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山口 だいすけ ブログ

「廃用身」から介護のことを考える

2026/6/16

先日、ある方から「この映画見ましたか?」と声をかけられました。

タイトルは『廃用身』。

久坂部羊さんが2003年に発表した小説が原作で、2026年に映画化された作品です。残念ながら僕が知った時には地元での上映は終わっていました。それでもあらすじを読んだ瞬間、「これは見なければいけない作品だ」と感じました。

物語の舞台はデイケア施設「異人坂クリニック」。

医師の漆原は、脳梗塞などで麻痺し、回復の見込みがない手足を「廃用身」と呼び、その部位を切断する治療法を考案します。動かない手足への違和感から解放される。体重が軽くなることで介護負担も減る。さらに認知症やうつ症状の改善まで見られる。「Aケア」と名付けられたその治療法は、高齢化社会を救う新たな医療として注目を集めていきます。

しかし当然ながら世の中はそんなに単純ではありません。

内部告発。世論の批判。そして患者が起こした事件。物語は医療、介護、倫理、家族、そして社会全体を巻き込みながら大きく揺れていきます。

何が正しくて、何が間違っているのか

この作品を知って最初に驚いたのは、これが2026年の話ではなく、2003年に書かれた作品だということでした。

23年前です。

介護保険制度が始まったばかりの時代に、すでにここまで踏み込んだ問いを投げかけていたことに驚かされました。ちなみに「廃用身」という言葉は医療用語ではありません。実際には「廃用性症候群」や「廃用肢」という言葉はありますが、「廃用身」はこの作品の中で使われた表現です。

だからこそ強烈でした。

人はどこからが不要になるのか。その問いを真正面から突きつけてくるからです。介護現場にいた人であれば、おそらく多くの人が一度は考えたことがあるテーマではないでしょうか。

本人の苦痛。
家族の負担。
介護職やケアマネジャーの負担。
医療費や社会保障費。

それぞれの立場から見れば、「Aケア」に賛成する人も決して少なくないと思います。むしろ合理的だと感じる人もいるかもしれません。

ですが僕はそこで立ち止まってしまいます。

もし手足が廃用だから切除してもいいという考え方が広がった時、その先にあるものは何だろうか。やがて命そのものまで「廃用」と判断される未来はないのだろうか。

誰がそれを決めるのだろうか。
本人なのか。
家族なのか。
医師なのか。
行政なのか。
社会なのか。

考えれば考えるほど簡単に答えを出してはいけないテーマだと思うのです。

僕の原点

大学時代、福祉を学んでいた頃によく議論した言葉があります。「当事者の思いを支援者が奪ってはいけない」という考え方です。

支援者が善意で決めたことが、本当に本人の幸せとは限らない。だからまず本人の思いを聞こう。本人の意思を尊重しよう。そんなことを何度も学びました。

振り返ると、この考え方は今の僕の福祉観だけでなく、政治家としての原点にもなっています。

行政が決める。政治家が決める。専門家が決める。そうではなく、まず当事者の声を聞くこと。

それが大切だと思っています。

しかし最近は別の問いも浮かびます。では、当事者の思いであれば全て正しいのか。本人が望めば何でも認めるべきなのか。本人の選択が、周囲の人や社会に大きな影響を与える場合はどう考えるのか。この問いに対して、僕はまだ答えを持っていません。

思えばこの30年間、大学で福祉を学び、福祉職に付き、政治家をするなかでまだ考えています。

恐れずに議論していきたい

介護の世界では、ともすると正解探しをしてしまいます。しかし本当に大切なのは、正解を決めることではなく考え続けることなのかもしれません。何が正しくて、何が間違っているのか。

立場が変わるとすべて変わる。

利用者の立場。家族の立場。介護職の立場。医師の立場。行政の立場。そして社会全体の立場。どの立場にも、それぞれの正しさがあります。

だからこそ支援者と当事者、そしてそれを取り巻く全ての立場の人たちが、恐れずにこの議論を続けていかなければならないと思います。

答えを出すためではありません。答えを出してしまった時に見落としてしまうものがあるからです。

もしかするとこれは、一生をかけて悩み続けるテーマなのかもしれません。それでも考えることをやめてはいけない。

『廃用身』という作品は、そんなことを僕に問いかけているように感じました。

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著者

山口 だいすけ

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