2026/5/8
【再審法案の議論。禁止か、原則禁止か。本則か、付則か】
えん罪被害者を救うための裁判のやり直し、いわゆる「再審」を規定した刑事訴訟法の見直し法案に関し、自民党内の議論が、荒れていることが報じられています。
無実の罪に対し、事件発生から58年を戦い、そのうち47年間は死刑囚として拘束をされた袴田さんの事件の反省から、超党派の議連による刑事訴訟法の改正案が提起されていますが、それとは別に法務省自身がが改正案を作成し、自民党の事前審査で了解を得るための手続きが進められているところです。
現行の仕組みでは、地裁が再審の開始が必要だと判断しても、検察が「抗告」の手続きをした場合、高裁で改めて審理することになり、高裁が再審判断を支持しても、検察は再び「抗告」することができます。
最高裁が再審を支持してようやく、やり直しの裁判が始まるのですが、この間に要する時間が長期にわたり、人道上の問題が生じることから、超党派議連の提起した法改正では、この「抗告」を禁止することが盛り込まれています。
報道によれば自民党内の議論の争点は、法務省作成の改正案について、
①検察の抗告を禁止するのか、それとも法務省案のとおり「原則禁止」にするのか。
そしてそのことを
②法律の「本則」に書くのか、法務省案のとおり、「付則」に書くのか
の2点だということです。
しかし、②については、官僚側の感覚からすれば、本則に書かれても、付則に書かれても、法律は法律であり、基本的な効力、運用は変わらないというのが実際だと聞いています。
(付則から本則に書かれることになった議論の経過、背景をふまえ、運用で多少の考慮はあるだろうという程度の効果は期待できるのかもしれませんが、あくまで提出者は政府なので、そのような意図があると明確にすることは難しいと思います)
①の論点こそ重要で、シンプルに「禁止」とだけ法律に書くならばそれは本当に禁止になるけれど、「原則禁止」では、原則はそうだけど例外もあるという解釈になり、やむに止まれない理由がある場合は検察の「抗告」を認めるということに道を開くことになります。
そして検察の立場からすれば、これまでの「抗告」も、すべてやむに止まれぬ事情があるという立場で行ってきたものだという主張だと思いますので、原則禁止という改正では、検察はこれまでどおりの「抗告」を、これからも続けていくという結論になりえます。
「原則禁止」で進むならば、法律のどこに書かれても、法務省側の勝利ということになるのでしょう。報道によれば自民党内では「禁止」ではなく「原則禁止」と記載する方向で議論が固まってきているとも伝えられており、まんまとその方向に進んでいくのではないかと危惧します。
あわせて証拠の開示の範囲は適正かどうかなど、大事な論点はほかにもあります。法律の書き込む場所が、付則か本則か、などという論点に夢中になって、本当に大切な部分を見失うようなことがあってはならないし、報道機関の皆様も、そうした点こそ、きちんと解説をしていただきたいと願うところです。

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