2026/7/8
6月11日の民生文教常任委員会では、所管事務調査として「中学校の部活動について」の報告を受けました。会議資料はこちら。
芦屋市では、中学校部活動の地域展開に向けた取り組みが進められています。これまで学校の中で行われてきた部活動を、地域クラブという形に移していく取り組みです。
教員の働き方改革という観点から、これまでの部活動のあり方を見直す必要があることは理解しています。特に、休日部活動や長時間の指導を教員の善意や自己犠牲に依存してきた仕組みには限界があります。その意味で、部活動の地域展開という方向性そのものを全否定するものではありません。
今回の報告を聞いて、部活動の地域展開そのもの以上に、制度の進め方や説明の粗さに危うさを感じました。
部活動は、単なるスポーツ・文化活動ではありません。学習指導要領上は教育課程外の活動とされていますが、教育課程外だからといって学校教育と無関係な活動だったわけではありません。
平成20年3月告示の中学校学習指導要領の総則の中で、「生きる力」を育む観点から、学校の教育活動の一環として教育課程との関連が図られるよう示されています。
(13) 生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化及び科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,地域や学校の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。
つまり、部活動は授業そのものではないものの、学校生活の中で教育的な意味を持つ活動として取り扱われてきました。
だからこそ、部活動の地域展開は、単に学校外のクラブ活動を増やす話ではありません。これまで学校の教育活動の一環として扱われてきたものを、地域の中でどのように受け止め直すのかという問題と言い換えられると思います。
資料では、令和8年5月1日時点の3中学校の部活動入部率が示されています。
全体の加入率は66%です。参考として示された令和7年度の加入率は76%でした。特に1年生については、令和7年度の81%に対し、令和8年度は61%となっています。つまり、昨年度よりも入部率が下がっています。
もちろん、年度や学年によって差が出ることはあります。また、地域クラブへの移行期であるため、子どもや保護者が様子を見ている可能性もあります。しかし、この数字は丁寧に分析する必要があります。単に「移行期だから」で片づけてよい話ではありません。
子どもや保護者が新しい仕組みに慎重になっているだけなのか。それとも、学校外の活動になるなら参加しない、という形で部活動そのものから離れてしまっているのか。この二つは意味が大きく異なります。
前者であれば、情報提供や運営体制の安定によって、今後改善していく可能性があります。しかし後者であれば、これまで学校生活の中にあった部活動の機会を失ったまま、中学校生活を過ごす生徒が出てしまう可能性があります。
中学生にとっての3年間は非常に短いです。行政にとっては制度移行の数年間であっても、子どもたちにとっては二度と戻らない中学校生活の1年です。「走りながら改善する」だけでは済まない部分があります。
地域クラブ化を前向きに受け止め、積極的に参加する生徒にとっては、新しい選択肢が広がる取り組みになるかもしれません。学校の枠を超えた、より多様な活動に触れられることや、より専門的な指導を受けられるなど、彼らにとってもメリットは大きいと思います。
しかし、すべての生徒が能動的に活動を選び、学校外のクラブへ参加できるわけではありません。
公立中学校の部活動は、競技力や技術の向上を目指して真剣に取り組む部活動もありますが、必ずしも大会やコンクールにすべてを注いで全力で取り組むものばかりではありません。
友達と一緒に放課後を過ごす、学校に残る理由になる、ゆるやかな人間関係をつくるという役割もあったと思います。より高みを目指して頑張ることもそうですが、友人と過ごす時間そのものが、子どもたちにとっては大切な時間だと思います。
地域クラブになることで、「自分で選んで申し込む活動」という性格が強くなります。積極的な生徒は参加するかもしれません。しかし、そこまで強い目的意識がない生徒、保護者が慎重な家庭、移動や費用に不安がある家庭は、制度の変化の中でこぼれてしまう可能性があります。
特に今回は公立中学校の部活動の話です。どんな生徒であっても等しく受け入れる立場の学校の話です。部活動の地域展開において重要なのは、積極的に参加する生徒だけを見ることではないと思います。そうではない生徒が置いてきぼりにされていないかを確認することも同じく重要だと思います。
学校の放課後の居場所を失ってしまう生徒は本当にいないのか。いい面ばかりが注目されがちですが、注目されづらい部分こそしっかりと確認する必要があります。
今回の報告では、地域クラブの活動支援や事務支援を担う中間支援団体についても説明がありました。
委託先は、特定非営利活動法人芦屋市スポーツ協会です。
この中間支援団体は、単なる事務局ではありません。
資料では、主な業務内容として、地域クラブの登録情報の管理、学校施設の利用調整、相談窓口の設置・運営、現場対応、指導者研修、地域クラブの参入促進、広報活動などが挙げられています。つまり、子どもたちの放課後の活動を支える基盤となる業務です。これまで学校部活動として、教育に準ずる形で扱われてきた活動を地域に移していくうえで、非常に重要な役割を担います。
ですが、この話は令和8年2月19日の民生文教常任委員会における委員の質問に対する答弁として、「必要性は認識しており、検討している」という趣旨にとどまっていました。教育的に非常に重要なポストでありながらも、議会に対して十分に事前整理された形で示されていたとは言い難いと感じます。
さらに気になるのは、契約に関する資料の出し方です。
資料では、この委託業務について、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号に基づく随意契約であることが示されています。また、選定方法については「見積合せの結果、最低価格を提示した者」と記載されています。
しかし、資料には契約金額が記載されていません。随意契約であり、しかも最低価格で選定したというのであれば、その金額がいくらなのかは当然示されるべきです。
予定価格はいくらだったのか。他の見積額とどの程度の差があったのか。その金額で、相談窓口、現場対応、指導者研修、施設利用調整などの業務を十分に担えるのか。これらを確認できなければ、選定の妥当性を判断することはできません。
地方自治法上、委託契約については市長の専決事件とされており、議決事件ではありません。よって、報告義務がないものであるとは言え、報告資料としては雑な部分があったと感じます。
委員会では、委員から重要な指摘もありました。
子どもたちの活動に関わる業務を、金額だけで決めてよいのかという指摘です。
今回の業務は、単なる物品購入や定型的な事務委託ではありません。子どもたちの安全、保護者対応、指導者研修、地域団体との関係づくり、相談対応などに関わる業務です。
もちろん、行政契約において価格は重要です。しかし、部活動の地域展開を支える業務については、価格だけでなく、安全管理、指導者の質、保護者対応、地域との関係性、継続的な運営体制なども評価すべきではないでしょうか。
市からは、来年度以降の契約期間や選定方法について検討するとの答弁がありました。しかし、子どもたちにとって、その1年は貴重な1年です。
行政にとっては「初年度なので、来年度以降に改善する」という話かもしれません。しかし、その年度を過ごす生徒にとっては、後から取り戻せない時間です。だからこそ、初年度からもっと事前に精査しておくべきだったのではないかと感じます。
今回の資料では、あし☆スタの部員募集について、ホームページ、広報紙、広報番組、Web広告を活用して周知することも示されています。Web広告については、LINE、YouTube、TikTokを活用し、親世代と子世代に配信するとのことです。
広報を強化すること自体は必要です。地域クラブに移行するのであれば、保護者や生徒に対して丁寧に情報を届ける必要があります。
しかし、市ホームページ上の「あし☆スタ」の見せ方を見ると、部活動の地域展開という制度変更の説明というより、新しい商材やサービスの広告のようにも見えてしまいます。
「キミのワクワクはここから!」「メンバー大募集!」といった見せ方は、明るく親しみやすい一方で、部活動の地域展開が持つ重みや、保護者が知りたい情報には届きにくいのではないかと感じます。
大事なのは「あし☆スタ」という名前を知ってもらうことではありません。どのようなクラブがあり、どこで活動し、誰が指導し、費用はいくらで、安全管理や責任の所在はどうなっているのか。困った時はどこに相談すればよいのか。
保護者や生徒が知りたいのは、そうした具体的な情報です。
また、この広告はAI生成と思われる形になっています。近年、AI生成と思われるイラストを使った広告は増えています。AIを使うこと自体を否定するものではありません。しかし、実際の活動内容や制度の説明が十分でないまま、抽象的で汎用的なイメージだけが前面に出ると、かえって事業の実体が見えにくくなります。
部活動の地域展開は、単なる新サービスの宣伝ではありません。子どもたちの放課後の活動をどう支えるのかという教育的な取り組みです。だからこそ、広告表現についても、実際の活動や保護者の不安に即した具体性が必要ではないかと思います。
今回の報告全体を通じて感じたのは、中学校部活動が学校から離れていくことへの危うさです。
私立学校では、今後も学校の魅力づくりとして部活動を維持・強化していくところもあるでしょう。一方で、公立中学校では、教員の働き方改革や体制上の限界から、部活動が地域へ移っていく。そうした中で、学校生活の厚みに差が出てしまうのではないかという懸念もあります。
もちろん、これまでの部活動をそのまま続けることが難しいことは理解しています。教員の負担軽減は避けて通れません。しかし、だからといって、部活動が学校生活の中で果たしてきた役割まで軽く扱ってよいわけではありません。
部活動は、競技力や技術の向上だけでなく、子どもたちの居場所でもありました。地域クラブ化によって、その時間が失われていないか。積極的に参加できる生徒だけが残り、そうではない生徒が学校の放課後からこぼれていないか。ここは丁寧に見ていく必要があります。
今回の報告については、委員会でもさらに踏み込んだ確認が必要だったと感じます。
特に、以下のような点についてはもっと厳しく確認があっても良かったと思います。
部活動の地域展開そのものを全否定するものではありません。しかし、制度の走り出しだからこそ、契約の透明性、選定基準の妥当性、保護者や生徒への説明、加入率低下の分析、広報のあり方については、もっと丁寧であるべきです。
行政にとっては試行錯誤の1年でも、生徒にとっては戻ってこない中学校生活の1年です。この視点を忘れず、今後も確認していきたいと思います。
市民のみなさんの声が市政をより良くするヒントになります。今回のテーマに限らず、市政全般についてのご意見をお聞かせください。匿名で投稿できますので、ぜひこちらのフォームからお寄せください。
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>大原 ゆうき (オオハラ ユウキ)>中学校部活動の地域展開。制度の走り出しだからこそ丁寧な説明と検証が必要ではないか