2026/7/15
〜中野区の防災行政に求められる「具体的なシナリオ」と「シミュレーション」〜
災害時に区民の命と安全を守るため、自治体は民間企業や教育機関などと数多くの「災害協定」を締結しています。しかし、その多くが締結された当時のまま放置され、時代の変化や現場の実態に合わなくなっているとしたら――。今、中野区の防災行政は、これまでに結んできた協定が有事の際に「本当に機能するかどうか」という、実効性の危機に直面しています。
■四半世紀放置された協定書:都立富士高校の事例
象徴的な例が、都立富士高校との災害協定です。同校は有事の際、「都指定の帰宅困難者一時滞在施設」であると同時に、平成12年(2000年)の協定に基づく重要な「輸送拠点」としての役割を担っています。
しかし驚くべきことに、協定書で拠点に指定されている体育館は平成13年に移設されているにもかかわらず、四半世紀近くが経過した現在も協定書の内容は更新されていません。議会で私が指摘から3年が経過した今なお事態は放置されており、学校側からは「発災後何日目から輸送拠点として使うのか」「面積や動線をどう確保すべきか、区の要望が見えず困惑している」との声が上がっています。

これは一例に過ぎず、区が持つ多くの協定が同様にアップデートされず、形骸化している懸念は拭えません。すべての協定をいつまでに、どのようなスケジュールで現代の災害リスクに合わせて刷新していくのか、明確な期限の設定が急務です。
■民間建設業が求める「具体的な活動イメージ」
区はこれまで「中野区独自の災害シミュレーションを行い、災害シナリオを作っていく」と答弁してきました。しかし、その進捗はどうでしょうか。
民間企業との政策懇談会の声を聞くと、現場との乖離は明らかです。「中野建設まちづくり協議会」や「中野土木防災協力会」をはじめとする建設関連5団体との対話では、区からのアプローチは「現状で協定内容が履行可能か」「重機を何台出せるか」という単なる現状確認のレベルに留まっていました。
有事の際に民間事業者が即座に動くために必要なのは、数合わせの確認ではありません。「地震によってどのような被害が発生し、どの道路を優先的に復旧(道路啓開)していくのか」という具体的な対応イメージの共有です。これこそが、区が策定すべき「災害被害想定シナリオ」の本質です。
■電柱「133本」の倒壊リスクを直視したシミュレーションを
具体的なシミュレーションを行うためのデータは、すでに目の前にあります。
中央防災会議の資料によれば、震度7の激震に見舞われた際の電柱折損率は0.8%とされています。これを中野区内の全区道にある電柱(約16,685本)に単純に当てはめると、発災直後に約133本の電柱が折損・倒壊するという計算が成り立ちます。能登半島地震でも3,000本以上の電柱が倒壊し、救助や物資輸送の大きな妨げとなりました。

■区に求められる決断
中野区が直視すべきは、「133本の電柱がどこで倒れ、どの道路を塞ぐのか」という具体的な被害予測です。この数値を基にしたシミュレーションがあって初めて、優先して啓開すべき路線や、必要な人員・重機の適正な配置が見えてきます。
協定は、紙に印鑑を押して終わりではありません。有事の混沌とした現場で、誰が、いつ、どこで、何をすべきか。中野区には、机上の空論ではない「生きた災害シナリオ」の早期確立と、協定の全面的なブラッシュアップが強く求められています。
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ホーム>政党・政治家>加藤 たくま (カトウ タクマ)>【形骸化する災害協定の「実効性」をどう担保するか】