分です。

その結果、市民生活にどんな成果があったのか。
地域の課題解決にどうつながったのか。
次の政策改善にどう活かすのか。

ここまで説明できる行政にしていく必要があります。

政策は、看板やスローガンではなく、社会課題への処方箋です。

だからこそ、課題を正しく分析し、根拠に基づいて政策を立案し、成果を検証する。
この当たり前を、自治体行政の中で徹底していくことが、これからの基礎自治体に求められる姿だと考えています。

YouTubeでも市政・地方自治について発信しています

今回のような八尾市政の議論の紹介、大阪府政、地方自治の仕組みについては、YouTubeでも解説しています。

統計データや公的資料、議会活動の現場で得た視点をもとに、できるだけ分かりやすく発信していきます。

是非ご覧下さい。

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著者

稲森 洋樹

稲森 洋樹

選挙 八尾市議会議員選挙 (2023/04/23) [当選] 3,462 票
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肩書 八尾市議会議員
党派・会派 無所属
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