山本 ひろこ ブログ

珠洲市視察報告-能登半島地震からの復興現場で感じたこと

2026/6/22

珠洲市視察報告

能登半島地震からの復興現場で感じたこと

令和6年能登半島地震、そして同年9月の豪雨災害。
二重の被害を受けた珠洲市を視察してきました。

今回は、珠洲市長・副市長から、復興の現状と課題について直接お話を伺う大変貴重な機会をいただきました。復興現場や、元学校を再生したレストラン、市役所おすすめの「すずなり食堂」などにもご案内いただき、現地でしか分からない多くのことを学びました。

【写真①:珠洲市役所での視察・説明の様子】


2軒に1軒が解体された被害の大きさ

まず強く印象に残ったのは、被害の大きさです。

珠洲市では、2軒に1軒が解体されるほどの被害がありました。マンホールが隆起している場所もあり、地上から見える被害だけでなく、地中の下水管なども大きくうねっているとのことでした。

復旧工事も簡単には進みません。建物の7割、土木工事の5割で入札不調が起きており、工事を担う人材や資材の確保が大きな課題です。金沢から能登までは片道約2時間かかるため、建築費は金沢の1.5倍ほどになるとも伺いました。

さらに、令和6年1月1日の地震に続き、9月20日には豪雨災害も発生しました。仮設住宅でも220戸が床上浸水し、土砂に埋まった場所では片付けだけでなく殺菌も必要になります。一度被災した地域に、さらに災害が重なる厳しさを、現地で改めて実感しました。

【写真②:被災・復興現場の様子】あちこちの山が削られていてジオパークのようでした。


避難所で見えた課題

避難所運営についても、多くの課題がありました。

指定避難所26か所のうち、実際に使えたのは15か所。道路の寸断により、指定避難所までたどり着けない地域もあり、地区集会所や農業用倉庫など、指定避難所以外の79か所も避難所として扱われました。合計で94か所もの避難所が生まれたことになります。

一番困ったのは「情報の錯綜」だったそうです。
「あそこで人が倒れている」「あちらで物資が足りない」と、さまざまな情報が次々に持ち込まれ、行政が右往左往する場面も多かったとのことでした。

また、物資の受け取りに来るのは男性が多く、女性用の生理用品などがどこにあるのか分かりにくいという課題もありました。ペット連れや要介護者を連れた方は車中泊を選ぶケースも多く、後にペット同伴専用スペースや、仕事中にペットを預かるトレーラーも設けられたそうです。

避難所は、ただ人を受け入れる場所ではありません。女性、子ども、高齢者、障がいのある方、ペット連れの方など、多様な事情を前提に設計する必要があります。


通信・NPO・地域コミュニティの力

通信の課題も大きなものでした。携帯電話の基地局は、発災後3日ほどは備蓄燃料で動いていたものの、4日目以降は通信断になったそうです。その中で大きな役割を果たしたのがStarlinkでした。

また、珠洲市内にはもともとNPOがほとんどありません。しかし、前年の令和5年5月にも地震があり、その時点で支援に入っていたNPOとの「顔の見える関係」ができていました。そのため、令和6年1月1日の地震直後にも、1月2日には専門ボランティアが駆けつけてくれたそうです。

重機、食料調達、瓦礫作業まで自己完結できる団体の存在は、災害時に非常に大きな力になります。行政ではすぐに動かせない道路上の家具などを敷地内に寄せ、通行できるようにするなど、現場で必要な対応を担ってくれました。平時から信頼できる団体を把握し、連携しておくことの重要性を強く感じました。

もう一つ印象的だったのが、地域コミュニティの強さです。珠洲市は10地区、その下に160の集落があり、それぞれに集会所やお宮、祭りがあります。町内会にはほぼ全員が参加し、普段から集まり、煮炊きをし、祭りを行う。そうした日常のつながりが、災害時に大きな力になっていました。

特に、祭りの再開がコミュニティ復興のモチベーションになるというお話は、とても心に残りました。

【写真③:元学校を再生したレストラン】


復興はインフラだけではない

復興は、道路や建物を直すことだけではありません。

震災後、子育て世代が大きく流出したことも深刻な課題です。住宅、仕事、学校、子どもの居場所、買い物環境。暮らしを支えるものが一度に失われると、若い世代ほど地域に残ることが難しくなります。

一方で、COMPLEXの復興ライブによる寄付金を活用し、元倉庫を子どもたちの居場所やアーバンスポーツ施設として整備した事例も伺いました。民間の力が加わることで、行政だけでは難しいスピード感が生まれることを実感しました。

今回の視察で改めて感じたのは、災害対応は「発災後に考えるもの」ではなく、日常の地域づくりそのものだということです。

通信手段、避難所運営、ペット対応、女性への配慮、物資配布、専門ボランティアとの連携、地域コミュニティづくり。どれも、平時から準備しておかなければ、いざという時には機能しません。

都市部である目黒区は、珠洲市とは地域条件が大きく異なります。一方で、道路閉塞、避難所の過密、情報の錯綜、要配慮者対応、地域のつながりの希薄化など、共通する課題も多くあります。

日常のつながりを、災害時の力に変える。
その視点を、目黒区の防災にも活かしていきたいと思います。

最後に、厳しい状況の中で丁寧にご説明くださった珠洲市長、副市長、市役所の皆さま、そして現地をご案内くださった皆さまに、心より感謝申し上げます。

【写真④:すずなり食堂での昼食】市役所から近く、職員も大勢利用していました。

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著者

山本 ひろこ

山本 ひろこ

肩書 目黒区議会議員、元ITエンジニア、腎移植ドナー
党派・会派 無所属

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